3. 決める前に知っておきたい繰り下げ受給の「3つの落とし穴」

繰下げで増えるのは年金本体だけです。

3.1 加給年金額と振替加算は増えない

日本年金機構は、加給年金額や振替加算額は増額の対象にならないとしています。

年金額の一部が増額の対象から外れますので、通知書の内訳を見て、自分の年金にこれらが含まれているかを確かめておく必要があります。

3.2 待機期間中は加給年金額も受け取れない

さらに、繰下げ待機期間中は加給年金額や振替加算を受け取ることができません。

増額の対象外であるうえに、待っている間は支給もされないという扱いです。加給年金額がある方は、待つことで失う分も計算に入れることになります。

3.3 66歳以後に他の年金の権利を得ると増額率が固定される

66歳到達後に他の公的年金の受給権を得た場合は、その時点で増額率が固定され、請求の手続きを遅らせても増額率は増えません。

遺族年金や障害年金の権利が発生する場合が考えられます。待っていれば必ず増え続けるわけではありません。

4. 基礎年金と厚生年金は別々に繰下げできる

2階建ての年金は、片方だけを繰り下げることもできます。

4.1 片方だけ繰り下げる選び方がある

日本年金機構によると、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げすることができます。

老齢厚生年金だけを65歳から受け取り、老齢基礎年金を繰り下げるという組み合わせも取れます。加給年金額は老齢厚生年金に付きますので、この点も判断の材料になります。

4.2 昭和27年4月1日以前生まれは70歳まで

繰下げの上限年齢は、昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳までです。権利が発生してから5年後までという扱いで、増額率は最大42%になります。

75歳までの繰下げが選べるのは昭和27年4月2日以後生まれの方です。生年月日で上限が変わりますので、自分がどちらかを先に確認してください。

4.3 最大の増額率は84%

75歳まで繰り下げた場合の増額率は84.0%です。満額の月7万608円なら月12万9918円になる計算です。

月あたりでは5万9310円の差ですが、受け取り始める時期は10年遅くなります。

5. 決める前に確かめておきたい3つのこと

判断の前に手元でできることを挙げます。

5.1 待つ期間の生活費を出してみる

65歳から70歳まで繰り下げるなら、5年分の生活費を年金以外で用意することになります。

70歳代の金融資産は中央値1178万円でした。自分の貯蓄額と月々の支出を並べて、何年分あるのかを出しておくと判断しやすくなります。

5.2 加給年金額の有無を確認する

加給年金額がある方は、待っている間その分も受け取れません。年金額の通知書か、ねんきんネットで内訳を確認してください。

5.3 年金事務所で見込額を聞く

この記事の月額は満額を前提にした計算です。実際の額は納付済期間や厚生年金の加入歴によって変わります。

年金事務所や街角の年金相談センターでは、繰下げた場合の見込額を確認できます。数字を自分のものに置き換えてから決めるのが確かです。

6. 増える率と待つ期間を並べて考える

繰下げの増額率は0.7%に繰り下げた月数を掛けた率で、66歳以後75歳までの間で選べます。70歳なら42.0%、75歳なら84.0%です。

老齢基礎年金の満額は令和8年4月分から月7万608円ですので、70歳まで繰り下げると月10万263円、75歳までなら月12万9918円になる計算です。加給年金額と振替加算は増額の対象になりません。

一方で世帯主が70歳代の金融資産は平均2416万円・中央値1178万円で、10.9%は保有していません。増える率と、待つ期間を支える貯蓄の両方を並べてから決めてください。

参考資料

村岸 理美