2. 制度そのものが切り替わるとき

2か所勤務では区分は変わりませんが、退職や就職では加入する制度自体が切り替わります。誰が手続きをするのかを確認します。

切り替えの手続きは、LIMOの記事「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」から要点を借りて確認します。

会社員・公務員として厚生年金に加入していた人が退職し、次の勤務先が決まっていない場合、退職日の翌日から「第1号被保険者」に区分が変わります。この切り替えは自動的には行われず、本人が市区町村の窓口で国民年金への加入手続きをする必要があります。

自営業やフリーランス、学生などの第1号被保険者が就職すると、入社日から「第2号被保険者」に切り替わります。この手続きは勤務先が厚生年金の資格取得届を提出することで完結し、本人が個別に国民年金の脱退手続きをする必要はありません。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

扶養に入る場合も会社経由です。

結婚などで、厚生年金に加入している配偶者に扶養される立場になると、「第3号被保険者」に区分が変わります。この届出も、原則として配偶者の勤務先(事業主)を経由して提出するため、本人が年金事務所へ出向く必要は基本的にありません。

3パターンのうち、本人が主体的に動かなければならないのは退職のケースだけです。就職や扶養入りは会社側の手続きで完結するのに、退職だけは自分で窓口に行く必要がある、という非対称性を知らずにいる人は、想像以上に多いはずです。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

14日を過ぎても2年以内に納めれば年金額に影響はないが、2年を過ぎると納付そのものができなくなる2/2

退職後の国民年金の手続きが遅れた場合の保険料の扱いと将来の年金額への影響を、14日以内・2年以内・2年経過の3段階で比べた表

出所:日本年金機構「保険料を納付しなかった期間がありますが、今から納付することができますか。」などをもとにLIMO編集部作成

退職時の期限にも幅があります。

日本年金機構の案内によると、退職後に国民年金へ加入する手続きは、住所地の市区役所または町村役場で行います。提出期限の目安は「退職日の翌日から14日以内」です。必要書類は、国民年金被保険者関係届書に加え、基礎年金番号が確認できる書類、そして被用者年金制度の資格喪失日を証明できる離職票などです。

14日を過ぎても、市区町村の窓口で手続きをすれば国民年金への加入自体は可能です。国民年金法の規定により、保険料は納付期限から2年を過ぎると時効により納付できなくなります。つまり、届出が14日を過ぎても、2年以内に納付すれば将来の年金額への影響はありません。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

未納と追納は別の制度です。

単に納め忘れていた未納分は、2年以内であれば通常の納付として支払えますが、2年を過ぎると時効で納付そのものができなくなります。一方、事前に免除や納付猶予の申請をして承認された期間については、承認から10年以内なら「追納」という別の制度で後から納めることができます。

「後からでも追納すればいい」という理解は、免除・猶予の手続きを済ませていた場合にしか使えません。窓口で何も申請せずに放置していた期間には、この10年という猶予は存在しないという点を押さえておく必要があります。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

減る額も試算されています。

老齢基礎年金の令和8年度の満額は月7万608円、年額に直すと84万7300円です。この満額は、20歳から60歳までの40年間(480か月)すべて保険料を納めた場合の金額で、未納の月がある分だけ比例して減額されます。1か月あたりの単価は84万7300円を480か月で割って約1765円、これが1年(12か月)分の未納になると、年額でおよそ2万1183円の減少です。

この金額は1年分の未納だけで見た金額であり、受給が始まってからは毎年この差が続きます。65歳から仮に20年間受け取るとすれば、1年分の未納の影響だけでも生涯では40万円を超える差になる計算です。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

なお、ここでいう満額は昭和31年4月2日以後に生まれた方の額です。昭和31年4月1日以前に生まれた方の令和8年度の満額は月7万408円、年額84万4900円で、1か月あたりの単価や未納1年分の減少額もその分小さくなります。

扶養から外れるときも本人の手続きです。

第3号被保険者は、年収が130万円を超えるなど扶養の基準から外れると、第1号被保険者への切り替えが必要になります。このケースも、退職時と同じく本人が市区町村の窓口で手続きをする必要があります。

扶養の基準を超えていなくても、配偶者が退職して第2号被保険者でなくなった場合や、配偶者との死別・離婚があった場合も、第3号被保険者としての要件を満たさなくなるため、第1号への切り替えが必要です。

出所:LIMO「国民年金と厚生年金の切り替え、退職時は「14日以内」に手続きが必要。本当の期限は2年、未納1年で年金が約2万円減る?試算をチェック」

3. 本人が出す届出は、意外に多い

ここまで、2か所以上で働くときの二以上事業所勤務届と、加入する制度そのものが切り替わる場面を見てきました。

二以上事業所勤務届では、主たる事業所を1つ選び、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額で標準報酬月額が決まります。保険料はその額をそれぞれの報酬に基づいて按分し、決定内容は選択した事業所を管轄する事務センターから両方の事業所へ通知されます。届出は事実発生から10日以内で、出すのは事業主ではなく被保険者本人です。

一方、加入する制度そのものが切り替わる場面では、本人が動く必要があるのは退職して次の勤務先が決まっていない場合と、扶養から外れる場合です。就職や扶養に入る場合は会社側の手続きで完結します。

退職時の目安は退職日の翌日から14日以内ですが、保険料が納められなくなるのは納付期限から2年を過ぎてからです。ただし放置した分は年金額に響きます。老齢基礎年金の満額は年84万7300円で、480か月で割ると1か月あたり約1765円、1年分の未納なら年額でおよそ2万1183円の減少という試算でした。届出が必要かどうか判断に迷う場合は、年金事務所または市区町村の窓口にご相談ください。

参考資料

LIMO編集部年金解説班