9月は、自治体が年度の後半に向けた給付や減免の案内を出しはじめる時期にあたります。案内に並ぶ「住民税非課税世帯」という条件を見て、自分は当てはまるのだろうかと確かめようとすると、収入の額を見ただけでは答えが出ないことに気づきます。判定に使うのは収入そのものではなく、そこから控除を引いたあとの所得で、しかもその年に何を申告したかによって合計が変わります。実務でご相談を受けていて感じるのは、証券口座を源泉徴収ありにしてあるから税金の話はそこで終わっている、と受け止めている方が多いということです。ここでは神戸市の例をもとに非課税の目安を確かめ、そのうえで特定口座の利益が判定に入ってくる場面はどこなのかをみていきます。
なお、住民税非課税世帯の収入基準と優遇制度に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 住民税が非課税になる世帯は、どんな優遇を受けられるのか「代表的な5つ」
所得の水準が一定の基準を下回ると、その世帯は住民税が課されない扱いになります。この扱いに当てはまる世帯は、現金の給付を受けられる場面があるだけでなく、毎月または毎年の負担そのものが軽くなる制度にも乗ることができます。物価が上がった時期には給付が話題になりやすいのですが、家計に長く効くのはむしろ後者です。
どの制度がどこまで軽くなるのかを制度ごとにたどった解説は、【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度!制度の基本とファクトを網羅した完全ガイドにまとめています。
【一覧表】住民税非課税世帯への優遇措置1/7
LIMO編集部作成
ここでは代表的な5つを順に見ていきます。それぞれ、対象になる人と軽くなる幅の決め方が違います。
1.1 国民健康保険料の応益割は、どの割合で減額されるのか
国民健康保険料のうち、加入者の数や世帯ごとに定額でかかる部分が減額されます。減額の幅は所得の水準に応じて段階が分かれます。
応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額
1.2 介護保険料の減額は、誰が対象になるのか
介護保険料も軽くなりますが、対象になる年齢の区分が決まっており、軽くなる額の決め方は住んでいる市区町村に委ねられています。
- 第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる
1.3 国民年金保険料は、どの形で負担が軽くなるのか
国民年金の保険料については、納めなくてよい扱いにするか、納める時期を先に延ばす扱いにするかで、いくつかの形が用意されています。
- 全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか
1.4 保育料の無償化は、何歳の子どもまで広がるのか
保育料は、3歳から5歳までがすでに無償の扱いですが、非課税の世帯ではそれより下の年齢まで対象が広がります。
- 0歳から2歳までの保育料が無償化
- これにより、0~5歳までの保育料が無料になる
1.5 高等教育の修学支援新制度では、何が免除されるのか
大学や専門学校に進むときの費用についても、支払いを免除する仕組みと、返さなくてよい奨学金の仕組みが組み合わされています。
- 授業料・入学金の免除または減額
- 返還を要しない給付型奨学金
- 上記により大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化
これら5つは全国どこでも共通して用意されている枠組みですが、市区町村が独自に足している支援を含めると、使える制度の数はさらに増えます。
2. 「住民税非課税」とは、どの税負担がかからない状態を指すのか
そもそも住民税は、住んでいる都道府県と市区町村に納める地方の税です。日々使っている道路や窓口の仕事を支える財源にあたります。この税がかからない状態を指して非課税と呼ぶわけですが、住民税は一つの計算だけで決まる税ではありません。
2.1 住民税は「均等割」と「所得割」のどちらも見る必要がある
個人にかかる住民税は、次の2つの部分からできています。
- 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割:所得に応じて税額が決まる部分
この2つのどちらも発生しない人が、住民税非課税にあたります。そして世帯にいる全員がその状態であるときに、世帯として非課税の扱いになります。所得割だけがかからない人もいますが、その場合に支援の対象になるかどうかは市区町村ごとに扱いが分かれるため、住んでいる市区町村の窓口で確かめておく必要があります。
2.2 遺族年金や障害年金は、判定の計算にどう扱われるのか
ここでよく行き違いが起きるのが、受け取っているお金のすべてが判定の計算に入ると思い込んでしまう場面です。遺族年金と障害年金は、所得税法や年金の各法律で課税されない所得と定められています。つまり、いくら受け取っていても、住民税の判定で合計する所得には入りません。
そのため、老齢年金など課税の対象になる収入が市区町村の基準を下回っていれば、遺族年金を受け取っている世帯でも非課税に当てはまる可能性が残ります。年金があるのだから対象外だろうと考えて、確かめる前にあきらめてしまっている方は少なくありません。逆に言えば、判定の計算に入る収入と入らない収入を分けて数え直すところが、最初の一手になります。
3. 住民税がかからない条件は、どの3つに分かれるのか
住民税がかからない主な条件は、次の3つのどれかに当てはまる場合です。
- 生活保護を受給している
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
- 前年所得が自治体の定める基準額を下回る
このうち1つめと2つめは全国で共通の決まりです。3つめの基準額は市区町村が自分で決めているため、同じ所得でも住んでいる場所によって結論が変わります。ですから、自分の場合を確かめるときは、全国共通の話と、住んでいる市区町村の基準の話を分けて調べることになります。
4. 非課税の目安になる所得は、どの式で決まるのか「神戸市の例」
3つめの基準額がどう決まるのかを、兵庫県神戸市の例で見てみます。市区町村ごとに違う部分ではありますが、式の組み立て方の見当をつけるには十分です。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が58万円以下の配偶者を指します。
式を読むと、頭数に応じて35万円ずつ積み上がり、そこに10万円が足され、養う相手がいる世帯にはさらに21万円が乗る形になっています。この額を超えなければ住民税は課税されません。単身なのか、養う相手がいるのかで結論が変わるのは、この21万円と頭数の部分が動くからです。
5. 収入に置き換えると、非課税のボーダーラインはいくらになるのか
ここまでは所得の話でしたが、手元の通知書や源泉徴収票で目に入るのは収入の額です。所得とは、収入から各種の控除を引いたあとの金額を指します。神戸市の基準を収入の額に置き換えると、世帯の人数と収入の種類の組み合わせで次のように分かれます。
単身の世帯で見るとき
合計所得金額が45万円以下になる方が対象です。収入に置き換えると次のようになります。
- 給与収入のみで収入金額が110万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
同一生計配偶者か扶養親族が1人いる世帯で見るとき
合計所得金額が101万円以下になる方が対象です。こちらも収入に置き換えると次のようになります。
- 給与収入のみで収入金額が166万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3334円以下の方(65歳未満)
並べてみると、同じ年金収入でも65歳の前後で線の位置がまるで違い、養う相手が1人いるだけで線が大きく上がることが分かります。単身で給与だけの方は年収100万円以下、65歳以上で年金だけの方は155万円以下がひとまずの目安です。65歳以上の夫婦2人で年金だけなら、211万円あたりまで非課税に収まる可能性があります。自分がどの行に当てはまるのかを先に決めてから額を見ないと、他人の線を自分の線と取り違えることになります。
6. ボーダーラインをわずかに超えると、手取りはどう変わるのか
この制度で意識しておきたいのが、線をまたいだ瞬間に負担が段差のように増える場面です。仕組みを知らないままだと、収入が増えたのに暮らしが楽になった気がしないという結果につながります。
6.1 パートの時間を増やしたとき、優遇が外れることで何が起きるのか
線のすぐ近くで働く時間を増やし、年収を少しだけ押し上げると、非課税の対象から外れて優遇や給付が届かなくなることがあります。増えた収入より、失った軽減の合計のほうが大きくなれば、働いた時間に見合う手取りの伸びは得られません。年金を繰下げて受け取る額を増やしたときにも、同じように線をまたぐことでつり合いが変わる場合があると指摘されています。
6.2 額面ではなく手取りで見ると、どのラインを目指すことになるのか
この段差を避けるには、額面の年収ではなく、税と社会保険料を引いたあとに残る金額で家計を見るほかありません。線の近くにいる方が考える道は、実務上ふたつに分かれます。配偶者の扶養の範囲にきっちり収める道か、社会保険料の負担増(約20万〜30万円)を上回るまで働いて手取りが実質的にプラスに転じるライン(目安として年収150万〜153万円以上)まで進む道です。
社会保険の壁(106万円や130万円)を少しだけ超える働き方は、手取りが目減りしたり伸びなくなったりする原因になります。時給と勤務時間、勤め先の規模を並べて、自分の場合の分かれ目がどこにあるのかを先に押さえておくのが確かです。
6.3 収入がわずかに増えたのに負担が重くなるのは、どの制度が重なるからか
線をわずかに超えたときに動くのは、住民税だけではありません。国民健康保険料と介護保険料の均等割の軽減が縮んだり無くなったりし、医療費の自己負担に上限を設ける仕組みでも上限額が引き上げられます。さらに、数万円から10万円ほどの規模で用意される低所得の世帯向けの臨時給付金についても、対象から外れます。
良かれと思って動いた結果、収入はわずかに増えたのに、税と保険料と医療費の三つが同じ方向に動いて家計の実感が下がる。この重なり方を知っているかどうかで、線の近くでの判断は変わってきます。なお、どの制度がどの時点の所得で判定されるかは市区町村ごとに扱いが違いますので、線の近くにいる方は窓口で確かめてから動くことをおすすめします。
7. 退職した年に非課税へ切り替わらないのは、どういう仕組みなのか
もうひとつ確かめておきたいのが、いつから非課税として扱われるのかという時期の問題です。収入が減った月から負担も軽くなると考えていると、退職の直後につまずくことになります。
7.1 住民税は、いつの期間の所得をもとに計算されるのか
住民税は、1月1日から12月31日までの1年間の所得をもとに計算され、その翌年の6月から納める形になります。ですから、いま収入がまったく無くても、去年の収入が線を超えていれば、今年は課税される側として扱われます。手元の状況と通知書の内容が食い違って見えるのは、この1年のずれのためです。
7.2 定年退職の1年目に、現役並みの税や保険料が続くのはなぜか
たとえば長く勤めた会社を3月で定年退職し、4月から年金だけの暮らしに入ったとします。4月以降の収入は大きく下がりますが、その年の6月ごろから自分で納めることになる住民税や、退職の直後に届く納付書の額は、会社員だった前年の高い給与をもとに計算されています。
そして、年金だけになって所得が線を下回ったとしても、その減り方が住民税の計算に反映されて実際に非課税へ切り替わるのは、退職した年の翌々年の6月以降、つまり新しい年度の住民税が決まるときです。退職してから1年ほどは前年の所得をもとにした税と国民健康保険料の納付が続きますので、その分の現金を先に取り分けておく必要があります。
7.3 配偶者との死別で世帯の形が変わったとき、判定はどう動くのか
前年の所得をもとに決まるという性質は、夫婦のどちらかが亡くなったときにも影響します。世帯主が課税される側で配偶者が非課税の側だった場合、世帯としては課税世帯です。世帯主が亡くなって配偶者が単身の世帯になれば、その方自身の前年所得が線を下回っていれば非課税の世帯になります。
ただし、世帯の形が変わったときの国民健康保険料の計算し直しや、非課税の世帯向けの給付金がいつ時点の世帯と所得で判定されるのかという扱いは、かなり込み入っています。大きな出来事があったときは、自分たちの世帯がどの時点から対象になるのかを市区町村の案内で確かめ、窓口で相談しておくのが確かです。
7.4 収入が減ったのに負担が重い時期を、どう乗り切るのか
退職して年金だけになったのだから、これで非課税の扱いになって優遇が受けられる。そう考えるのは少し早い、というのがここまでの話です。日本の税と社会保険は、負担の額を決める基準にずれを抱えています。
住民税は前年の1月から12月の所得をもとに計算され、毎年6月から新しい年度分が課税されます。退職後に入る国民健康保険料も前年の所得をもとに算定され、加入した月の翌月以降にその年度分の納付が始まります。結果として、退職した最初の年は、現役のときの高い給与をもとに計算された税と保険料をそのまま納めることになります。退職金や預金をこのずれを見込まないまま使ってしまうと、最初の年の支払いで手元が細くなります。乗り切り方は難しくありません。退職の前に、翌年に納める見込みの額を勤め先や市区町村の窓口で聞いておき、その分を別に取り分けておくことです。
8. 年齢が上がるほど課税世帯の割合が下がるのは、どんな背景があるのか
厚生労働省「令和6年 国民生活基礎調査」から、住民税が課税されている世帯の割合を年代ごとに見てみます。
- 29歳以下:63.0%
- 30〜39歳:87.5%
- 40~49歳:88.2%
- 50~59歳:87.3%
- 60~69歳:79.8%
- 70~79歳:61.3%
- 80歳以上:52.4%
- 65歳以上(再掲):61.1%
- 75歳以上(再掲):54.4%
※ 全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯を含む
※ 総数には、年齢不詳の世帯を含む
※ 住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む
30歳代から50歳代までは9割近くが課税される側にいますが、65歳以上では6割ほど、75歳以上では5割強まで下がります。年齢が上がるにつれて課税される世帯の割合が減っていく形です。
理由は2つ重なっています。ひとつは、収入の中心が給与から年金へ移り、現役のときより所得の水準が下がることです。もうひとつは税の面での扱いで、65歳以上には公的年金等控除が用意されており、遺族年金は課税されない所得として扱われます。この2つが重なるため、高齢の世帯は非課税に当てはまりやすい構造になっています。
9. 収入のすべてを年金でまかなう世帯は43.4%。この数字は何を示すのか
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金を受け取っている世帯のうち、収入のすべてを年金でまかなっている世帯は43.4%でした。裏返して読めば、半分以上の世帯は年金のほかにも収入の道を持っているということになります。年金だけで暮らす世帯は、すでに多数派とは言えません。
- 20%未満:4.2%
- 20〜40%未満:9.7%
- 40〜60%未満:13.6%
- 60〜80%未満:14.1%
- 80〜100%未満:17.1%
- 100%(すべてが公的年金・恩給):41.3%
ここから読み取れるのは、公的年金・恩給を受け取っている高齢者の世帯のうち、総所得の80%以上を公的年金に頼っている世帯が58.4%、総所得のすべてが公的年金・恩給という世帯が41.3%を占めるという点です。
受け取る額には人によって差がありますが、共通する課題は収入と支出のつり合いをどう保つかに絞られます。生活費が年金の額を上回る場面は珍しくなく、暮らしを続けるだけでも足りないことがあります。足りない分は、私的年金や預貯金を取り崩す、運用で補う、働き続ける、家族に支えてもらう、公的な扶助の制度を使うといった手を組み合わせてまかなわれています。ここで大事なのは、補い方によって、その年の所得として合計される額が変わるということです。同じ100万円を用意するのでも、預金から取り崩すのか、資産を売って利益を出すのかで、判定に入る額が変わります。
10. 同じ非課税世帯でも、住む自治体で支援はどれだけ違うのか
国の枠組みとして用意されている支援のほかに、市区町村が独自に足している制度があります。同じように住民税が非課税であっても、住んでいる場所によって受けられる中身は変わります。国の給付金や減税だけを見て終わりにせず、自分の市区町村が何を用意しているかを確かめておく値打ちがあります。
10.1 水道料金や下水道使用料を減額する自治体では、何が軽くなるのか
非課税の世帯や所得の低い世帯を対象に、水道料金と下水道使用料を減額している市区町村があります。さいたま市では、市民税・県民税が非課税の世帯を対象とした減額の制度が設けられています。(出所:さいたまこそだてWEB)
水道と光熱の費用は毎月かかり続ける固定費ですから、ここが軽くなると効き方が長く続きます。
10.2 ごみ袋の配布や交通費の助成は、どんな形で行われているのか
独自の支援は公共料金だけにとどまりません。地域によっては、次のような形が用意されています。
- 指定ごみ袋の無料配布
- 高齢者向けバス乗車券の助成
- タクシー利用券の交付
- 外出支援の交通費補助
高齢の世帯では通院や買い物の移動費が積み上がりやすいため、移動を支える制度は暮らしの土台に近い部分を支えています。
10.3 災害見舞金や独自の給付金は、どのような場面で届くのか
物価が上がった局面では、市区町村が独自に給付金を出す例も増えています。水道の基本料金を減免するところや、生活を支える給付金を独自に出すところがあり、中身は地域によって大きく違います。向日市では物価の高騰に対応して水道の基本料金の減免が行われています。
また、自然災害が起きたときには、非課税の世帯や所得の低い世帯を対象に見舞金や生活を立て直すための支援を上乗せする市区町村もあります。
10.4 全国共通の制度だけを見ていると、何を見落とすことになるのか
非課税の世帯向けの支援というと、国の給付金や保険料の軽減に目が向きがちです。しかし実際には、市区町村が独自に用意している支援のほうが長く家計を支える場合もあります。同じ収入でも受けられる中身が場所によって違うのですから、非課税の判定を受けたら、市区町村のホームページや福祉の窓口で使える制度を一度並べてみる価値があります。全国共通の制度を見ているだけでは目に入らない支援が、そこに残っていることがあります。
11. 近年の経済対策のなかで、非課税世帯はどこに位置づけられているのか
ここ数年の経済対策を並べると、支援の対象と手法が動いてきたことが見えます。以前は非課税の世帯への現金給付が中心でしたが、いまは減税や子育ての支援を組み合わせた、対象の広い形へ広がってきています。
11.1 定額減税は、1人あたりいくらの負担軽減だったのか
2024年の経済対策では、物価の上昇による負担をやわらげる目的で定額減税が行われました。所得税3万円と住民税1万円を合わせて1人あたり4万円が減税の対象となり、夫婦と子ども2人の4人世帯なら合計16万円分の軽減を受けられる仕組みでした。会社員などの給与所得者については、2024年6月以降の給与から順に反映され、手取りを増やすことで物価高に対応する形をとっていました。
この定額減税そのものは一度きりの措置でしたが、税負担を直に軽くする手法は、今後の経済対策でも有力な選択肢と見られています。経済の状況によっては、同じような減税や、減税と給付を組み合わせた新しい支援が検討される可能性もあります。
11.2 子育て世帯への支援は、対象がどこまで広がったのか
近年の政策では、所得の低い世帯だけでなく、子育てをしている世帯の全体を対象にした支援も強められています。こども家庭庁の「物価高対応子育て応援手当」では、18歳以下の子どもを育てている世帯への給付が行われました。
この形は、非課税の世帯だけを対象にしていた従来のやり方と違い、子育ての世帯へ広く届けるところに特徴があります。
11.3 「給付付き税額控除」は、どんな仕組みとして議論されているのか
これからの制度として注目されているのが「給付付き税額控除」の導入です。まず税額控除で負担を軽くし、それでも控除しきれない分は現金の給付で補うという組み立てです。所得の低い世帯や非課税の世帯を含め、幅広い層への支援を目的として検討が進められています。
今後の経済対策では、一度きりの給付金に頼るのではなく、税の仕組みを使って続けて支える形へ重心が移っていく可能性も考えられています。ただし、これらはいずれも検討の段階の話ですので、実際にどうなるかは所管の省庁の公表を確かめてください。
12. 「世帯分離」で非課税になるという話は、どこまで当てはまるのか
世帯分離は、同じ家に住みながら住民票の上で世帯を分ける行政の手続きです。収入のある子と年金で暮らす親が同居している場合に、親を独立した世帯にすれば、親の所得が少なければ親の世帯が非課税になり、介護保険料や、医療と介護の自己負担に設けられた上限額が軽くなる場合があります。
ただし、これには生計が別であるという実態が必要です。分けることで国民健康保険料の均等割などが世帯ごとに別々に計算される影響も出ますし、親が家族の健康保険の被扶養者から外れる必要が生じる場合は、収入や生計を維持している実態によって、家族の側の社会保険料や税の負担にも影響が及ぶことがあります。所得や資産の要件、市区町村の基準によって軽減が受けられないこともありますので、手続きの前に市区町村の窓口で十分な見積もりを行っておくことが欠かせません。
12.1 国保の平等割が二重にかかると、世帯全体の負担はどう動くのか
世帯分離で最も見落とされやすいのが、国民健康保険料が増える方向です。国保の保険料には、世帯ごとに一定額がかかる平等割という部分があります。世帯が2つに分かれると、この平等割がそれぞれの世帯にかかることになります。親の介護保険料が下がっても、世帯全体では国保の増え方が上回り、合計では負担が増える例が数多く報告されています。片方だけを見て決めないことが、ここでの要点です。
13. 「非課税世帯はずるい」という声は、どの仕組みから生まれているのか
厚生労働省の調査によると、住民税が非課税の世帯のうち、世帯主が65歳以上の高齢者の世帯が全体の75%以上を占めています。現役を退いて収入が年金だけになれば、所得は下がり、線を下回る人が増えるためです。
13.1 貯蓄が多くても非課税になるのは、判定が何を見ているからか
いまの判定は、世帯全員の前年の所得だけを見る組み立てになっており、持っている預貯金や不動産の状況は反映されません。そのため、まとまった退職金や自宅を持っている方でも、年金の収入が少なく所得が基準を下回っていれば非課税の世帯になります。
一方で、働きながら子育てをしている現役の世代は、わずかな所得の差で課税される側になり、支援が届かないという逆の形が起こりやすくなります。持っている資産と、その年の所得が離れていることから生まれるこの食い違いについて、制度の公平さやあり方をめぐる議論が続いています。
13.2 給付金に資産の状況を反映させる議論は、どこまで進んでいるのか
資産はあるけれども所得が低い層への支援のあり方については、公平さの面から見直しを求める声が一部にあります。これからの経済対策や新しい給付の仕組みをめぐる議論では、所得の要件に加えて世帯の資産の状況をどう反映させるかが、長い目で見た課題として挙げられています。いまのところは住民税が非課税かどうかという所得の基準が中心ですが、制度を続けていけるかという観点からの動きには目を向けておく必要があります。
13.3 マイナンバーで資産が把握されるという話は、どこまで本当なのか
現役の世代から、非課税の世帯ばかり優遇されているのではないか、資産を持っている高齢の方まで給付金を受け取っているのではないか、という声が上がることがあります。これは、多くの給付金の判定が、持っている資産ではなく前年の課税所得を基準にしていることから生じている、制度の側の課題です。
まとまった貯蓄や不動産があっても、年金などの収入が少なければ非課税の世帯に当てはまり、市区町村の給付の対象になる場面があります。ただし、2026年現在、マイナンバーの公金受取口座の登録は、給付金を滞りなく受け取るための口座の情報を登録する仕組みにとどまり、行政が個人の預貯金の残高や資産の状況を自動でまとめて把握できるわけではありません。所得の低い方への支援で公平さをどう確保するか、資産の要件を入れるかどうかについては、個人情報の保護や行政の手間といった観点も交えながら、慎重な議論が続いています。
14. 非課税世帯について寄せられる質問には、どう答えられるのか
相談の場で繰り返し出てくる問いを2つ取り上げます。どちらも、確かめる先がどこなのかという話に行き着きます。
14.1 ネットのシミュレーションツールで、非課税かどうか正確に分かるのか
ネット上のツールは目安を出すためのものです。配偶者控除や医療費控除、社会保険料控除の適用がどうなっているかで所得の計算結果は大きく変わりますし、市区町村によって線の位置も違います。最後の判定は、住んでいる役所が出す課税証明書(非課税証明書)などで確かめてください。
14.2 年度の途中で世帯主が亡くなった場合、判定はどうなるのか
住民税は毎年1月1日時点の状況と前年の所得で判定されます。年度の途中で世帯主が亡くなっても、1月1日時点で課税されたその年度の住民税を納める義務は消えず、相続する方が引き継ぎます。世帯の状況が変わったことで非課税に当てはまるかどうか、各種の給付金の判定がどうなるかは、市区町村や時期によって基準が違いますので、住んでいる市区町村の窓口で確かめる必要があります。
非課税の世帯に用意されている優遇をもう少し広く並べて確かめたいときは、【2026年最新】「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう「収入ゼロでも給付金が届かない?」5つの盲点を徹底解説を参考にご覧ください。
15. 【独自試算】源泉徴収ありの特定口座で50万円の利益が出た年、合計所得は45万円と95万円のどちらで判定されることになるのか
ここまでは、判定に使う合計所得を収入の側から見てきました。ここからは逆に、その合計所得が動く場面を一つだけ取り出して計算します。源泉徴収ありの特定口座は、税金の手続きが口座の中で終わる設定です。それでも、こちらから申告に含めれば、同じ利益がその年の所得として合計される側に回ります。同じ50万円の利益が、申告に含めるかどうかで判定の数字をどれだけ動かすのかを、神戸市の式に当てはめて並べました。
- 神戸市の例をもとに、65歳以上で公的年金の収入155万円のみという単身の世帯を想定します。この収入なら合計所得金額は45万円以下に収まるため、ここでは合計所得を45万円と置きます
- 基準額は神戸市の式「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+10万円+21万円」で求めます。21万円は同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます
- 源泉徴収ありを選んでいる特定口座で、その年に50万円の売却益が出たものとします
- 申告に含める動機がない年と、他の口座の損失と相殺するなどの動機があって申告に含めた年の2通りを比べます
- 遺族年金や障害年金といった課税されない所得は受け取っていないものとします
- 見るのは納める税額ではなく、判定に使う合計所得金額と基準額の関係だけです
まず基準額です。単身の世帯なら、35万円×1に10万円を足して45万円。同一生計配偶者が1人いる世帯なら、35万円×2に10万円と21万円を足して101万円になります。この2つの数字を物差しにします。
申告に含めなかった年は、合計所得が45万円のままです。単身の基準額45万円と同じ額ですから、枠に収まります。一方、同じ50万円を申告に含めた年は、45万円+50万円で合計所得が95万円になります。単身の基準額45万円を50万円上回り、基準額の約2.1倍という位置に動きます。ところが、同一生計配偶者が1人いる世帯の物差しに当てはめると、95万円は基準額101万円を6万円下回り、こちらでは枠に収まります。
逆から見ると分かりやすくなります。単身の世帯で45万円の枠を保ったまま申告に含められる利益は0円です。同一生計配偶者が1人いる世帯なら、101万円-45万円で56万円までが計算上の余地になります。同じ50万円の利益、同じ源泉徴収ありの口座でも、世帯の形がひとつ違うだけで結論が入れ替わるわけです。
この試算で見ていただきたいのは金額そのものではなく、申告に含めるという一つの動作で判定の数字が45万円から95万円へ動き、その動いた先を単身の45万円で見るのか、配偶者がいる101万円で見るのかで結論が分かれるという関係のほうです。値動きのある資産では元本割れが起こることもあり、利益が出る年と出ない年があります。基準額は神戸市の例であって市区町村ごとに違いますし、申告に含めた所得が判定にどう扱われるかは制度の細かい条件に左右されます。あくまで目安として読み、実際に申告するかどうかを決める前に、住んでいる市区町村の窓口や税務署、税理士に確かめてください。
16. 【監修者コメント・村岸理美】45万円と101万円という基準額は、どの世帯構成に当てはまる数字なのか
今回の数字で注目していただきたいのは、45万円と101万円という2つの基準額が、どちらも神戸市の式から出てきた数字だという点です。住民税が課されない所得の基準は、全国で共通の部分と、市区町村が自分で決める部分に分かれています。生活保護を受けている場合と、障害者・未成年者・寡婦(夫)・ひとり親で前年所得が135万円以下という条件は全国共通ですが、記事で扱った基準額のほうは共通ではありません。ご自身の市区町村の数字に置き換えて読んでいただくことが大切です。
記事中の試算のように、同じ50万円の利益でも、単身の45万円で見るか、同一生計配偶者が1人いる101万円で見るかで結論が入れ替わります。ここで気をつけていただきたいのは、同一生計配偶者にあたるかどうかにも条件があることです。生計を一にしていて、前年の合計所得金額が58万円以下という線が引かれています。配偶者にパートの収入があれば、この58万円の側も確かめる必要があります。101万円という基準額だけを覚えて帰らないでいただきたいところです。
収入に置き換えた数字についても、適用の条件が付いています。年金収入155万円以下という線は65歳以上の方の数字で、65歳未満なら105万円以下です。給与収入110万円以下という線は、給与だけで暮らしている方の数字です。年金と給与の両方がある方は、どちらか一方の表を見るだけでは判定できません。ファイナンシャル・プランナーとしてお伝えしたいのは、他人の線と自分の線を取り違えないことです。まずは住んでいる市区町村が出している課税証明書と、証券口座の源泉徴収の設定という2つの紙を手元に置き、そのうえで税務署や税理士、市区町村の窓口に確かめていただくとよいと思います。


