4. 50歳代に多い「賞与が減って、毎月の積み立てを続けられるか決められない」というご相談。IFA・田中 友梨が伝えたいこと
50歳代は、勤めてからの年数が長くなって収入の水準そのものは上がってきた一方で、そこから先の伸びが読みにくくなる時期です。ローンの返済や、年に何度かまとまって出ていく支払いを賞与から出す約束にしたまま、何年も続けている方も少なくありません。前半でみたように、年収の水準が上がっても、手元に残るお金がそのまま増えていくとは限りません。銀行のリテール営業でお客さまのご相談に応じてきた立場から申し上げると、収入が減ったときに効いてくるのは、減った金額そのものよりも、支払いの組み立てが賞与を前提にしたままになっていることです。しかもこの組み立ては、一度作ってしまうと自分では気づきにくく、賞与が思ったほど入らなかった月に初めて表に出てきます。そして、表に出てきたその月に慌てて決めるのと、支払いが重なる時期が来る前に落ち着いて考えるのとでは、手をつけられる先が変わってきます。続けているものの中には、止めてもあとで再開できるものと、減らすと元に戻せないものが混ざっているからです。元に戻せないほうから手をつけてしまうのは、たいてい追い込まれてから決めたときです。相談の場では次のような声を耳にします。
4.1 50歳代に多いお悩み相談は「賞与を当てにしていた支払いが重なる時期に、毎月の積み立てまで払えるか分からない」

相談の場でも、賞与を当てにした支払いと毎月の積み立てが同じ時期に重なって、どこから手を入れればよいのか決めきれずにいるという方に数多くお会いします。
4.2 【IFA・田中 友梨が回答】追い込まれる前に考え始めれば、元に戻せるものから順に試せる
4.3 ポイント1:いつでも再開できる積み立ては、先に手を止めて様子を見られる
毎月の支払いが重いというお話をいただくと、どれを解約すればよいでしょうかと聞かれることがあります。私はその前に、いま払っているものを「あとで元に戻せるもの」と「戻せないもの」の2つに仕分けしてくださいとお伝えしています。この仕分けだけで、手をつける順番はほとんど決まります。税金がかからない枠を使った積み立ては、毎月の買い付けの設定を止めることができて、また始めたいときに再開できる仕組みになっています。止めているあいだも、それまでに買った分は手元に残ったままです。つまり、一度止めたら終わりというものではありません。ですから順番としては、まずここを止めて、数か月のあいだ手元がどれくらい楽になるのかを見ます。いくら減らすかを最初から決めなくてよいのも、この選択肢の利点です。厳しい月だけ止めて、落ち着いたら戻すという使い方もできます。なお、枠の扱いや再開したときの取り扱いは制度の決まりと金融機関の取り扱いに沿って動きますので、ご自身の口座で何が選べるのかは、口座のある金融機関の窓口で確かめてください。
4.4 ポイント2:停止と再開の手続きは、窓口に出向かなくても自分の画面で完結することが多い
次にお伝えするのが、手続きの入り口の話です。手を入れたほうがよいと分かっていても、窓口に行く時間が取れないという理由で何か月も先送りになってしまうことがあります。実際には、金融機関の会員向けの画面やアプリから、積み立ての停止、毎月の金額の変更、そして再開までが完結する場合が多くあります。ここで一つ気をつけていただきたいのが締切です。何日までに操作すればその月の買い付けから反映されるのかが決まっていて、それを過ぎると翌月からの扱いになることがあります。反映までに日数がかかる場合もあります。締切があるということは、思い立った日に決めても、その月には間に合わないことがあるという意味です。支払いが重なる月になってから考え始めると、その月はもう手を打てないことになります。ですから、来月の支払いが重なりそうだと分かった時点で操作しておくと間に合いますし、思い立った日に操作しても翌月からになることがある、と知っておくだけで慌てずに済みます。自分の画面でどこまでできるのか、締切がいつなのかは金融機関ごとに違いますので、会員向けの案内や窓口で確かめてください。まずはログインして、停止と金額の変更がどこにあるのかを見ておくだけでも十分です。
4.5 ポイント3:毎月自動で出ていくお金は、一度手を入れればその後ずっと下がるものから削る
積み立てを止めて手元を見たら、次は毎月自動で出ていくお金のほうに目を向けます。ここでも仕分けです。毎月出ていくものを、「一度手を入れればその後ずっと下がるもの」と「そのつど我慢して減らすもの」の2つに分けてください。通信にかかるもの、使っていない会費、住まいに関わる費用のように、手続きを一度済ませれば翌月以降も自動的に下がり続けるものが前者です。食費のように、毎月そのつど気をつけないと戻ってしまうものが後者です。効き方が続くのは前者ですから、こちらから先に削ります。やり方は難しくありません。引き落としの明細を1か月分、金額の大きい順に並べて見るだけです。並べて見ると、契約したことを覚えていないものが混ざっていることもあります。あわせて確かめていただきたいのが、賞与から出す約束にしてある支払いです。返済の方法を毎月に均す形に変えられるのか、税金を分けて納める方法があるのかは、契約の内容や自治体の取り扱いによって変わります。ここは私のほうから断定できませんので、ローンの契約先や自治体の窓口で確かめてください。賞与を当てにしなくても回る形に組み替えられるなら、賞与が減ったこと自体に振られなくなります。
4.6 ポイント4:減らすと元に戻せない契約は、順番の最後に置く
最後が保険です。保険にも、毎月の保険料を下げる手続きが用意されていることがあります。ただ、ここが積み立てと決定的に違うところで、いったん下げると元の水準には戻せない場合があります。戻すとなると、あらためて入り直す形になり、そのときの年齢や健康の状態によって条件が変わります。同じ「毎月の支払いを減らす」でも、あとで戻せるものと戻せないものがあるというのは、この違いのことです。ですから、金額が大きいからといってここから手をつけるのではなく、順番の最後に置きます。毎月の保険料は額が大きいので、削り幅の大きいところから、と考えたくなるところです。ただ、ここで決めるのは削り幅の大きさではなく、あとで戻せるかどうかの順番です。ポイント1から3までを済ませても毎月が厳しいのであれば、減らして続けるという判断は十分に現実的です。やめてしまう前に、減らして残す形が用意されていることも少なくありません。そして手続きに入る前に、契約先の窓口や担当の方に、下げたあとで元に戻せるのか、戻すとしたら何がどう変わるのかを先に聞いてください。減額や元に戻す扱いは契約ごとに決まっていて、私のほうから一律には申し上げられません。順番を決めずに大きいものから減らしてしまうと、あとから見直したくなっても選び直しがきかない、ということが起こります。
毎月が厳しいという話は、どれをやめるかの話ではなく、どの順番で手をつけるかの話です。そして、その順番をどこまで実際に踏めるかは、手続きの締切に間に合う月に決めているかどうかで変わります。支払いが重なったその月に決めても、積み立ての停止はその月の買い付けには反映されないことがあり、手元に効く手として残るのは、金額の大きい契約を下げることだけになりがちです。来月あたり重なりそうだと分かった時点で動けば、先に止めるのは、いつでも再開できる積み立てだけで足ります。そのまま数か月の様子を見て、停止と再開が自分の画面でどこまでできるのかを確かめ、一度手を入れればその後ずっと下がるものから削り、元に戻せない契約は最後に置く、という順に進められます。同じ手を打つのでも、この順番のほうが、数字の受け止め方は落ち着きます。これは一つの考え方であり、どこから手を入れるのが適切かは、ご本人の収入や家族の状況、続けている契約の内容によって異なります。制度の枠や再開の取り扱い、保険料を下げたあとで元に戻せるかどうか、税金の納め方に関わる部分はご自身だけで判断せず、金融機関や契約先の窓口、自治体の窓口、税務署や税理士といった専門家に確かめながら進めていただければと思います。
5. まとめにかえて
役職別の所定内給与は、係長が男女計39万9200円、課長が52万9200円、部長が63万5800円で、段ごとの上がり幅は月8万8700円・13万円・10万6600円でした。賞与を年4か月分と置いた年収の目安は約639万円・約847万円・約1017万円です。一方で、部下を持つ課長〜部長級の86.8%が自分の実務も兼ね、業務負担が「増えた」という回答は51.0%にのぼりました。時間の余裕は、収入と同じ方向に増えるわけではないということです。
昇進で生まれる年収差142万円を10年積み立てた場合の残高は約1650万1299円、3年遅れて始めた場合は約1102万9476円で、差は約547万1823円になりました。年収がいくら動くかよりも、いつから並べ始めるかのほうが結果に効いてくる形です。まずは今の年収と、一段上の水準を紙に並べて書き出すところから始めてみてください。手取りがどれだけ増えるのか、税や社会保険料がいつから変わるのかは、勤め先の給与・人事の担当部署や市区町村の窓口に確かめながら進めていただければと思います。
参考資料
- 中間管理職はいくらもらっている?【年収一覧表】部長と課長、係長の年収はいくらか。プレイングマネージャーは9割「マネジメントにさける時間」を民間企業等と行政・自治体別にみる
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職別」
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
- PRTIMES「管理職は本当に罰ゲーム? ~約9割が現場の実務も担う「プレイングマネジャー」 多忙な中間管理職の実態を読み解く~」
田中 友梨
