生活保護の「生活扶助」には、社会経済情勢などを踏まえた特例的な上乗せである「特例加算」が設けられています。
この特例加算が、2026年10月から1人あたり月額2500円へと引き上げられることになりました。
本記事では、生活保護制度の基本的なしくみを確認したうえで、今回の特例加算の見直し内容と、2026年9月に公表された最新の被保護者調査からわかる制度利用の状況を、あわせて整理します。
1. 生活保護制度の基本的なしくみ
生活保護は、日本国憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための公的な制度です。まず、どのような人が対象となり、どのような費用が支給されるのかを確認します。
1.1 生活保護を受けるための要件
生活保護は、世帯の収入や資産だけでは最低限度の生活を維持できない場合に、その不足分を補う制度です。申請にあたっては、次の4つを活用してもなお生活費が不足していることが前提となります。
- 資産の活用:預貯金や、生活に利用していない土地・家屋などがあれば、売却するなどして生活費に充てること
- 能力の活用:働くことができる場合は、その能力に応じて就労し、収入を得ること
- あらゆるものの活用:年金や各種手当など、他の制度から給付を受けられる場合は、それらを優先して活用すること
- 扶養義務者による扶養:親族などから援助を受けられる場合は、その援助を優先すること
これらを活用してもなお、世帯の収入が国の定める「最低生活費」に届かない場合に、その差額が生活保護費として支給されます。なお、生活保護の要否は個人単位ではなく、世帯単位で判断される点も押さえておきたいポイントです。
1.2 支給される8種類の扶助
生活保護費は、世帯の状況に応じて次の8種類の扶助を組み合わせる形で支給されます。
生活保護で支給される8種類の扶助1/3
LIMO編集部作成
このうち、食費や光熱費など日常生活に必要な費用をまかなう「生活扶助」が、今回の特例加算の対象です。
1.3 支給額の基本的な考え方「最低生活費」
生活保護費は、地域や世帯構成、年齢などに応じて定められる「最低生活費」から、世帯の収入を差し引いた金額として計算されます。最低生活費は、次の6つの要素を合算して算出されます。
最低生活費=生活扶助基準額(特例加算を含む)+各種加算額+住宅扶助基準額+教育扶助基準額+介護扶助基準額+医療扶助基準額
このうち生活扶助基準額は、個人にかかる費用部分の「第1類」と、世帯にかかる費用部分の「第2類」を合算し、そこに特例加算などを上乗せして算定されます。基準額は住んでいる地域によって6段階の「級地」に区分されており、都市部ほど高く設定される仕組みです。
2. 「特例加算」とは|社会経済情勢などを踏まえた特例的な上乗せ
ここからは、今回見直しが行われる「特例加算」について確認します。
2.1 これまでの経緯
特例加算は、2023年度に生活扶助の基準額を見直した際、社会経済情勢等を踏まえた臨時的・特例的な措置として、1人あたり月額1000円が上乗せされる形で導入されました。
その後、2025年10月からは、一般低所得世帯の消費実態などを踏まえてさらに500円が上乗せされ、月額1500円となっています。
生活扶助の特例加算の推移2/3
LIMO編集部作成
2.2 2026年10月からは「1人あたり月額2500円」に
厚生労働省は2025年12月24日の予算編成に伴う折衝を経て、2026年10月から特例加算をさらに1000円引き上げ、1人あたり月額2500円とする方針を決定しました。上野厚生労働大臣は同日の会見で、次のように述べています。
「生活扶助基準の特例加算については、1,000円引き上げ、一人当たり月額2,500円とします。令和8年10月から1年限りの措置として実施していくこととなります。」
出所:厚生労働省「上野大臣会見概要(令和7年12月24日)」
また、財務省の予算資料では、この引き上げの根拠について次のように説明されています。
「一般低所得世帯の消費実態や社会経済情勢等を総合的に勘案して1,000円引上げ(R8.10~:同2,500円)」
出所:財務省「令和8年度予算のポイント」
今回の引き上げは、これまでの2年単位の措置とは異なり、2026年10月から2027年9月までの1年間に限った時限的な対応とされています。次年度以降の取り扱いは、その時点の社会経済情勢等を踏まえて、あらためて判断される見通しです。
また、今回の引き上げはこれまでの2年単位の措置とは異なり、2027年9月までの1年限りとされている点も、あわせて押さえておきたいポイントです。
