5. 2026年12月期上期の営業利益2,355億円、通期予想は4,000億円へ

足元の決算は、この構造の上で強い数字を並べている。

2026年12月期上期の売上収益は1兆6,902億円、営業利益は2,355億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,736億円だった。

通期予想は売上収益3兆2,800億円(前期比+8.6%)、営業利益4,000億円(+50.7%)、税引前利益4,170億円(+47.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,890億円(+54.8%)。1株当たり配当は52円が予想されている。

営業利益は上期で通期予想の58.9%まで進んだ。直線的な進捗なら50%の位置であり、6割弱という数字は計画に対して先行している。

年初の立ち上がりも強かった。2026年12月期1Qは売上収益8,100億円(前年同期比+13.7%)、営業利益980億円(+59.1%)、税引前利益1,028億円(+62.8%)、当期利益791億円(+64.5%)である。

なぜここまで伸びたのか。会社の説明によると、米国関税の影響によるコスト増加や諸経費の増加という減益要因はあったが、為替の改善や機械部門での北米を中心とした増販益、価格改定などがそれを上回った。国内売上収益は1,844億円で+12.0%、海外は6,256億円で+14.2%と、どちらも二桁の伸びになっている。

ここに至る前の1期は逆風だった。2025年12月期の売上収益は3兆188億円で+0.1%とほぼ横ばい、営業利益は2,654億円で▲15.9%、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,866億円で▲19.0%と減益で着地している。

減益の理由も会社が明示している。米国関税の影響に伴うコスト増加、機械部門での減販損や販売構成の悪化が要因で、インセンティブの削減や価格改定、固定費の削減によってコストの吸収が進んでいるという。海外売上高比率は前期比1.7ポイント低下して77.3%となった。

つまり同じ関税コストを抱えたまま、価格と固定費で吸収する側に転じたのが足元だと読み取れる。外部環境が好転したというより、吸収する力が効いてきた局面と見るのが自然だろう。

6. ROEは5期で11.1%から7.3%へ。資本構成に見えるもう一つの特徴

利益の絶対額とは別に、資本の使い方も5期で表情を変えている。

ROE(自己資本利益率)は2021年12月期の11.1%から、2022年12月期8.8%、2023年12月期11.8%、2024年12月期9.9%、2025年12月期7.3%と推移した。5期で最も低いのが直近である。機械業種160社のROEの中央値は7.8%で、直近の水準はこれをわずかに下回る。

自己資本比率は44.5%、39.3%、40.6%、41.2%、42.3%と動いた。いったん4割を割り込んだのち、直近3期は緩やかに戻している。業種の中央値67.3%との開きは、5期を通して埋まっていない。

営業キャッシュフローの振れはさらに大きい。2021年12月期の925億円から、2022年12月期は▲76億円、2023年12月期も▲172億円と2期続けてマイナスに沈み、2024年12月期に2,820億円、2025年12月期は3,279億円まで積み上がった。

減益の期に営業キャッシュフローが最大になっている点は見逃せない。利益が縮んでも現金が入る局面があるということで、運転資本の動きが効いていると考えられる。

資本効率の数字だけを見れば、この5期は下向きの流れだ。一方で現金を生む力は直近2期で明確に回復している。どちらか一方だけで会社の状態を判定しないほうがいい局面だろう。

7. 筆者コメント

見逃せないのは、この会社の貸借対照表が機械メーカーの標準形から外れている点だ。

自己資本比率は業種の真ん中よりはっきり低い。一般には自己資本の厚さが安心材料として語られやすいが、コーポレートファイナンスの観点では、負債をほとんど使わない財務が資本効率の面で最適かという逆向きの論点も立つ。クボタは、その逆側に寄った資本構成を選んでいる。

面白いのは、そこに創業事業の系譜が重なることだ。水道の管も農機も、需要が形になるまでに時間がかかり、回収も長い。長く使う資産を長い負債で持つという形は、事業の性質と無関係ではないだろう。

営業キャッシュフローがマイナスの期を挟みながら直近2期で大きく積み上がった動きも、この見方と整合する。資本構成を「健全かどうか」で採点するのではなく、事業の回収期間と噛み合っているかという物差しで眺めてみることをおすすめしたい。

参考資料

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石津 大希