これには背景があり、「知るぽると」金融広報中央委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)のデータを見ていくとその理由がわかる。60歳代の持ち家比率は83%もあり、同レポートで取り上げている「夫65歳以上、妻60歳以上」という世帯でみれば、ほとんどが持ち家世帯ということが言える。

つまり、同レポートが取り上げている世帯ではほとんどの世帯では家賃が発生しないということになる。もちろん持ち家世帯であれば、時間が経過すればメンテナンスやリフォームが必要になることもあるであろうが、家賃としては不要となる。

ちなみに「知るぽると」のレポートには30歳代や40歳代の持ち家比率も掲載されているが、それぞれ48%、64%となっており、60歳代の83%には遠く及ばない。50歳代になると75%にまで上昇することになる。現在の若い世代がリタイヤする際には持ち家比率は上昇することにはなるであろうが、退職後も持家でない世帯には同レポートの支出には表現しきれていない家賃が必要であるということも留意が必要であろう。

どこの地域に、またどの程度の広さの住居に住むかということでことなるが、仮に賃貸世帯が家賃10万円の住居で老後が30年続くとする場合には、単純計算では3600万円が必要となる。これは決して少ない金額とは言えないであろう。

そもそも毎月の支出は26万円ですむのか?

同レポートでは、毎月の実支出は26万3718円となっている。この数字が多いのか少ないかということであるが、「生命保険文化センター」によれば、ゆとりある老後生活費の平均は34万9000円とされている。