「新NISAで金ETFを買ってみようかな」「守りの資産として債券も入れたい」。そう考えて検索したものの、どちらの枠で買えるのか、純金積立と何が違うのかが分からず、手が止まった方は少なくないと思います。

結論から言うと、金や債券は「投資信託・ETFという形」でなければ新NISAの非課税措置を受けられません。純金積立や個人向け国債を選ぶと、非課税のメリットを逃す可能性があります。

この記事では、金融庁・国税庁の公式資料をもとに、対象商品のルールと2027年に予定される制度変更を整理します。

なお、新NISA制度の基本的な仕組みについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。
【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション

ココがポイント
  • 純金積立や金地金の現物は新NISAの対象外で、非課税にできるのは金ETFなど成長投資枠対象商品だけです。
  • 個人向け国債も新NISAでは買えず、債券に投資したい場合は債券を組み入れた投資信託・ETFを選ぶ必要があります。
  • 2027年からはつみたて投資枠でも債券中心の投資信託が買えるようになる見込みで、選択肢が広がります。

1. 新NISAの基本ルールをおさらい—つみたて投資枠と成長投資枠の違い

金や債券の話に入る前に、新NISAの2つの枠の違いを確認します。ここを押さえると、後半の「なぜ金ETFは成長投資枠限定なのか」が理解しやすくなります。

1.1 非課税保有限度額1800万円の内訳

金融庁によると、新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、併用が可能です。年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で、合わせて年間最大360万円まで投資できます。

生涯を通じた非課税保有限度額は合計1800万円で、うち成長投資枠は1200万円までという内数のルールです。非課税保有期間はどちらの枠も無期限です。

下村 美乃莉
1800万円という枠の大きさに、最初は現実味を感じられませんでした。私自身も月2万円の積立から始めた身なので、まずは枠の使い道を決めることの方が先だと感じています。金額の大きさに気後れせず、少しずつ向き合っていければと思います。

通常、株式や投資信託の値上がり益や分配金には約20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益は非課税です。この恩恵をどの商品に使うかが、この記事のテーマです。

2. ゴールド・債券が「リスクヘッジ」と呼ばれる理由

ゴールドや債券は株式と値動きの傾向が異なるとされ、「リスクヘッジ」の役割で語られることが多い資産です。基本的な位置づけを整理します。

2.1 値動きが違う資産を組み合わせる考え方

金は「有事の資産」と呼ばれ、相場が不安定なときに買われやすいとされます。債券は発行体が破綻しない限り満期に額面が戻り、値動きの振れ幅が株式より小さいとされる資産です。

新NISAでも現金と投資の配分に悩む方は多く、貯金と投資の割合の考え方は別記事(新NISA時代、「貯金と投資の割合」はどうすべきか?現金保有の適正ライン)でも扱っています。値動きが小さい分、値上がり益も小さくなりやすい点には注意が必要です。

3. 新NISAで金ETFは買えても、純金積立は対象外という決定的な違い

ここからが本題です。「新NISAで金投資」と検索する方が見落としがちな、対象商品の線引きを見ていきます。

3.1 NISAの対象商品は「上場株式・投資信託等」に限られる

金融庁の資料によると、成長投資枠の対象商品は「上場株式・投資信託等」で、整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は除外されます。

金ETF(上場投資信託)はこの区分に含まれ、成長投資枠で購入できます。一方、純金積立や金地金の現物購入は、証券取引所に上場する有価証券の取引ではないため、対象商品の枠組みに入りません。

3.2 【金ETFと純金積立・金地金の違い】

新NISAで非課税になる方法

  • 金ETF(成長投資枠):値上がり益は非課税
  • 特別控除:非課税のため不要

新NISAの対象にならない方法

  • 純金積立・金地金の現物:値上がり益は総合課税(譲渡所得)
  • 特別控除:年50万円

純金積立を続けている方には、積立実績をシミュレーションした記事(【純金積立シミュレーション】10年続けていたら資産3.5倍に…「月1万円×10年間」でどのくらい増えた?《2016年~2026年》)もご覧ください。純金積立を否定するものではなく、非課税の扱いが異なるという整理です。

下村 美乃莉
「金投資=純金積立」というイメージを持っている方も多いと思います。同じ金でも器が違うだけで税金の扱いがまったく別物になることは、新NISAを始める前に押さえておきたいポイントです。

4. 【編集者の視点】

証券会社に勤務していた頃、「投資信託という名前がついているから安心だと思っていた」という声を何度も聞きました。金価格に連動する商品には、証券取引所で売買する金ETFのほか、非上場の商品や金鉱株に投資するファンドなど性質の異なるものも存在します。

成長投資枠の対象になるかどうかは商品ごとの個別判断です。購入前には、証券会社の取引画面や目論見書で「新NISA成長投資枠の対象」と明記されているかを確認してください。表示がなければ、特定口座でしか買えない商品の可能性があります。

もう一つの罠は、すでに特定口座で保有している金ETFを、後からNISA口座に移し替えることはできない点です。非課税にしたい場合は最初からNISA口座で買い付ける必要があり、迷ったら証券会社の窓口に直接確認するのが確実です。

5. なぜ金ETFは「つみたて投資枠」ではなく「成長投資枠」限定なのか

「新NISA 成長投資枠 ゴールド」と検索する方が多いのは、つみたて投資枠で金ETFを積み立てられない事情があるためです。理由を整理します。

5.1 つみたて投資枠は「株式を含むこと」が要件

金融庁の資料によると、つみたて投資枠の対象商品のうち、指定指数に連動しない公募株式投資信託は「主に株式に投資するもの」という要件を満たす必要があります。金ETFは金価格に連動する商品のため、この要件に当てはまりません。

そのため、金に投資したい場合は成長投資枠を使います。毎月買いたい場合も、成長投資枠内で定期的に買い付ける設定にすれば積立に近い形を作れます。

「おすすめの金ETF」を探す際は、個別銘柄名だけで選ぶのではなく、信託報酬(保有中のコスト)の水準、為替ヘッジの有無、純資産総額の大きさという3つの基準で比較する視点が欠かせません。為替ヘッジありの商品は、円安局面でヘッジなしの商品より値上がり益が小さくなることがあります。

6. 金ETFと純金積立、非課税の効果はいくら違うのか【編集部試算】

非課税と課税の差はどれくらいの金額になるのか、編集部で前提を置いて試算しました。

6.1 値上がり益100万円のケースで比較する

前提として、5年超保有した金に100万円の値上がり益が出たケースを考えます。金ETFを成長投資枠で保有していれば、100万円は全額非課税です。

一方、純金積立や金地金の現物の値上がり益は、国税庁の規定により譲渡所得として総合課税の対象です。5年超の長期譲渡所得なので、特別控除50万円を差し引いた50万円の2分の1、25万円が課税対象の所得に算入されます。

ここに、給与所得など他の所得と合算した税率を仮に20%(所得税・住民税の合計)と仮定すると、追加でかかる税負担は5万円という計算になります。あくまで税率を仮定した編集部の試算であり、実際の税率は所得水準によって変わります。

値上がり益100万円のケースの税負担比較2/3

値上がり益100万円のケースの税負担比較

出所:国税庁タックスアンサーNo.3161「金地金の譲渡による所得」(令和7年4月1日現在法令等)を基にLIMO編集部試算

6.2 【値上がり益100万円のケースの税負担比較】

金ETF(NISA成長投資枠)の場合

  • 課税対象の所得:0円(非課税)
  • 追加の税負担:0円

純金積立・金地金の現物の場合

  • 課税対象の所得:25万円
  • 追加の税負担:5万円
下村 美乃莉
5万円という数字を大きいと見るか小さいと見るかは人それぞれだと思います。私は、金額そのものより「知らずに選ぶ」ことの方が惜しいと感じます。同じ値上がりを得ても、知っているかどうかで手元に残る金額が変わるのは、少し不思議な感覚です。

7. 「新NISAで債券」は個人向け国債と別物。買えるのは債券ファンド・ETFだけ

「新NISA 債券」で検索する方には、国が発行する個人向け国債をイメージする方も多いはずです。ここにも見落としやすい区別があります。

7.1 個人向け国債はNISA口座を通さない商品

財務省によると、個人向け国債は証券会社・銀行・郵便局に国債専用の口座を開設して購入する商品です。国が発行するため元本割れがなく、1万円から購入できます。

新NISAの投資対象商品は、成長投資枠が「上場株式・投資信託等」、つみたて投資枠が「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」と、いずれも上場有価証券という形が前提です。個人向け国債のような相対型の商品はこの枠組みに含まれず、NISA口座では扱われていないと整理されています。

債券に投資して非課税の恩恵を受けたい場合は、債券を組み入れた投資信託やETFを選ぶ必要があります。ここが「新NISAに債券はいらない」という声が出る一因でもあり、個別の国債のような分かりやすさを投資信託の形では得にくいためです。

個人向け国債と債券を組み入れた投資信託・ETFの違い3/3

個人向け国債と債券を組み入れた投資信託・ETFの違い

出所:財務省「個人向け国債窓口トップページ」金融庁「NISAを利用する皆さまへ」(令和6年6月、令和7年9月改訂)を基にLIMO編集部作成

7.2 【個人向け国債と債券を組み入れた投資信託・ETFの違い】

個人向け国債の場合

  • 購入窓口:証券会社等の国債専用口座
  • NISAでの非課税:対象外
  • 最低購入額:1万円

債券を組み入れた投資信託・ETFの場合

  • 購入窓口:NISA口座(成長投資枠、一部つみたて投資枠)
  • NISAでの非課税:NISA口座内であれば非課税
  • 最低購入額:金融機関により異なります

8. 2027年、つみたて投資枠で債券ファンドが解禁される見込み

ここまで「債券はつみたて投資枠では買いにくい」と説明してきましたが、この前提は近く変わります。

8.1 令和8年度税制改正大綱に盛り込まれた変更

金融庁が2025年12月に公表した資料によると、つみたて投資枠対象の公募株式投資信託について、指定指数に連動しない商品の要件を「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に変更する方針が、令和8年度税制改正大綱に盛り込まれました。

金融庁はこのねらいについて、リスク許容度が高くない若年層や高齢層などが投資の第一歩を踏み出せるよう、債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢を充実させるためとしています。

同じ資料では、つみたて投資枠の対象年齢を0〜17歳へ拡大する見直しに「令和9年〜」と時期が明記されています。

一方、債券中心の投資信託を追加する見直し自体には、実施時期の記載が見当たりません。同じ大綱に含まれる項目のため、法案成立や告示を経て段階的に実施される見込みですが、時期は今後の発表を待つ必要があります。

これまで成長投資枠でしか選べなかった債券中心の投資信託を、つみたて投資枠で積み立てられるようになる変化です。国内債・外国債・国内株・外国株の4資産を、つみたて投資枠だけで組み合わせられる可能性があります。

9. 【編集者の視点】

この変更はあくまで2025年12月時点の税制改正大綱の方針であり、法律として成立し金融庁が要件を告示するまでは確定していません。最新情報は金融庁のNISA特設ウェブサイトで確認することをおすすめします。

もう一つの実務の罠は、米国債券ETFの多くが毎月分配型で運用されている点です。成長投資枠は毎月分配型の投資信託を除外するため、「米国債券 おすすめ」で見つけた商品がそのまま買えるとは限りません。購入前に分配金の頻度と対象表示の両方を確認してください。

下村 美乃莉
制度が変わる話を聞くと、今の枠組みで悩んでいたことが急に色あせて見えることがあります。それでも今できる選択を一つずつ積み重ねる姿勢は変わらず大切だと、私自身の運用を続けながら感じています。変化を追いかけるより、自分の歩幅を保つことを大事にしたいものです。

※本記事は、編集部が金融庁・国税庁が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

10. ゴールド・債券をリスクヘッジとして組み込むときの注意点

最後に、非課税保有限度額1800万円をどう使うかという実務面の注意点を整理します。

10.1 非課税枠の配分と為替リスクの確認

成長投資枠の1200万円をすべて金ETFに使うと、株式や投資信託への非課税枠が圧迫されます。リスクヘッジとして組み込む場合も、資産全体の比率を先に決めておくことが欠かせません。

為替ヘッジなしの金ETFや外国債券ETFは、金や債券自体の値動きに加えて為替の変動も受けます。ヘッジありの商品は変動を抑えられる一方、コストが信託報酬に上乗せされます。どちらが向くかは、円安・円高のどちらに備えたいかで変わります。

11. まとめ

  • 純金積立や金地金の現物は新NISAの対象外で、金を非課税で運用したい場合は成長投資枠の金ETFを選ぶ必要があります。
  • 金ETFは株式に投資する商品ではないため、つみたて投資枠の対象にはならず、成長投資枠限定です。
  • 個人向け国債もNISA口座では買えず、債券に投資するなら債券を組み入れた投資信託・ETFを選ぶことになります。
  • 2027年からはつみたて投資枠でも債券中心の投資信託が対象になる見込みで、選択肢が広がります。

金・債券・リスクヘッジという言葉でひとくくりにされがちですが、非課税の扱いは商品の器によってはっきり分かれます。まずは検討している商品が、成長投資枠・つみたて投資枠のどちらの対象かを確認することが出発点です。

制度は今後も見直される見込みです。購入前には証券会社の商品ページで最新の対象区分を確認し、疑問があれば金融機関の窓口に直接問い合わせることをおすすめします。

12. よくある質問

12.1 Q. 新NISAの成長投資枠で金ETFはおすすめですか?

A. 特定の銘柄の推奨はできませんが、選ぶ際は信託報酬の水準、為替ヘッジの有無、純資産総額の大きさで比較することをおすすめします。購入前に証券会社の商品ページで成長投資枠の対象か必ず確認してください。

12.2 Q. 新NISAで純金積立はできますか?

A. 純金積立や金地金の現物購入は新NISAの対象外です。非課税で金に投資したい場合は、成長投資枠で購入できる金ETFなど、上場している金融商品を選ぶ必要があります。

12.3 Q. 新NISAに債券はいらないのでしょうか?

A. 債券が必要かどうかは、リスクをどれだけ受け入れられるかによって変わります。値動きの振れ幅を抑えたい方には選択肢の一つになりますが、必須というわけではありません。

12.4 Q. 新NISAで個人向け国債は買えますか?

A. 個人向け国債はNISA口座では扱われておらず、証券会社等の国債専用口座で購入する商品です。NISA口座で債券に投資したい場合は、債券を組み入れた投資信託やETFを選びます。

12.5 Q. 新NISAで米国債券ETFを選ぶときの注意点はありますか?

A. 米国債券ETFには毎月分配型の商品があり、成長投資枠は毎月分配型の投資信託を対象から除外しています。購入前に分配金の頻度と、成長投資枠の対象表示の両方を確認してください。

参考資料

LIMO編集部NISA解説班