2. 負債を引いた「純貯蓄額」でみると、順位が変わる
貯蓄が多くても、住宅ローンなどの負債が大きければ、手元に残る分は変わってきます。そこで貯蓄現在高から負債現在高を引いた「純貯蓄額」でも並べてみました。
全国平均の負債は675万円。純貯蓄額は1384万円(貯蓄2059万円−負債675万円)になります。前年の1321万円から、63万円ふえました。
純貯蓄額でみても、1位は千葉市の2143万円。貯蓄でも純貯蓄額でも首位です。東京都区部は負債が1020万円と大きいため、純貯蓄額では1904万円で、こちらも2位でした。
順位が上がるのは、負債の小さい街です。奈良市は貯蓄では6位でしたが、負債が512万円と小さく、純貯蓄額では3位(1847万円)に上がります。長野市も貯蓄10位から純貯蓄額5位(1802万円)へと順位を上げました。
逆に、さいたま市は貯蓄では4位でしたが、負債が1133万円と大きく、純貯蓄額でみると1462万円で15位まで下がります。貯蓄の順位と11も差がつきました。住宅の取得などにともなう負債の大きさが、この入れ替わりに表れています。
貯蓄の額だけをみると分からない家計の姿が、負債まで引いてみると立体的に見えてきますね。
3. ランキングに振り回されないための、家計の見方
順位は気になりますが、数字の背景を押さえると、落ち着いて自分の家計に生かせます。ここでは3つの見方を紹介します。
3.1 1. 平均と「真ん中」は違う
平均は、貯蓄の多い世帯によって上に引っぱられます。全国平均2059万円に対し、真ん中の世帯を表す中央値は1264万円でした。
この800万円ほどの差が、平均だけをみると自分が下に感じてしまう理由です。だからこそ、平均や順位だけで一喜一憂しなくて大丈夫です。大切なのは、去年の自分と比べて前へ進んでいるかどうかです。
3.2 2. 自分の「純貯蓄額」を出してみる
やり方はかんたんです。預貯金・保険・有価証券などの合計から、住宅ローンなどの残高を引くだけです。
この純貯蓄額が、いざというときに動かせる本当の余力に近い数字です。家計簿アプリでも通帳でも、月に一度みる習慣をつけると変化が追えます。順位の高い街でも負債が重ければ余力は小さく、順位が下でも堅実に積み上げている家庭はたくさんあります。
3.3 3. ランキングは「街の条件」で違う
今回の数字は都道府県庁所在市の平均で、県全体の平均とは一致しません。世帯人員や持家率、年齢層も街ごとに違います。
全国では持家率が87.0%、世帯主の平均年齢は60.1歳です。条件の違いも頭の片隅に置くと、比較がぐっと正確になります。
4. 元証券会社員からのアドバイス
地域のランキングを、自分の家計に生かす手順を3つにまとめます。
一つ目は、近い都市の金額を目安にしつつ、平均ではなく前年の自分の純貯蓄額と比べること。金額そのものより、増えているかどうかに目を向けます。
二つ目は、貯蓄の置き場所を点検すること。生活防衛資金は使いやすい預貯金で確保し、当面使わない分だけを保険や投資に回すと、無理なく続けられます。
三つ目は、負債があるなら金利の高いものから見直すこと。住宅ローンなら、繰上げ返済と積立投資のどちらを優先するかを、金利と手元の余力を見比べて決めます。
ランキングを作っていて印象に残ったのは、貯蓄の順位と純貯蓄額の順位が入れ替わることでした。千葉市は両方で1位。いっぽう奈良市や長野市は、負債が小さいぶん純貯蓄額で順位を上げます。同じ「上位」でも、中身はずいぶん違うのだと感じました。
「平均より少なくて不安だ」という方もいます。ただ、平均は住む街や家族構成で大きく変わりますし、貯蓄の多い一部の世帯で押し上げられている数字でもあります。順位や平均は、景色のひとつにすぎません。
上位の街に住んでいても、負債が重ければ手元の余力は小さくなります。逆に、順位が下のほうでも、堅実に積み上げている家庭はたくさんあります。だからこそ、数字の見た目に一喜一憂しなくて大丈夫です。
ランキングは、自分の家計をのぞく入り口くらいに思っています。この秋、順位をきっかけに、来年はどんな家計にしたいかを家族で少し話してみる。その時間が、どの順位よりも確かな一歩になるはずです。
5. まとめにかえて
都道府県庁所在市別の貯蓄現在高は、全国平均2059万円を挟んで、上は2900万円台から下は800万円弱まで幅がありました。住む地域で、平均の姿はずいぶん変わります。
さらに負債を引いた純貯蓄額でみると、順位は入れ替わります。千葉市は両方で首位を守りましたが、さいたま市のように負債の大きい街は順位を下げ、奈良市や長野市のように負債の小さい街は順位を上げました。貯蓄の大きさだけでなく、負債とのバランスまで含めてみるのがおすすめです。
また、各市の集計世帯数は限られるため、順位はあくまで目安です。平均や中央値、地域のランキングは、自分の家計をふり返るきっかけとして使うのがよいでしょう。
まずは、近い街の金額を目安に、自分の純貯蓄額を一度計算してみましょう。去年の自分と比べる。その一歩から、来年の家計づくりが始まります。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 詳細結果表」第8-1表 都市階級・地方・都道府県庁所在市別(二人以上の世帯・勤労者世帯/2025年)
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
宮野 茉莉子
