6. 上位に並ぶ企業の顔ぶれはほとんど同じ。どちらを選ぶかで迷っていた方が毎月の積み立てを始めるまで。IFA・奥田 朝が語る、確かめていった順序
40歳代は、勤め先での役割も家計の形もある程度固まって、そろそろ資産運用を始めておきたいと考える方が多い時期です。前半でみたように、世界の株式に広く投じるものと、アメリカの代表的な株価指数に連動するものでは、組み入れの上位に並ぶ企業の顔ぶれがほとんど重なります。これから始める方にとって手前にあるのは、その二つのどちらを買うかを決めきれずに、そこで止まってしまう段です。これから始めようという方から、すでにまとまった資産をお持ちの方まで、ご相談に応じてきた立場から申し上げると、始めるつもりはあるのに、買うものを決める段になって手が止まり、そのまま置いてしまう方が多くいらっしゃいます。決めきれないこと自体が、始められない理由になってしまうわけです。相談の場では次のような声を耳にします。
6.1 似た名前のものがいくつも並んでいて、どれを選べばよいのかが決められない

相談の場でも、始めるつもりは決まっているのに、買うものを決める段で手が止まって、何をどの順番で確かめればよいのか分からないまま置いているという方に数多くお会いします。
6.2 【IFA・奥田 朝が回答】上位の顔ぶれが重なるのなら、決め手になるのは費用と為替の扱い、そして続け方
6.3 ポイント1:買うものを決めきる手前でも、始めるための設定は先に済ませておける
どれを買うかで止まっている方には、決めるのを待たずに済ませておける部分から手をつけましょうとお話ししています。税金がかからない枠を使った積み立てを始めるには、口座を用意して、毎月引き落とす銀行の口座を登録し、買い付ける日と毎月の金額を設定するという段取りがあります。ここは、どの銘柄を買うかとは切り離して進められる部分です。しかも、毎月の金額は始めたあとから変えられますし、いったん止めることもできますので、最初に決めた額が先々まで自分を縛るわけではありません。設定まで済ませてしまうと、決めた日に自動で買われる形になり、毎月そのつど買うかどうかを判断しなくてよくなります。手が止まりやすいのは、毎回自分で決めなければならない形にしているときです。あわせて、金融機関のアプリや会員向けの画面で、いまの残高と毎月の積立額が見られるようにしておくと、始めたあとの確認が一か所で済みます。ただし、枠の上限や使い方、手続きの締切、反映までにかかる日数は制度の決まりと金融機関の取り扱いに沿って決まりますので、ご自身の口座で何がどこまでできるのかは、口座のある金融機関の窓口で確かめてください。
6.4 ポイント2:値動きの幅と、かかる費用は、分けて確かめる
次に、始める前に押さえておいていただきたいことが二つあります。値動きの幅と、費用です。この二つはよく一緒に語られますが、性質がまったく違います。値動きの幅というのは、損をするという意味ではなく、上にも下にも振れるその振れ幅のことです。株式に投じるものは、この幅が大きいほうに入ります。一方の費用は、振れ幅とは関係なく、決まったところから決まった形で引かれていきます。引かれる場所は主に三つあって、買うときにかかるもの、持っているあいだ毎日少しずつ残高から引かれるもの、そして換金するときに差し引かれるものです。毎月コツコツ積み立てて長く持つつもりなら、効いてくるのは持っているあいだのものです。年数分だけ積み上がっていく費用ですから、上位の顔ぶれが似ている二つであっても、ここが同じとは限りません。ですから、中身の違いを突き詰める前に、持っているあいだにどこからいくら引かれるのかを並べて見てくださいとお伝えしています。この一段だけで、似た名前が並ぶ中から候補はかなり絞れます。
6.5 ポイント3:外貨で持つ部分には、為替に手当てをかける形とかけない形の両方がある
似た名前のものが並ぶ理由には、もう一つあります。為替の扱いです。海外の資産に投じるものは、同じ対象を組み入れていても、為替に手当てをかけた形と、かけない形が別々に用意されている場合があります。手当てをかけると、円と外貨の交換比率が動いたことの影響が結果に出にくくなります。その代わりに、手当てそのものに費用がかかります。この費用の水準は、日本と相手の国の金利の関係などによって変わるもので、いつでも同じというわけではありません。かけない形には手当ての費用はかかりませんが、交換比率の動きはそのまま結果に出ます。どちらがよいと一律に申し上げることはできませんし、私のほうから断定もできません。ここでお伝えしたいのは、名前の末尾に手当ての有無が書き分けられているので、選ぶ前にどちらなのかを見てくださいということです。似ていると思っていた二つが、実は為替の扱いだけが違うものだった、ということが起こります。手当てをかけるかどうかは、値動きの幅を小さくするための手段ではなく、外貨で持つ部分をどう扱うかという別の軸の選択です。この軸があると知っておくだけで、並んでいるものの見分けはつきやすくなります。
6.6 ポイント4:買う前に交付される資料で中身と費用を見て、決めたら年単位で持ち続ける
ここまで確かめたら、最後に、買う前に交付される説明の資料に目を通してください。資料には、どこに投じるものなのか、費用がいつどこから引かれるのか、これまでにどれくらい上下してきたのかが、決まった順番で書かれています。全部を読み込む必要はありません。投じる対象、費用、過去の振れ幅の三か所を見るだけで十分です。相談の場では、この三か所をご一緒に開いて確かめています。自分の目で見て納得しておくと、始めたあとの受け止め方が変わります。値段は上がったり下がったりするものですから、下がった月に売ってしまうと、上下に付き合ってきた意味がなくなります。毎月同じ金額で買い続けているあいだは、値段が下がった月には同じ金額でより多くの口数を買うことになりますので、途中の下がりは買い付けの側では働いてくれる部分でもあります。ですから、日々の値動きを追いかけるのではなく、積み立てが設定したとおりに続いているかどうかを確かめる形にして、年単位で持ち続けていただくようお願いしています。なお、資料の内容は見直されることがありますし、制度の枠や税金の扱いは法令に沿って決まりますので、ご自身に当てはめる段では金融機関の窓口や所管の窓口で確かめてください。
上位の顔ぶれが重なる二つのどちらを選ぶかは、始める前に決着させなければならない問いではありません。相談の場でお伝えしているのは、完璧な一本を選び当てるより先に、毎月自動で買われる形を作ってしまうほうが早い、ということです。どちらから先に買ったとしても、そのあとの続け方のほうが手元の結果を左右します。ですから、決めきれないうちは動けない、という順番にしないでいただきたいのです。もっとも、これは一つの考え方です。名前の似た二つのうちどちらがその方に向いているかは、投資の経験や毎月に回せる余裕、そのお金を使うのが何年先なのかによって変わります。枠の使い方や税金の扱い、選べる手続きは法令と金融機関の取り扱いに沿って決まりますから、ご自身に当てはめる段は、口座のある金融機関の担当者や、税の部分は税務署や税理士にあたって確かめてください。
7. まとめにかえて
2026年8月31日時点の実績を並べると、過去1年間はオルカンの+33.1%がS&P500の+30.4%を上回り、過去3年間では+92.0%に対して+93.1%とわずかに上下が入れ替わっていました。設定来では+289.1%と+354.1%です。組み入れの上位10銘柄は9つまでが同じ企業ですから、この差を生んでいるのは重なっている部分ではなく、比率と、残りの約4割に何を入れているかのほうです。年あたりに直した差は、1年・3年・設定来のそれぞれで大きさが異なり、一定の水準に収まっているわけではありませんでした。まずはご自身が見ている数字が、いつを基準に、何年ぶんを足したものなのかを確かめるところから始めてみてください。制度の枠や税金の扱い、費用の引かれ方は、交付される資料や口座のある金融機関の窓口で確かめていただけます。
参考資料
- 【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」
- 三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)月次レポート」
- 三菱UFJアセットマネジメント株式会社「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)月次レポート」
奥田 朝
