5. ROE15.6%と自己資本比率51.8%。資本効率を測る土台が一年で入れ替わった

ここからは資本効率に目を向ける。ROE(自己資本利益率)は、株主が預けた資本でどれだけ利益を生んだかを示す指標だ。

ソニーグループのROEは、2022年3月期から順に12.8%、16.4%、13.7%、14.5%、そして2026年3月期が15.6%となっている。5期を通じて2桁を保ち、直近は切り上がった。

大きく変わったのは、その分母を支える側だ。自己資本比率は2022年3月期から23.4%、21.2%、22.2%、23.2%と20%台前半で推移してきたが、2026年3月期は51.8%へ跳ね上がった。

総資産も同じ期に35兆2,931億円から15兆6,834億円へと半分以下に縮んでいる。有利子負債は3兆4,018億円から8,755億円へ、4分の1近くまで減った。

従業員数も11万2,300人から9万4,900人へ変わっている。1年でここまで数字が動くのは、事業の増減というより、連結の構成そのものが入れ替わったと見るのが自然だろう。

つまり、ROEという1つの指標を5期並べても、その背後にある資産の姿は途中で変わっている。資本効率を測る土台が入れ替わった、というのが正確な言い方だ。

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出所:ソニーグループ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

出所:ソニーグループ株式会社 有価証券報告書をもとに筆者作成

5.1 業種中央値と並べたときのソニーグループの立ち位置

電気機器182社の中央値と比べてみよう。ROEの中央値は7.7%だから、15.6%はその倍を超える。上位25%の境目にあたる12.0%も上回っている。

一方、自己資本比率の中央値は62.2%で、51.8%はこれを下回る。下位25%の境目である49.5%をわずかに超える位置だ。

資本効率では業種の上位、資本の厚みでは下位寄り。この組み合わせは、そのまま「自己資本を厚く積まずに利益を出している」という姿を表している。

投下資本に対する生産性を示すROIC(投下資本利益率)でも、電気機器の中央値は10.4%と低い水準ではない。その母集団の中で、ソニーグループの資本効率は上位に位置していることになる。

6. レバレッジを落としながらROEが上がるという、あまり見ない並び

今回いちばん引っかかったのは、ここだ。

ROEが高い会社を見たとき、負債を厚めに使って自己資本を薄く保っているのだろう、と受け取られることは少なくない。実際、自己資本比率が20%台だった頃のソニーグループは、その読み方が当てはまりやすい姿をしていた。

ところが直近1期で、自己資本比率は23.2%から51.8%へ倍以上に上がり、有利子負債は4分の1近くまで減った。財務レバレッジは明らかに落ちている。

それでもROEは14.5%から15.6%へ上がった。レバレッジを外しながら資本効率が改善する、という順番は、そう頻繁に見るものではない。

念のため分母そのものを確かめておきたい。自己資本は8兆1,797億円から8兆1,190億円と、ほぼ横ばいだ。自己資本比率が上がったのは、総資産の側が縮んだためである。

となれば、ROEの上昇は分母の圧縮ではなく分子の側から来ていることになる。営業利益率が10.6%から11.6%へ上がったことと、方向が揃っている。

資本を絞る動きも並行している。自己株式は1億2,480万株から2億4,214万株へ増え、簿価では2,968億円から7,521億円になった。

6.1 稼いだキャッシュは、どこへ向かったのか

キャッシュの流れも見ておきたい。2026年3月期の営業キャッシュフローは1兆9,456億円、投資キャッシュフローは▲1兆9,705億円、財務キャッシュフローは▲8,427億円だった。

営業で稼いだ分をほぼそのまま投資に振り向け、さらに財務の側でも資金が出ている。研究開発費は7,620億円で、前期の7,346億円から積み増された。

資本効率が上がったからといって、投資を絞った結果ではない。稼いだキャッシュはむしろ投資へ向かっている、と読むほうが実態に近いだろう。

ひとつ付け加えておきたい。自己資本比率が50%台に乗ったことを、そのまま財務の良し悪しへ読み替えるのは早い。

負債をほとんど使わない財務が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点だからだ。もっとも51.8%は電気機器の中央値62.2%を下回る。負債を使う余地を完全に手放した水準ではない。

7. 筆者コメント

過去5期のROEを並べると、12%台から16%台の間を行き来している。きれいな右肩上がりではない。

それでも、この5期のどこを取っても業種の中央値の倍前後にある。振れ幅の中で見ても、水準そのものが違う。

見逃せないのは、その5期の途中で分母を支える資産の中身が入れ替わったことだ。同じ「ROE」という3文字でも、2022年3月期のそれと2026年3月期のそれは、立っている土台が違う。

比率の指標は、分子と分母のどちらが動いても同じ方向へ振れる。だから水準だけを追うと、何が起きたのかを取り違える。

指標を時系列で並べるときは、線の傾きだけでなく、線の下にある土台が同じかどうかを疑ってみる。大きな組み替えを経た会社を見るときほど効く習慣だ。そういう目で数字に当たることをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希