3. そもそも「106万円の壁」と「130万円の壁」の2つの違いとは?

パートなどで働く際によく耳にする「106万円の壁」と「130万円の壁」。これらはどちらも社会保険に関係する言葉ですが、意味合いが大きく異なります。混同しやすい部分ですので、まずはこの2つの違いを整理しておきましょう。

  • 「106万円の壁」:一定の条件を満たした人が、ご自身の勤務先で社会保険に加入するかどうかの基準
  • 「130万円の壁」:家族の社会保険の扶養(保険料を自己負担せずに加入できる枠組み)に入れるかどうかの基準

つまり、106万円の壁は「自分で社会保険に入るかどうか」、130万円の壁は「家族の扶養に残れるかどうか」を分ける基準です。これまでは、手取りの減少を避けるために、この2つの金額を意識して働く時間を調整する方が多くいらっしゃいました。しかし、この前提が今後の制度改正によって大きく変わろうとしています。

4. 130万円の壁はどうなる?扶養に関する2つの注意点

「106万円の壁」の賃金要件が撤廃される一方で、家族の社会保険の扶養に入るための「年収130万円未満」という基準は、原則としてこれまで通り残ります。ここが少し複雑に感じられるポイントかもしれません。

勤務先で社会保険の加入条件(週20時間以上の労働など)を満たす働き方をした場合は、たとえ年収130万円未満であっても、ご自身で社会保険に加入することになります。一方、週の労働時間が20時間未満であるなど、勤務先の加入条件に該当しない働き方を選択した場合は、引き続き「年収130万円未満」が家族の扶養に入れるかどうかを判断する大きな基準となります。

育児や介護、ご自身の体調管理など、ご家庭が抱える状況はさまざまです。週20時間未満かつ年収130万円未満に抑えることで、これまで通り家族の扶養に入り、手取りを維持しながらご自身のペースで働くという選択肢も当然残されています。周りの変化に焦ることなく、ご自身のライフスタイルに合った無理のない働き方を選ぶことが何よりも大切です。

5. 手取り減少を防ぐ?知っておきたい1つの特例支援策

新たに社会保険の加入対象となる方の経済的な負担を軽減するため、事業主(勤務先の企業)が通常より多く保険料を負担できる特例的な支援措置が設けられています。

社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者を支援します3/3

社会保険の加入拡大の対象となる短時間労働者を支援します

出所:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」

通常、社会保険料は労使折半(労働者と会社で半分ずつ負担する仕組み)です。月収約88000円のケースでは、労働者と事業主がそれぞれ約12500円ずつ負担します。しかし、この特例支援策を利用して事業主が負担割合を増やした場合、労働者の負担は6250円に抑えられ、事業主の負担が18750円となる例が示されています。事業主が追加で負担した分については、国の制度から企業側へ支援される仕組みになっています。

なお、この仕組みによって一時的に労働者本人の負担が軽減されても、将来受け取る年金額が減ることはありませんのでご安心ください。ただし、この支援策を利用できるかどうかは勤務先の制度導入状況によるため、事前に職場へ確認することをおすすめします。

6. まとめにかえて

今回は、2026年10月から撤廃が予定されている「106万円の壁」と、それに伴う社会保険への影響について解説しました。年収という金額の要件がなくなることで、週20時間以上働く方の社会保険加入が進む一方、手取りの減少を緩和する支援策や、将来の年金増額、休業時の手当といった隠れたメリットも数多く存在します。手取りの変化だけに捉われず、制度の仕組みを正しく理解することが安心への第一歩です。

働き方の変化は家計を見直す良い機会でもあります。ご自身のライフスタイルやご家族の価値観に最もフィットする無理のない働き方を、ぜひこの機会に話し合ってみてはいかがでしょうか。

参考資料

川勝 隆登