4. 店頭表示金利は「表示」であって、個人向け国債の利率とは決まり方が違う

3つの条件をそろえたうえで、もう一歩踏み込んで見ておきたい違いがあります。

4.1 日本銀行の統計が集めているのは店頭に表示された金利

日本銀行が集計しているのは、調査対象先が店頭に表示している金利です。統計の名称も「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」となっています。

店頭に表示されている金利と、実際に適用される金利が必ず一致するとは限りません。金融機関によっては、期間や金額を限った条件で店頭表示とは別の金利を出していることもあります。

平均を上回る条件で預けられる金融機関もあれば、平均を下回る金融機関もあります。0.447%はあくまで全体をならした数字で、どこかの金融機関が必ずこの金利を出しているという意味ではありません。

4.2 個人向け国債は同じ回号を買った人の利率がそろっている

個人向け国債の場合、利率は財務省が回号ごとに決めて公表します。どの金融機関の窓口で申し込んでも、第186回の固定5年であれば年2.24%です。

募集の価格も額面金額100円につき100円で、金融機関によって変わることはありません。買う場所によって条件が変わらないという点は、預金とはっきり違うところです。

ただし、金融機関によっては口座の開設や維持に手数料がかかる場合があります。手数料の扱いは金融機関ごとに違うので、申し込む前に確かめておきたいところです。

5. 個人向け国債の変動10年だけは、買ったあとも利率が動く

3タイプのうち1つは、いま見ている数字が満期まで続くわけではありません。

5.1 半年ごとに基準金利に0.66を掛けて見直される

変動10年の適用利率は、半年ごとの利子計算期間ごとに、そのつど基準金利に0.66を掛けて決まります。第198回でいま示されている年1.95%は、最初の利子計算期間に適用される利率です。

基準金利は、利子計算期間の開始日の前月までの最後に行われた10年固定利付国債の入札における平均落札価格をもとに計算される複利利回りです。実勢金利が動けば、適用利率も動きます。

なお、変動10年にも年0.05%の下限があります。実勢金利が下がっても、適用利率がこれを下回ることはありません。

5.2 固定5年と固定3年は満期まで変わらない

固定5年と固定3年は、発行時に決まった利率が満期まで変わりません。第186回の固定5年を買えば、5年間ずっと年2.24%です。

定期預金の平均年利率と並べるとき、この違いは押さえておきたいところです。変動する数字と変動しない数字を同じ表に置くと、5年後や10年後の姿を読み違えることがあります。

財務省は、金利の設定方法を今後見直すことはあり得るとしたうえで、現在のところ具体的な見直しの予定はないとしています。

6. まとめにかえて

個人向け国債の2026年9月募集分は、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%、変動10年が年1.95%です。日本銀行の統計による2026年8月の定期預金の平均年利率は0.447%でした。

この2つを並べるときは、金額・期間・時点の3つの条件を確かめておきたいところです。預金の平均は預入金額1千万円以上・預入期間1年の区分で、毎月15日時点の単純平均です。個人向け国債は1万円から買えて、利率は募集回号ごとに決まります。

数字そのものは、どちらも公表されている正しい値です。だからこそ、自分が置こうとしている金額と期間に当てはめて見直すと、判断の材料になります。まとまった資金の置き場所を考えるときは、取扱金融機関の窓口でも相談してみてください。

参考資料

和田 直子