2026年(令和8年)4月1日に、新年度の年金額の改定が実施されました。物価や賃金の変動に合わせて年金支給額が見直されるなかで、ご自身の将来の年金について見直す機会が増えているのではないでしょうか。特にご夫婦の場合、「もしも夫(あるいは妻)が先に亡くなったら、残された自分の年金や生活費はどうなるのだろう」と不安に感じる方は少なくありません。
FP(ファイナンシャルプランナー)として家計相談をお受けしていると、「夫の年金に付いていた上乗せ分は、夫が亡くなったあとも私がもらい続けられるの?」というご質問をよくいただきます。実は、年金の上乗せには種類があり、亡くなったあとに「止まるもの」と「続くもの」があるのです。
夫が受け取っていた老齢厚生年金(会社員や公務員だった方がもらう年金)には、条件を満たすと「加給年金額(配偶者や子どもがいる場合の上乗せ)」が付きますが、夫が亡くなるとこれは支払われなくなります。一方で、妻自身の老齢基礎年金(すべての方がもらうベースの年金)に付いている「振替加算(妻の年金への上乗せ)」は、そのあとも続きます。
似た名前ですが、性質がまったく違うこの2つの制度。この記事では、遺族厚生年金(残された家族の生活を支える年金)の額の決まり方とあわせて、令和8年4月分からの加給年金額と振替加算がどうなるのかを、分かりやすく解説していきます。
1. 夫が亡くなると「加給年金額」は支払われなくなる
最初に、止まるほうから確認します。
1.1 加給年金額は夫の年金に付いている「上乗せ」
加給年金額は、受給権者が生計を維持している配偶者や子がいる場合に、その方の老齢厚生年金に加算されるものです。令和8年度の配偶者に対する額は年24万3800円で、1人目・2人目の子は各24万3800円、3人目以降の子は各8万1300円となっています。
配偶者の加給年金額には特別加算があり、受給権者の生年月日によって変わります。昭和18年4月2日以後に生まれた方の場合は年17万9900円で、加給年金額との合計は年42万3700円です。
1.2 離婚や死亡で生計を維持されなくなったときに止まる
加給年金額は、離婚や死亡などによって生計を維持されなくなったときに支払われなくなります。夫が亡くなれば、夫の老齢厚生年金そのものが無くなるので、そこに付いていた加算も終わります。
なお、配偶者が65歳に達したことで打ち切られる場合もあります。こちらは死亡による失権とは別の話なので、混同しないようにしたいところです。
2. 遺族厚生年金、報酬比例部分の4分の3で決まる
加給年金額が止まる代わりに受け取ることになるのが、遺族厚生年金です。
2.1 報酬比例部分を計算する
報酬比例部分は、平成15年3月以前の期間について平均標準報酬月額に1000分の7.125と月数を掛けた額と、平成15年4月以後の期間について平均標準報酬額に1000分の5.481と月数を掛けた額の合計です。昭和21年4月1日以前に生まれた方は給付乗率が異なります。
2.2 その4分の3が遺族厚生年金になる
平均標準報酬額35万円で40年(480月)加入し、その全期間が平成15年4月以後だった場合、報酬比例部分は年92万808円、遺族厚生年金は年69万606円になります。
2.3 65歳以上は「自分の老齢厚生年金」が優先される
65歳以上で自分の老齢厚生年金を受け取れる場合は、まず自分の老齢厚生年金が支払われ、遺族厚生年金はその差額だけが支給されます。老齢基礎年金は全額を受け取れます。
3. 夫の死後も続く「振替加算」とは
ここからが、配偶者が亡くなったあとも「続くほう」のお金の話です。
3.1 加給年金額が打ち切られたときに妻の年金へ「振り替わる」
妻が65歳になると、それまで夫に支給されていた加給年金額は打ち切られます。このとき妻が老齢基礎年金を受けられる場合には、一定の基準により妻自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。これが振替加算です。
付いている先が夫の老齢厚生年金ではなく妻自身の老齢基礎年金なので、夫が亡くなっても無くなりません。
3.2 金額は妻の生年月日で決まる
振替加算の額は、政令で定める率によって生年月日ごとに変わります。令和8年度の額でみると、昭和25年4月2日から昭和26年4月1日までに生まれた方は年8万7516円、昭和30年4月2日から昭和31年4月1日までに生まれた方は年5万5184円です。
昭和36年4月2日から昭和41年4月1日までに生まれた方は年1万6335円で、月額にすると1361円になります。
3.3 昭和41年4月2日以後に生まれた方は対象外
振替加算の対象になるのは、大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた方です。昭和41年4月2日以後に生まれた方には振替加算がありません。
加給年金額と振替加算は、どちらの年金に付いているのかで扱いが変わります。夫の分か自分の分かを先に書き分けてから、通知書を見比べるようにしています。
