「新NISAは非課税だから、確定申告も年末調整も一切関係ない」——そう思い込んでいる方は少なくありません。実際、新NISA口座で得た利益は原則として非課税で、申告の手間もかかりません。

ただし、この「原則」には見落としやすい例外があります。配当金の受け取り方法を間違えていたために課税されてしまうケースや、米国株・米国ETFのように非課税の範囲そのものが限定されるケースがあるからです。

本記事では、新NISAの税金・確定申告・年末調整について、公的資料に基づいて「本当のところ」を整理します。なお、新NISAの制度そのものに関する基本的な説明は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション
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1. 新NISAの利益はなぜ非課税なのか。確定申告・年末調整が原則不要な理由

まずは基本の確認です。非課税の範囲を押さえておくと、後半で扱う「例外」の意味がわかりやすくなります。

1.1 非課税になるのは「配当等」と「譲渡益」

国税庁のタックスアンサーによると、新NISA(令和6年以降のNISA)では、非課税口座で取得した上場株式等について、その配当等や売却によって生じた譲渡益が非課税とされています。

年間投資枠はつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円で併用時は年間360万円、非課税保有限度額は1800万円(うち成長投資枠は内数で1200万円)です。

下村 美乃莉
私自身も新NISAで投資信託の積立を続けていますが、正直なところ「非課税」という言葉が指す範囲を意識したことはほとんどありませんでした。今回あらためて調べてみると、線引きが思っていたより細かく、条件によって扱いが変わることに気づかされました。

1.2 原則として、確定申告も年末調整も不要

日本証券業協会の「NISAのよくある質問」では、NISA口座に受け入れている上場株式等の配当等や譲渡益は非課税であるため、確定申告をする必要はないと説明されています。

年末調整は、給与から源泉徴収された所得税を年末に精算する手続きです。新NISAの利益は課税対象にならないため、この精算の対象にも入ってきません。

この「原則」が崩れる場面が実際にはいくつかあります。次の章から具体的に見ていきます(高配当株・ETFで配当金生活を考える記事でも一部触れていますが、ここではさらに掘り下げます)。

2. 「非課税のはずが課税された」。配当金の受け取り方式1つで結果が変わる

新NISAで最も見落とされやすいのが、配当金の「受け取り方式」です。国税庁のNISA制度の解説には、次のような注記があります。

非課税とされる配当等は非課税口座を開設している金融商品取引業者等を経由して交付されるもの(株式数比例配分方式を選択したもの)に限られ、上場株式等の発行者から直接交付されるものは課税扱いとなります。

出典:国税庁「No.1535 NISA制度」

つまり、配当金の受け取り方法として「株式数比例配分方式」を選んでいなければ、NISA口座で保有する株式の配当であっても、通常の配当と同じように約20.315%の税金がかかってしまうということです。

2.1 「比例配分方式」を選ぶと、他の口座の配当も一括で変わる

もう一つ見落とされがちなのが、この選択が「NISA口座だけ」の話ではないという点です。日本証券業協会のFAQによれば、株式数比例配分方式は証券会社の取引口座を通じて配当金等を受け取る方式であり、これを選択すると、NISA口座以外で保有する特定口座・一般口座の上場株式の配当金にも、同じ方式が自動的に適用されます。

言い換えると、「NISAの分だけ非課税にしたい」というつもりで方式を切り替えると、これまで別の方法(銀行口座への振込等)で受け取っていた特定口座側の配当の受け取り方まで、意図せず変わってしまう可能性があるということです。

配当金の受け取り方式とNISAの課税・非課税1/2

配当金の受け取り方式とNISAの課税・非課税

出所:日本証券業協会「NISAのよくある質問」国税庁「No.1535 NISA制度」を基にLIMO編集部作成

2.2 【受け取り方式の比較】

NISA口座の配当を非課税にしたい場合

  • 選ぶべき方式:株式数比例配分方式
  • 影響範囲:同じ証券会社の特定口座・一般口座にも同一方式が及ぶ

受け取り方式を変えたくない場合

  • その他の方式のまま:NISA口座の配当は約20.315%課税
  • 特定口座側は現状維持
下村 美乃莉
「NISAだから設定は何もしなくていい」と思い込んでいる方ほど、実はここで足をすくわれやすい印象があります。証券口座を開設したときの初期設定を、そのまま何年も放置している方も多いはずです。一度、取引画面を開いて確認してみる価値は十分にあると感じます。

3. 【編集者の視点】

受け取り方式の設定は、証券口座を開設した時点の初期設定のまま放置されているケースが少なくありません。特に、複数の証券会社に古くから口座を持っている方や、以前から株主優待・配当金目当てで個別株投資を続けてきた方は要注意です。

優待品の案内や配当金の通知を「配当金領収証」や郵送物で受け取ることに慣れている方が、後からNISA口座を開設した場合、受け取り方式の設定を見直さないまま新NISAでの投資を始めてしまうことがあります。

この場合、NISA口座で買った株式の配当であっても、非課税の恩恵を一切受けられません。しかも、複数の証券会社でNISA口座以外の口座も保有している方は、比例配分方式に切り替えることで、それらの受け取り方法も連動して変わってしまう点に注意が必要です。

設定を確認・変更したい場合は、証券会社の取引画面(口座管理・お客様情報メニュー等)で配当金受領方法を確認するのが確実です。不明点はコールセンターに「配当金の受け取り方式」と伝えると話が早く進みます。

4. 米国株・米国ETFの配当、新NISAでも「1割」だけは必ず残る

受け取り方式を正しく設定していても、非課税にならない部分があります。米国株や米国ETFに投資している場合の、現地での源泉徴収です。

4.1 「非課税」がカバーするのは日本国内の税金だけ

日米租税条約では、配当に対する源泉地国(所得が生じる国)での限度税率が定められています。財務省が公表している資料によれば、親子会社間配当(持株割合50%超は免税、10%以上50%以下は5%に軽減)や、一部の利子・使用料は免税・軽減の対象となる一方、一般の個人投資家による「ポートフォリオ配当(その他)」は10%の税率とされています。

このため、米国株や米国ETFの配当は、日本の非課税措置とは関係なく、米国内であらかじめ一定の税率で源泉徴収されます。新NISA口座で保有していても、この米国側の徴収そのものを止めることはできません。

下村 美乃莉
「非課税」という言葉だけを見ると、海外の税金まで含めて全部ゼロになるようなイメージを持ってしまいがちです。日本国内の話に限られると知ったとき、私自身も少し拍子抜けした記憶があります。制度の名前と実際の範囲は、思った以上にずれていることがあるものです。

4.2 特定口座なら相殺できるのに、NISAでは相殺先がない

課税口座(特定口座・一般口座)であれば、この米国側の源泉徴収分は「外国税額控除」という制度で取り戻せる場合があります。国税庁のタックスアンサーによれば、外国税額控除は、居住者が外国所得税を納付した場合に、一定の計算方法に基づき所得税額から差し引く制度です。二重課税を調整するための仕組みです。

ところがNISA口座の配当は、そもそも日本国内では非課税(=国内の所得税が発生しない)ため、外国税額控除が前提とする「二重課税」の状態そのものが生じません。控除の対象になる国内の税額が存在しないため、外国税額控除を使う余地がないのです。

編集部で試算してみると、この違いがどれだけの差になるかが見えてきます。前提として、米国株の配当10万円(税引き前)、米国での源泉徴収率10%、国内の税率20.315%、外国税額控除は限度額の範囲内で全額適用できたケースとします。

米国株配当10万円の税引き後手取り比較2/2

米国株配当10万円の税引き後手取り比較

出所:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」財務省「日米租税条約のポイント」を基にLIMO編集部の試算

4.3 【手取り額の比較(配当10万円のケース)】

特定口座の場合

  • 米国での源泉徴収:1万円
  • 国内税額(控除後):1万315円
  • 手取り:7万9685円

新NISA口座の場合

  • 米国での源泉徴収:1万円
  • 国内税額:0円
  • 手取り:9万円

結果として新NISA口座のほうが手取りは多くなりますが、注目すべきは「非課税だから海外の税金もゼロになる」わけではない点です。米国分の1万円は新NISAでも必ず差し引かれ、取り戻す手段は制度上ありません。特定口座であれば、この1万円は外国税額控除で国内税額と相殺され、負担として意識されにくくなっています。

5. 【編集者の視点】

「新NISAなら米国株の配当も全額非課税になる」という誤解は根強くあります。証券会社の取引報告書には手取り額しか表示されず、米国での源泉徴収分が「税金」として見えにくいことも一因だと考えられます。

実務上の対策としては、投資判断そのものを大きく変える必要はありません。米国株・米国ETFへの投資を続けるとしても、「配当利回り」を見るときは、証券会社の画面に表示される数字が税引き前か税引き後かを一度確認しておくとよいでしょう。

また、配当の再投資を前提にシミュレーションを組む場合も、米国株については実質的な受取率が9割程度にとどまる点を織り込んでおくと、想定と実績のズレを減らせます。個別株・ETFの選び方そのものについては、こちらの記事でも扱っています。

6. 配偶者控除・扶養の「壁」に、NISAの利益は影響するのか

年末調整の時期になると気になるのが、配偶者控除や扶養控除の判定基準となる「合計所得金額」に、NISAの利益が影響するのかどうかです。

6.1 非課税所得は、そもそも「合計所得金額」に含まれない

配偶者控除の判定に使う合計所得金額には、非課税所得や、確定申告不要制度を選んで申告しないことにした上場株式等の配当所得・譲渡所得は含まれません。新NISAの利益はそもそも非課税所得にあたるため、この時点で合計所得金額には算入されず、配偶者控除・扶養控除の判定に影響しません。

6.2 ただし、課税扱いになった配当は話が別

ここで前の章までの内容が関わってきます。受け取り方式のミスで課税扱いになった配当は、NISAの非課税所得ではなく、通常の上場株式配当と同じ扱いになります。この配当について確定申告不要制度を使わず、総合課税や申告分離課税を選んで確定申告した場合は、合計所得金額に算入されます。

つまり「NISAの利益だから扶養の判定には関係ない」という理解は、受け取り方式が正しく設定されている限りは正しいのですが、設定ミスによって課税扱いになった部分について確定申告を選択すると、その前提が崩れる可能性があるということです。

下村 美乃莉
配偶者控除について、「NISAだから絶対に大丈夫」と思い込まず、受け取り方式だけは一度確認しておく。それだけで、扶養から外れるかもしれないという不安の芽を、早めに摘んでおけるはずです。

※本記事は、編集部が国税庁・日本証券業協会が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

7. 【編集者の視点】

配偶者控除・扶養控除の判定に関わる「合計所得金額」は、所得税と住民税、さらには社会保険の扶養認定とで、微妙に基準や計算方法が異なる場合があります。NISAの利益自体は非課税所得として扱われる点は共通していますが、個別の制度ごとの詳しい基準は、税務署や自治体の窓口、勤務先の健康保険組合等に確認するのが確実です。

また、給与所得者の場合、給与以外の所得が年間20万円以下であれば、原則として確定申告は不要とされています。受け取り方式のミスで発生した配当がわずかな金額であれば、この基準の範囲内で収まることも多いでしょう。

ただし、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例の対象外になった場合等)で別途確定申告をする場合でも、この配当は上場株式等の配当所得に係る確定申告不要制度を選べば記載を省略できます。あえて記載して総合課税等を選ぶこともできますが、一度選んだ扱いは後から修正申告等で変更できないため、迷う場合は税務署や税理士に確認してから決めてください。

8. 確定申告をする・しないは選べる。NISA以外の事情と合わせて考える

ここまで見てきたように、新NISAの利益そのものは確定申告も年末調整も不要です。ただし、他の事情で確定申告をする場合は、NISA以外の所得の扱いも合わせて整理しておく必要があります。

8.1 NISA以外の確定申告と、NISAの利益は別物として扱う

医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例の対象自治体数を超えた場合等)で確定申告をする場合でも、新NISA口座の非課税の利益そのものを申告書に記載する必要はありません。

受け取り方式のミス等によって「課税扱い」になった配当も、上場株式等の配当所得に係る確定申告不要制度を選べば、他の理由で確定申告する場合でも記載を省略できます。あえて記載して総合課税等を選ぶこともできますが、一度選んだ扱いは後から修正申告等で変更できません。

複数の証券会社に口座を持ち、一部だけ受け取り方式の設定が異なっている場合は、証券会社ごとの「特定口座年間取引報告書」と、NISA口座の「非課税口座年間取引報告書」を突き合わせて確認すると迷いにくくなります。判断に迷う場合は、税務署や税理士への相談も検討してください。

資産形成の手段としては、新NISAだけでなく預貯金とのバランスを考える方も多いはずです。そのあたりの考え方は、新NISA時代の貯金と投資の割合を扱った記事でも詳しく取り上げています。

9. まとめ

  • 新NISA口座の配当・譲渡益は原則非課税で、確定申告も年末調整も不要です。
  • 配当金の受け取り方式が「株式数比例配分方式」以外だと、NISA口座の配当も課税扱いになります。
  • この方式を選ぶと、同じ証券会社の特定口座・一般口座の配当受け取り方法も連動して変わります。
  • 米国株・米国ETFの配当は、新NISAでも米国内の源泉徴収(1割程度)までは非課税にできません。
  • NISAの非課税の利益自体は配偶者控除等の合計所得金額に含まれませんが、課税扱いになった配当を確定申告すると話が変わります。

新NISAの「非課税」は、あくまで日本国内の税金にかかる非課税措置です。海外での課税や、受け取り方式という証券口座側の設定までは自動的にカバーしてくれるわけではありません。

まずはご自身の証券口座で配当金の受け取り方式がどうなっているかを確認し、不明な点があれば証券会社の窓口に問い合わせてみてください。それだけで、思わぬ課税を避けられる可能性があります。

10. よくある質問

10.1 Q. 新NISAで確定申告が必要になるのはどんなときですか?

A. 配当金の受け取り方式が株式数比例配分方式以外になっている場合、その配当は課税扱いとなります。ただしこの配当は上場株式等の配当所得に係る確定申告不要制度の対象でもあるため、医療費控除やふるさと納税等で別途確定申告をする場合も、記載を省略するか、あえて記載するかを選べます。新NISAの非課税部分そのものは、いずれの場合も申告書に記載する必要はありません。

10.2 Q. 新NISAは年末調整に影響しますか?

A. 新NISAの非課税の利益は、年末調整の対象にはなりません。配偶者控除・扶養控除の判定に使う合計所得金額にも含まれないため、通常は年末調整に影響しません。ただし、受け取り方式のミスで課税扱いになった配当を確定申告した場合は、その部分が合計所得金額に算入される可能性があります。

10.3 Q. 米国株の配当にかかる10%の税金は、確定申告すれば取り戻せますか?

A. NISA口座で保有する米国株・米国ETFの配当については、国内で非課税のため、確定申告をしても外国税額控除を使うことはできません。米国側で源泉徴収された分は、NISA口座では取り戻せない仕組みになっています。

参考資料

LIMO編集部NISA解説班