3. 窓口負担割合の判定は前年の所得で毎年8月1日にやり直される

窓口負担割合は一度決まったら変わらないものではありません。判定のしくみを確認しておきましょう。

窓口負担割合は毎年8月1日を基準日として、その時点の世帯の状況と前年の所得にもとづいて判定されます。8月1日は高額療養費の所得区分が切り替わる日でもあります。

3.1 世帯にいる被保険者全員の所得で判定される

判定に使われるのは、同じ世帯にいる後期高齢者医療の被保険者全員の課税所得と収入です。

そのため夫婦のどちらか一方の所得が高いと、もう一方も同じ割合になります。自分の年金額が少なくても3割負担になることがあるのは、この世帯単位の判定によるものです。

3.2 判定は毎年やり直されるため、割合が変わることがある

前年の所得が下がれば、翌年の8月から割合が下がることもあります。逆に、前年に不動産の売却などで一時的な所得があると、その翌年の割合が上がることもあります。

8月になって窓口での支払いが変わったと感じたときは、前年の所得に何か変化がなかったかを思い出してみると、理由がつかめる場合があります。

4. 3割負担と判定されても基準収入額適用申請で1割または2割になる場合がある

住民税課税所得が145万円以上であっても、収入そのものが一定額未満であれば、申請によって負担割合を見直してもらえる制度があります。基準収入額適用申請と呼ばれるものです。

4.1 収入の基準は被保険者が1人の世帯で383万円未満

世帯に後期高齢者医療の被保険者が1人だけの場合、その方の収入が383万円未満であれば申請の対象です。

なお同じ世帯に70歳から74歳の方がいる場合は、その方との収入の合計が520万円未満であることが基準になります。

4.2 被保険者が2人以上の世帯では合計520万円未満

世帯に被保険者が2人以上いる場合は、被保険者全員の収入の合計が520万円未満であることが基準です。

ここでいう収入は、所得の金額ではなく必要経費や控除を差し引く前の金額を指します。課税所得だけを見て諦めてしまうと、この申請にたどりつけません。心当たりがある場合は、市区町村の後期高齢者医療の担当窓口で確認してみましょう。

安達さやか
安達 さやか

証券会社でファイナンシャルアドバイザーとしてご相談を受けていた頃から、公的な制度は要件を満たしていても手続きをしてはじめて動くものが多いと感じています。基準収入額適用申請もそのひとつですので、収入の金額に心当たりがあれば、まず窓口に問い合わせてみてください。

5. 75歳以上の1人当たり医療費は令和3年度から5万円増えた

最後に、1人当たり医療費が令和3年度からの5年度分でどう動いてきたかを見ておきます。

5.1 93万9000円から98万9000円へ、4年で5.3%の増加

75歳以上の1人当たり医療費は、令和3年度が93万9000円、令和4年度が95万7000円、令和5年度が96万5000円、令和6年度が97万4000円、そして令和7年度が98万9000円でした。

令和3年度と令和7年度を比べますと5万円、率にして5.3%の増加です。伸び率は令和4年度が1.9%、令和5年度と令和6年度が0.9%、令和7年度が1.6%と、毎年少しずつ積み上がっています。

5.2 負担割合を掛けた額がそのまま窓口負担になるわけではない

ここまで見てきた1人当たり医療費は、加入者数で割った平均額です。実際に医療機関を受診していない方も加入者数に含まれるため、受診した方の医療費とは一致しません。

また1か月の自己負担が一定の額を超えた場合には、超えた分が払い戻される高額療養費制度があります。負担割合を単純に掛けた額よりも、実際の負担は少なくなる場合があります。

高額療養費の自己負担限度額は所得の区分ごとに決まっていますので、金額を確かめたい場合は厚生労働省の高額療養費制度のページか、加入している後期高齢者医療広域連合の案内を見ておくと安心です。

6. まとめにかえて

2026年8月28日に公表された「令和7年度 医療費の動向」によると、令和7年度の概算医療費は49.2兆円で、そのうち75歳以上に係る医療費は20.3兆円でした。1人当たりでは98万9000円となり、75歳未満の26万1000円の約3.8倍です。

この医療費のうち窓口で支払う割合は、住民税課税所得145万円以上で3割、28万円以上145万円未満で収入の基準にも当てはまると2割、それ以外は1割です。判定は毎年8月1日にやり直されます。

3割と判定されても、収入が被保険者1人の世帯で383万円未満、2人以上の世帯で合計520万円未満であれば、基準収入額適用申請で見直される場合があります。負担割合の通知が届いたら、割合だけでなく判定に使われた所得も確かめておきましょう。

参考資料

安達 さやか