3. 住民税非課税世帯が利用できる優遇制度
住民税非課税世帯になると、住民税がかからないだけでなく、さまざまな公的制度で優遇措置を受けられます。
たとえば、国民健康保険や後期高齢者医療制度には、所得が一定基準以下の世帯を対象として、保険料の均等割を7割・5割・2割軽減する制度があります。
- 7割:43万円+(年金または給与所得者の合計数-1)×10万円以下
- 5割:43万円+(年金または給与所得者の合計数-1)×10万円+31万円×(被保険者数)以下
- 2割:43万円+(年金または給与所得者の合計数-1)×10万円+57万円×(被保険者数)以下
なお、後期高齢者医療制度の軽減割合は、運営する都道府県の広域連合が独自に上乗せする場合があります。東京都の後期高齢者医療制度では、令和8・9年度は医療分に限り、7割軽減が7.2割軽減となります。自身の軽減割合は、加入している保険者に確認しておきましょう。
住民税非課税世帯は、医療費の負担にも違いがあります。代表的なのが、1カ月に支払った医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に超過分が支給される「高額療養費制度」です。
高額療養費制度は2026年8月と2027年8月の2段階で見直されます。すでに始まっている2026年8月から2027年7月までの自己負担限度額は、以下のように設定されています。
70歳未満・区分オ(住民税非課税世帯の人)
- 月額上限:3万6900円(直近12カ月に3回以上該当した場合の4回目以降は2万4600円)
- 年間上限:29万円
70歳以上・低所得者Ⅱ(住民税非課税世帯で、低所得者Ⅰに該当しない人)
- 月額上限:2万5700円(4回目以降は2万4600円)
- 外来のみの場合の上限:1万1000円
- 年間上限:29万円
70歳以上・低所得者Ⅰ(住民税非課税世帯で、世帯全員の所得が、公的年金等控除80万円などを差し引いて0円になる人)
- 月額上限:1万5700円
- 外来のみの場合の上限:8000円
- 年間上限:18万円
年間上限は、今回の見直しで新たに設けられた仕組みです。8月から翌年7月までの12カ月の自己負担額を合計し、上限に達した分は保険者から還付を受けられます。
住民税非課税世帯はほかの区分の人よりも限度額が低く設定されており、通院や高額な治療を受けやすくなっているのが特徴です。
このほかにも、住民税非課税世帯は国民年金保険料の免除・納付猶予、給付型奨学金の支援など、さまざまな措置が受けられます。
次章では、住民税の課税・非課税に対する考え方を解説します。
4. 【FP見解】課税・非課税どちらも「手取り」と「資産額」の確認を
住民税非課税世帯には、税金だけでなく社会保険料や医療費などにさまざまな負担軽減措置があります。そのため「ボーダーラインを超えないほうがお得なのでは」と考える人もいるでしょう。
しかし、税金や保険料を抑えるためだけに収入を減らすことは、必ずしも家計にとってよいこととは限りません。
収入が増えて住民税非課税世帯から外れれば、税金や社会保険料などの負担が増える可能性はあります。しかし、収入が大きく増えれば、負担が増えたとしても手元に残る金額は多くなり、家計に余裕ができるケースも考えられるのです。
また、現在の住民税の非課税判定では、基本的に前年の所得が重視されます。預貯金などの資産は住民税の計算では考慮されないため「どれくらいの資産を備えているか」も重要になります。住民税非課税世帯であっても、資産が少なく収入も限られていれば、厳しい家計管理を強いられます。
将来や老後の生活を考える際には「住民税が非課税か」だけで判断するのではなく、年金などから税金・社会保険料を差し引いた実際の手取り額と、預貯金などの資産額をあわせて確認するのが大切です。資産については、今後の物価変動なども見越して、早いうちから預貯金や運用で備えていくことも検討しましょう。
5. まとめ
2026年度は給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられ、東京23区では給与収入110万円以下が住民税非課税の目安となります。配偶者1人を扶養する場合は給与収入166万円、65歳以上で公的年金のみを受け取る単身者なら155万円、配偶者1人を扶養する場合は211万円が目安です。
ただし、これらの金額は世帯全員がそれぞれの基準を満たしていることが前提です。配偶者の収入が基準を超えていれば、世帯として非課税にはなりません。
また、住民税非課税世帯になると、社会保険料や高額療養費などの負担が軽減される場合もあります。
とはいえ、無理に住民税非課税世帯を目指す必要はありません。現在の生活費や将来の支出も考えながら、無理なく暮らせるよう家計管理をするのが大切です。判断に迷う場合は、自身が住む自治体の税務担当窓口に確認してみてください。
参考資料
石上 ユウキ