個人向け国債の利率が上がってきたことで、定期預金の金利と並べた記事を目にする機会が増えました。
財務省は2026年9月2日に、個人向け国債の2026年9月募集分の発行条件を公表しました。固定5年は年2.24%です。日本銀行の統計では、2026年8月の定期預金の平均年利率は0.447%でした。
ただ、この2つを並べる前に確かめておきたいことがあります。この記事では、金額・期間・時点という3つの条件がそろっているかどうかを、一次資料に戻って確認します。
なお、個人向け国債の商品性については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 個人向け国債の2026年9月募集分は固定5年が年2.24%である
はじめに、比べるもとになる数字を確かめます。
1.1 固定3年は年1.96%、変動10年は年1.95%
2026年9月募集分の利率は、固定5年(第186回)が年2.24%、固定3年(第196回)が年1.96%、変動10年(第198回)が年1.95%です。
募集期間は2026年9月3日から9月30日まで、発行日は10月15日です。募集の価格も償還金額も、額面金額100円につき100円と決まっています。
1.2 タイプごとに利率の決まり方そのものが違う
変動10年の適用利率は、基準金利に0.66を掛けて決まります。第198回の基準金利は2.96%で、これに0.66を掛けた1.95%が最初の利子計算期間に適用されます。
固定5年は基準金利から0.05%を差し引いた値、固定3年は基準金利から0.03%を差し引いた値です。第186回の基準金利は2.29%、第196回の基準金利は1.99%でした。
3タイプに共通して年0.05%の下限があり、実勢金利がどれだけ下がってもこれを下回りません。
2. 個人向け国債の相手にする定期預金の平均は、預入金額1千万円以上の区分だった
次に、並べる相手になる預金の平均年利率が何を指しているのかを確かめます。
2.1 日本銀行の統計は「預入金額1千万円以上・1年」の数値
日本銀行の「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等」によると、2026年8月の定期預金の平均年利率は0.447%でした。ただし、この数値は預入金額1千万円以上・預入期間1年という区分のものです。
同じ統計の普通預金の平均年利率は0.306%です。こちらには預入金額の区分がありません。
2.2 個人向け国債は1万円から買え、金額で利率は変わらない
一方の個人向け国債は、額面1万円から1万円単位で購入できます。1万円で買っても1000万円で買っても、同じ回号であれば利率は同じです。
この点については、LIMOの記事「財務省、2026年7月募集「個人向け国債」の金利を公表!400万円購入した場合の受取利息をシミュレーション!手取り利息と解約調整額のポイント」でも触れられています。
最低1万円という少額から購入でき、取扱金融機関で手軽に手続きができるほか、将来的に譲渡や相続を行うことも認められています。
出所:財務省、2026年7月募集「個人向け国債」の金利を公表!400万円購入した場合の受取利息をシミュレーション!手取り利息と解約調整額のポイント
つまり、年2.24%と年0.447%を並べたとき、片方は1000万円以上を預けた場合の平均で、もう片方は1万円でも同じ利率です。金額の条件はそろっていません。
3. 個人向け国債と定期預金は、期間と時点の条件もそろっていない
そろっていないのは金額だけではありません。
3.1 預金の平均は預入期間1年、個人向け国債の満期は3年から10年
日本銀行の統計で使った0.447%は、預入期間1年の定期預金の平均です。個人向け国債の満期は、固定3年が3年、固定5年が5年、変動10年が10年です。
1年で満期がくるお金と、3年から10年据え置くお金では、置き方そのものが違います。年2.24%という数字は、5年という期間と引き換えのものです。
3.2 預金の平均は毎月15日時点、個人向け国債は募集回号ごと
日本銀行の統計は、毎月15日(15日が休日の場合は翌営業日)における調査対象先の各預金の年利率を単純平均したものです。調査対象は、日本銀行の取引先のうち国内銀行(整理回収機構等を除く)、信用金庫、商工組合中央金庫です。
個人向け国債の利率は、募集回号ごとに決まります。9月募集分の年2.24%は、2026年9月3日から9月30日までに申し込んだ人に適用される数字です。
金利を比較する際は、単に数値を見るのではなく「自分自身の条件(金額・期間)」に当てはめて考えることが失敗を防ぐ鍵です。商品の特徴を見る前に、まずは資産の使い道と運用計画を具体化してみましょう。


