4. 整骨院・接骨院やはり・きゅうで「健康保険の対象外」になるケースがある

整骨院・接骨院や、はり・きゅうの施術所で「健康保険が使える」と説明を受けても、療養費の対象にならない施術があります。協会けんぽは、その場合は治療費の全額または一部を自己負担することがあり、後日、施術所か協会けんぽから請求されるとしています。

4.1 柔道整復で健康保険の対象とならない10のケース

協会けんぽが、柔道整復師の施術で健康保険の対象とならない場合として挙げているのは次の10のケースです。

  • 単なる肩こり、筋肉疲労
  • 慰安目的のあん摩・マッサージ代わりの利用
  • 病気(神経痛・リウマチ・五十肩・関節炎・ヘルニアなど)からくる痛み・こり
  • 脳疾患後遺症などの慢性病
  • 過去の交通事故等による後遺症
  • 症状の改善の見られない長期の治療
  • 医師の同意のない骨折や脱臼の治療(応急処置を除く)
  • 仕事中や通勤途上におきた負傷
  • 「ついでに他の部分も」や「家族に付き添ったついでに」といった「ついで」の受診
  • 保険医療機関(病院、診療所など)で同じ負傷等の治療中の場合

仕事中や通勤途上の負傷は、原則として労災保険の対象です。負傷の原因は施術所に正しく伝える必要があります。

4.2 はり・きゅうは医療機関で同じ傷病の治療を受けると健康保険の対象外になる

はり・きゅうが健康保険の対象になるのは、医師による適当な治療手段がない場合のみです。施術を受けながら、並行して医療機関で同じ傷病の診療を受けた場合は、健康保険扱いになりません。

協会けんぽは、医師から薬やシップを処方された場合も治療行為にあたり、はり・きゅうの施術は健康保険扱いにならないと注意を促しています。

4.3 療養費支給申請書は白紙でサインせず、協会けんぽからの照会には自分で回答する

受領委任で使う療養費支給申請書には、傷病名・日数・金額が記載されます。協会けんぽは、内容をよく確認したうえで記入し、白紙の用紙にサインしたり印鑑を渡したりしないよう注意を呼びかけています。

協会けんぽから、負傷原因や施術年月日、施術内容などについて電話や文書で照会が届くことがあります。受診の記録と領収証を保管し、照会があれば自分で回答書に記入します。領収証は医療費控除を受けるときにも必要です。

5. 柔道整復の受領委任は償還払いに変わる場合がある。2027年1月からは基準が1つ加わる

受領委任は、協会けんぽが示す事例に該当し、施術の必要性を個々に確認する必要があると考えられる場合に、中止されて償還払いに変更となる場合があります。柔道整復とはり・きゅう等で、対象となる事例を見てみましょう。

5.1 償還払いへの変更の対象となる事例

柔道整復は2027年1月から、償還払いへの変更の対象となる事例が1つ加わる3/3

柔道整復は2027年1月から、償還払いへの変更の対象となる事例が1つ加わる

出所:全国健康保険協会「柔道整復師のかかり方」「はり・きゅう等のかかり方」をもとにLIMO編集部作成

柔道整復の施術で、償還払いへの変更の対象となる事例は次のとおりです。

  • 保険者が、患者に対する施術の内容及び回数等の照会を適切な時期に患者に分かりやすい照会内容で繰り返し行っても、回答しない患者
  • 複数の施術所において同部位の施術を重複して受けている患者
  • 長期かつ頻回な施術を継続して受けている患者
  • 前月までの連続する12か月の間に、通算して8月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者(令和9年1月から)

はり・きゅう、あん摩・マッサージでは、「長期かつ頻回な施術を継続して受けている患者」が償還払いへの変更の対象となる事例として示されています。

5.2 償還払いになると施術料金の全額をいったん支払って自分で申請する

償還払いでは、患者が施術所に施術料金の全額を支払い、患者自身が保険者に療養費を請求します。窓口で自己負担分だけを払う受領委任と比べて、立て替える金額が大きくなります。

自分で請求する場合も、健康保険給付を受ける権利は2年で時効になります。施術の領収証は、日付と金額が分かる状態でまとめておきましょう。

6. 療養費の添付書類が増えるのは労働災害・交通事故・相続のとき

療養費の申請では、場面ごとの書類のほかに、けがの原因や請求する人によって追加の添付書類が必要になります。協会けんぽが挙げている3つのケースを確認します。

6.1 仕事中・通勤途中のけがで労働(通勤)災害の給付を請求中なら同意書を添付する

請求する傷病の原因が仕事中(業務上)や通勤途中で、労働(通勤)災害の給付を請求中の場合は、「労働基準監督署への照会に関する同意書」を添付します。

6.2 交通事故やけんかなど第三者の行為によるけがは「第三者行為による傷病届」が必要

傷病の原因が交通事故やけんかなど第三者の行為による場合は、「第三者行為による傷病届」を添付します。柔道整復で施術を受ける場合も、交通事故等の第三者行為にあたるときは協会けんぽへ連絡するよう案内されています。

6.3 被保険者が亡くなった場合は相続人が戸籍謄本等を添えて請求できる

被保険者が亡くなり、相続人が療養費を請求する場合は、被保険者との続柄がわかる「戸籍謄本」等を添付します。

なお、申請時に提出した添付書類は返却されません。協会けんぽは、市区町村への手続きなど他の手続きで必要な場合は、あらかじめコピーを保管するよう案内しています。

7. まとめ

療養費は、マイナ保険証等を提示できずに医療費を全額支払ったときや、医師の指示で治療用装具を作ったときなどに、あとから払い戻しを受けられる健康保険の給付です。戻るのは保険診療の基準で計算した額から自己負担分を差し引いた額で、支払った額の全額ではありません。

整骨院・接骨院やはり・きゅうの施術は受領委任で窓口負担だけで済むことが多い一方、健康保険の対象外となるケースや、償還払いに変わるケースもあります。

療養費を受ける権利は、原則として支払った日の翌日などから2年で時効になります。領収書と医師の証明書類を手元に残し、期限内にご加入の協会けんぽ支部へ申請しましょう。

参考資料

和田 直子