2026年1月に、令和8年度の公的年金額が改定されることが決定されました。国民年金(老齢基礎年金)をフルで納めた場合の満額は月額7万608円となり、長引く物価高のなかで私たちの生活を支える重要な土台となります。

FP(ファイナンシャル・プランナー)として日々ご相談をお受けするなかで、「年金は少しでも遅く受け取って金額を増やしたほうが良いのでしょうか」というご質問をよくいただきます。たしかに増額の仕組みは魅力的ですが、受け取りを待っている間の生活費をどう工面するかという視点が抜け落ちてしまい、途中で家計が苦しくなってしまうケースも少なくありません。

今回は、年金を繰り下げて受け取る場合の増額率の仕組みや、シニア世代のリアルな貯蓄額のデータをもとに、繰り下げ受給を選ぶ前に知っておきたい「3つのポイント」を分かりやすく解説します。

1. 年金を70歳・75歳まで繰り下げるといくら増える?「最大84パーセント」の仕組み

まず、増額率の決まり方を見ていきます。

1.1 増額率は0.7%×繰下げた月数

日本年金機構は、繰下げの増額率を「0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数」としています。上限は84%です。

1か月単位で決まりますので、1年待たなくても増えます。66歳0か月なら8.4%です。

1.2 66歳から75歳までの間で選べる

繰下げの申出ができるのは66歳以後75歳までの間です。昭和27年4月1日以前生まれの方は上限が70歳までとなり、増額率は最大42%になります。

65歳から数えて最長10年で、増える率は0.7%ずつ積み上がる仕組みです。

1.3 満額なら月7万608円が10万263円になる計算

令和8年4月分からの老齢基礎年金の満額は月7万608円です(昭和31年4月1日以前生まれの方は月7万408円)。これを42.0%増やすと月10万263円になります。

75歳まで待って84.0%なら月12万9918円です。いずれも1円未満を切り捨てた計算で、実際の額は納付済期間などによって変わります。

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請求時の年齢ごとに増額率が決まっています

出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成

2. 待機期間の生活費はどうする?70歳代の貯蓄は中央値「1178万円」

次に、待っている間の原資になる金融資産を見ておきます。

2.1 70歳代の金融資産は平均2416万円・中央値1178万円

金融経済教育推進機構の家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯)によると、世帯主が70歳代の金融資産保有額は平均2416万円、中央値1178万円でした。金融資産を保有していない世帯を含む数字です。

平均と中央値で1238万円の差があります。平均は多く持つ世帯に引き上げられますので、真ん中の姿を見るなら中央値のほうです。

2.2 10.9%は金融資産を保有していない

同じ調査では、世帯主が70歳代で金融資産非保有の世帯が10.9%です。一方で3000万円以上の世帯が25.2%あります。

4世帯に1世帯が3000万円以上を持ち、10世帯に1世帯は保有していないという開きです。繰下げを選べるかどうかは、この位置によって大きく変わります。

2.3 60歳代は平均2683万円・中央値1400万円

世帯主が60歳代では平均2683万円、中央値1400万円で、70歳代より多くなっています。全国の平均は1940万円、中央値は720万円です。

60歳代から70歳代にかけて中央値が222万円下がっており、取り崩しが進んでいることが読み取れます。

年代別に見ると、平均と中央値の差が大きく開いています2/2

年代別に見ると、平均と中央値の差が大きく開いています

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年(二人以上世帯調査)」をもとにLIMO編集部作成

村岸 理美

増える率だけを見て決めると、待っている間の生活費が抜け落ちます。両方を並べてから判断してください。