親が認知症になり、預貯金の管理や介護サービスの契約を本人だけで行うのが難しくなったときに、支えとなる制度のひとつが「成年後見制度」です。

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」によると、2025年12月末時点の成年後見制度の利用者数は25万9901人で、前年から約2.3%増えました。一方で、弁護士や司法書士などの専門職が後見人等に選ばれると報酬がかかるため、年金暮らしの世帯では費用の負担が気になるところです。

本記事では、成年後見制度の申立費用と後見人等の報酬の目安、そして市区町村が費用を助成する「成年後見制度利用支援事業」の対象者と実施状況について解説します。

1. そもそも「成年後見制度」とは?2025年12月末の利用者は25万9901人

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が十分でない方の財産管理や契約を、家庭裁判所が選んだ後見人等が支える制度です。

まずは最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月~12月―」から、利用者数の推移を確認しましょう。

成年後見制度の利用者数は5年連続で増えている1/3

成年後見制度の利用者数は5年連続で増えている

出所:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月~12月―」をもとにLIMO編集部作成

成年後見制度の利用者数(各年12月末時点)は次のとおりです。

  • 2021年:23万9933人
  • 2022年:24万5087人
  • 2023年:24万9484人
  • 2024年:25万3941人
  • 2025年:25万9901人

5年間で2万人ほど増えており、利用者は毎年増え続けています。

1.1 法定後見は判断能力に応じて「後見・保佐・補助」の3類型に分かれる

判断能力が低下したあとに家庭裁判所へ申し立てて始める「法定後見」は、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれます。

判断能力があるうちに、将来の後見人と契約を結んでおく「任意後見」もあります。2025年12月末時点の類型別の利用者数は次のとおりです。

  • 成年後見:18万828人
  • 保佐:5万8162人
  • 補助:1万8078人
  • 任意後見:2833人

利用者の約7割を「成年後見」が占めています。

1.2 成年後見人等の8割超は親族以外の専門職などが選ばれている

同資料によると、2025年に選任された成年後見人等のうち、親族以外が選ばれたものは全体の約83.6%でした。

  • 司法書士:1万1966件
  • 弁護士:8903件
  • 社会福祉士:7280件
  • 市民後見人:390件

本人が65歳以上の割合は、男性で約71.3%、女性で約85.8%です。開始原因は認知症が約61.3%で最も多く、シニア世代にとって身近な制度だといえます。

2. 成年後見制度の費用はいくら?申立費用と後見人等の報酬を確認する

成年後見制度を利用するときの費用は、大きく分けて「家庭裁判所への申立費用」と「後見人等に支払う報酬」の2つです。

2.1 後見開始の申立てには収入印紙3400円分がかかる

裁判所の案内によると、後見開始の審判を申し立てる際には、次の収入印紙が必要です。

  • 申立手数料:800円分
  • 登記手数料:2600円分

このほか郵便切手が必要で、金額は裁判所ごとに異なります。

本人の判断能力を医師が判定する「鑑定」が必要になった場合は、鑑定費用もかかります。2025年に鑑定を実施した事件は全体の約3.4%で、鑑定費用は5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%でした。

2.2 後見人等の報酬は流動資産100万円未満なら「年20万円台」が中心

後見人等の報酬は、家庭裁判所が本人の財産の額や後見人等の事務の内容をもとに決め、原則として本人の財産から支払われます。

最高裁判所事務総局家庭局「報酬に関する実情調査の集計結果について ―令和7年7月~12月―」から、流動資産(現金・預貯金・有価証券)が100万円未満の方に、親族以外の成年後見人が付いた場合の報酬付与額の割合を見てみましょう。

流動資産100万円未満なら、報酬は7割超が年20万円台2/3

流動資産100万円未満なら、報酬は7割超が年20万円台

出所:最高裁判所事務総局家庭局「報酬に関する実情調査の集計結果について ―令和7年7月~12月―」をもとにLIMO編集部作成

流動資産100万円未満・親族以外の成年後見人(付加報酬の求めなし)の年間の報酬付与額の割合は次のとおりです。

  • 10万円未満:6.9%
  • 10万円台:15.7%
  • 20万円台:73.9%
  • 30万円台:2.8%
  • 40万円以上:0.6%

7割超が年20万円台で、月あたりに直すとおよそ1万7000円から2万4000円ほどです。※報酬付与額は審判で決まった額で、後見人等が全額を受け取っているかは分からないとされています。

成年後見制度は、原則として本人の判断能力が回復するか亡くなるまで続きます。年金暮らしの方にとって、この報酬を毎年払い続けるのは小さな負担ではありません。

3. 申立費用と報酬を市区町村が助成する「成年後見制度利用支援事業」とは

費用の負担が難しい方のために、市区町村が申立費用や後見人等の報酬を助成するのが「成年後見制度利用支援事業」です。

3.1 成年後見制度利用支援事業の対象は低所得の高齢者や障害のある方

厚生労働省は、成年後見制度利用支援事業を「低所得の高齢者、知的障害者及び精神障害者」に申立費用や後見人等の報酬を助成する事業と位置づけています。

実施するのは市区町村で、対象者の要件は自治体ごとに決められています。たとえば東京都北区では、住民税非課税世帯であることや、世帯の資産がおおむね100万円以下であることなどを要件としています。

3.2 助成制度を設けている市区町村は1741のうち1699

厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(概要版)」(2026年4月公表)によると、高齢者を対象とした助成制度の有無は次のとおりです(2025年4月1日時点)。

  • 申立費用と報酬の両方を助成:1622市区町村
  • 申立費用の助成のみ:9市区町村
  • 報酬の助成のみ:68市区町村
  • 助成制度なし:42市区町村

全国1741市区町村のうち1699が、何らかの助成制度を設けています。2024年度の実績では、高齢者関係で申立費用の助成が4451件、報酬の助成が1万8011件ありました。

障害者を対象とした助成制度も1697市区町村が設けており、2024年度の実績は申立費用の助成が1115件、報酬の助成が7715件でした。※同調査のデータは精査中で、今後変更がありうるとされています。

3.3 報酬助成の上限を「在宅で月2万8000円以内」とする区がある

助成の上限額も自治体が決めています。東京都北区が案内している上限額は次のとおりです。

  • 申立手数料・登記手数料・切手代:8000円以内
  • 鑑定費用:10万円以内
  • 診断書作成費用:1万円以内
  • 報酬(施設入所者):月額1万8000円以内
  • 報酬(在宅生活者):月額2万8000円以内

在宅で月2万8000円以内なら、年間で最大33万6000円までが助成の対象になる計算です。※上限額や対象経費は自治体によって異なります。

和田 直子

成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産と暮らしを守るための制度です。専門職が後見人等になると報酬が続けてかかるため、申立ての前に費用の見通しと、お住まいの市区町村の助成制度をあわせて確認しておくと安心です。