「介護保険施設」とひとくくりに呼ばれることが多い、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院。この3つは同じ枠組みで語られがちですが、実は入所できる条件も施設の目的もまったく異なります。

この記事では、厚生労働省・介護サービス情報公表システムの公式情報にもとづき、公的介護保険施設の3つの種類の違いを整理します。なお、介護保険料が40歳からどう天引きされるかを整理した別記事もあわせてご覧ください。

1. 公的介護保険施設は「特養」「老健」「介護医療院」の3種類

公的な介護保険施設には、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院の3種類があります。いずれも介護保険が適用される施設ですが、それぞれ役割が異なります。

特養は日常生活の世話を中心とした「生活施設」、老健は在宅復帰を目指す「中間施設」、介護医療院は医療ニーズの高い人向けの「長期療養施設」という位置づけです。

齊藤 慧
同じ「介護保険施設」という言葉でくくられていても、実際には3つとも目的がまったく違うというのは、意外と知られていないポイントです。名前だけで判断せず、それぞれの役割をしっかり押さえておくと、いざというときに慌てずに済みます。

2. 特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上でなければ入所できない

特別養護老人ホーム(特養)は、入浴や食事などの日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話を提供する生活施設です。ただし入所できるのは、原則として要介護3以上と認定された人に限られます。

要支援1・2の人は利用できず、新たに入所する要介護1・2の人も、やむを得ない理由がある場合以外は対象になりません。「介護が必要になったらすぐ特養に入れる」と思っていると、要介護度の条件で入所できないケースがあることを見落としがちです。

3. 【編集者の視点】

特養は入所期間に定めがなく、長く住み続けられる施設です。だからこそ、要介護3以上という入口の条件が厳しく設定されています。

要介護1・2の段階で「そろそろ特養を」と考えていると、実際には対象外だと分かって慌てることになりかねません。

4. 介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指す「中間施設」であり住み続ける場所ではない

介護老人保健施設(老健)は、要介護1~5の認定を受けた人が対象で、リハビリテーションや医療的なケアを受けながら、在宅での生活に戻ることを目指す施設です。厚生労働省の公式情報でも「在宅復帰・在宅支援を目指す施設」と明記されています。

「老健も特養と同じように長く住み続けられる場所」と考えていると、実態と異なることになります。老健はあくまで在宅復帰に向けたリハビリの場という位置づけで、退院後の一時的な受け皿として使われることが多い施設です。

齊藤 慧
「老健=ずっと住める施設」というイメージのまま入所を検討すると、退院後の見通しが立てにくくなります。あくまで在宅復帰を目指す通過点なのだと、目的の違いをあらかじめ家族全員できちんと共有しておくと、後々の混乱を避けやすくなります。

5. 介護医療院は、医療ニーズの高い人のための「長期療養」施設

介護医療院は、長期にわたり療養が必要な要介護者を対象に、療養上の管理・看護・医学的管理の下での介護や機能訓練、看取り・ターミナルケアまで提供する施設です。医療提供施設としての側面もあわせ持っています。

老健が在宅復帰を目指す施設であるのに対し、介護医療院は医療ニーズの高い人が長期にわたって療養することを前提としている点が大きな違いです。

5.1 【特養・老健・介護医療院の目的と入所条件の比較】

  • 特養:日常生活の世話を中心とした生活施設。原則要介護3以上、入所期間の定めはない。
  • 老健:リハビリを通じて在宅復帰を目指す中間施設。要介護1〜5が対象。
  • 介護医療院:医療ニーズの高い人向けの長期療養施設。看取り・ターミナルケアも担う。

6. 【編集者の視点】

3施設の違いを一言で表すなら、特養は「暮らす場所」、老健は「戻るための場所」、介護医療院は「療養を続ける場所」です。

この目的の違いを理解しておくと、家族の状態に合わせてどの施設を検討すべきかの見当がつけやすくなります。

7. 3施設とも入居一時金は不要で、月額費用のみの負担になる

特養・老健・介護医療院はいずれも公的な介護保険施設のため、民間の有料老人ホームのような高額な入居一時金は必要なく、月々の利用料のみで入所できます。

「介護施設は高額な一時金が必要」というイメージのまま検討していると、実際には月額費用だけで入所できる公的施設があることを見落としてしまいます。ただし介護医療院は医療ニーズが高い人向けのため、他の施設に比べて月々の費用が高くなる傾向があります。

齊藤 慧
入居一時金が要らないというのは、家計を考えるうえで大きな安心材料になります。とはいえ月々の費用は施設ごとに差があるので、事前の確認はやはり欠かせないと、あらためて強くそのように感じるところがあります。

8. 施設探しは、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談から始まる

特養・老健・介護医療院のいずれも、本人や家族だけで申込み先を判断するのは簡単ではありません。まずは地域包括支援センターや、担当のケアマネジャーに相談するところから始めるのが一般的な流れです。

「施設に直接問い合わせればいい」と考えがちですが、実際には要介護度や医療ニーズの状況を踏まえて、複数の候補から絞り込む必要があります。相談窓口を通すことで、本人の状態に合った施設を紹介してもらいやすくなります。

8.1 【3施設の主な相談・申込みの流れ】

  • 特養:地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、施設に直接申込む。
  • 老健:入院先の医療ソーシャルワーカーやケアマネジャーが、退院支援の一環として調整する。
  • 介護医療院:主治医や医療ソーシャルワーカーを通じて、医療ニーズを踏まえて調整する。

入院・入所の経路によって最初の相談先が変わるため、「どこに聞けばいいか分からない」という段階でも、まずは身近な相談窓口に連絡することが第一歩になります。介護費用は総額いくらかかるかを試算した別記事もあわせてご覧ください。

9. どの施設が向いているかは、要介護度と医療ニーズの有無で決まる

3つの施設のうち、どれを検討すべきかは、まず要介護度が入所条件を満たしているか、そして医療的なケアがどれだけ必要かで大きく変わります。

要介護3以上で長く暮らせる場所を探しているなら特養、退院後にリハビリをして自宅に戻りたいなら老健、医療ニーズが高く長期の療養が必要なら介護医療院、というのが基本的な考え方です。ケアマネジャーに相談しながら、本人の状態に合った施設を検討することをおすすめします。入所後の費用が払えるか不安な場合は、老人ホーム費用が払えないときの対処法を整理した別記事も参考になります。

齊藤 慧
目的の違いさえ押さえておけば、いざというときに施設選びで迷う時間をぐっと減らせます。家族が急に介護が必要になったときほど、こうした基礎知識がきっと大きな助けになってくれるはずだと、私自身も心からそう思います。

※本記事は、編集部が厚生労働省・介護サービス情報公表システムが公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

10. まとめ

  • 公的介護保険施設は「特養」(暮らす場所)「老健」(戻るための場所)「介護医療院」(療養を続ける場所)の3種類で、目的がそれぞれ異なる。
  • 特養は原則要介護3以上でなければ入所できず、老健は在宅復帰を目指す中間施設で住み続ける前提ではない。
  • 3施設とも入居一時金は不要で、月額費用のみで利用できる。

「介護保険施設」とひとくくりにせず、それぞれの施設が持つ目的の違いを理解しておくことで、いざというときに本人の状態に合った選択がしやすくなります。

実際に施設を探す段階になったら、まず地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することから始めましょう。目的の違いを知っているだけで、相談時の話もスムーズに進めやすくなります。

11. よくある質問

11.1 Q. 特養・老健・介護医療院はどう違いますか。

A. 特養は日常生活の世話を中心とした生活施設、老健は在宅復帰を目指す中間施設、介護医療院は医療ニーズの高い人向けの長期療養施設です。

11.2 Q. 特養にはどんな人でも入所できますか。

A. いいえ。原則として要介護3以上と認定された人が対象で、要介護1・2の人はやむを得ない理由がある場合以外は対象外です。

11.3 Q. 老健にはずっと住み続けられますか。

A. 老健は在宅復帰を目指すリハビリの場という位置づけで、長期間住み続ける前提の施設ではありません。

11.4 Q. 介護医療院はどんな人が対象ですか。

A. 長期にわたり療養が必要な要介護者が対象で、医療的なケアや看取り・ターミナルケアも提供されます。

11.5 Q. 3つの施設は入居一時金が必要ですか。

A. いずれも公的介護保険施設のため、高額な入居一時金は不要で、月額費用のみで利用できます。

11.6 Q. どの施設を選べばよいか迷ったらどうすればよいですか。

A. 要介護度や医療ニーズの有無によって適した施設が変わるため、担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。

参考資料

齊藤 慧