新NISAの成長投資枠を使って、配当がもらえるだけでなく、株主優待も楽しめる個別株に挑戦してみたいと考えている方は少なくありません。
ただし、「NISA口座で買えば優待も非課税になる」という理解には、見落としがちな制度上の境界線があります。
「非課税だから」と安心して優待株を買い増やした結果、実は優待そのものは課税対象のままだった、という思わぬ見落としを避けるために、まずは制度の仕組みから確認していきましょう。
特に、複数の優待銘柄をまとめて持ちたい方や、これまで特定口座で優待株を保有してきて成長投資枠への切り替えを考えている方に向けて、非課税の範囲と実務上の注意点を整理します。
なお、新NISA制度の基本的な仕組みに関する詳しい説明は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
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- 株主優待株を新NISAで買えるのは、つみたて投資枠ではなく成長投資枠(年間240万円、生涯1200万円)だけです。
- 配当は「株式数比例配分方式」を選ばないと非課税にならず、株主優待そのものも実は雑所得として課税対象になり得ます。
- 権利付最終日までに買い付けを済ませないと、その回の株主優待は受け取れません。
1. 新NISAで株主優待株を買えるのは「成長投資枠」だけ
まず押さえておきたいのが、新NISAには2つの投資枠があり、株主優待株を買えるのはそのうち片方だけだという点です。
1.1 つみたて投資枠は個別株が対象外
つみたて投資枠は、金融庁が定めた要件を満たす一定の投資信託・ETFのみが対象です。個別の株式銘柄は、そもそも購入の対象になっていません。
そのため、株主優待を目的に個別株を買う場合は、必ず成長投資枠を使うことになります(新NISAの成長投資枠はどう使う?つみたて投資枠との併用ルールと使い分け方も徹底解説で、2つの枠の違いを詳しく解説しています)。
1.2 成長投資枠の上限は年間240万円・生涯1200万円
成長投資枠で投資できる金額は、年間240万円までです。
さらに、新NISA全体の非課税保有限度額1800万円のうち、成長投資枠で使える金額は内数で1200万円までと決まっています。
株主優待株を複数銘柄に分散して持ちたい場合は、この1200万円という上限の中でやりくりする必要があります。
1.3 非課税で持ち続けられる期間には上限がない
2024年からの新NISAでは、非課税で保有できる期間そのものに上限がなくなりました。
優待株を長く持ち続けるほど、配当と優待を積み重ねて受け取れる期間も長くなる計算です。値上がりを急いで狙う必要はなく、腰を据えて保有先を選べる点も、優待株との相性のよさにつながっています。
2. 【誤解注意】株主優待そのものは、新NISAでも非課税にならない
成長投資枠で株主優待株を買うと、優待そのものまで非課税になると思われがちですが、それは正確ではありません。
2.1 非課税になるのは「配当」と「値上がり益」だけ
新NISAの非課税措置が及ぶのは、あくまで株式の配当所得と譲渡益(値上がり益)です。
もらった商品券や自社製品といった株主優待そのものは、この非課税措置の対象に含まれていません。
さらに、配当を非課税にするためには、証券会社で「株式数比例配分方式」を選んでおく必要があります。「配当金領収証方式」など他の受取方法を選んでいると、NISA口座で保有していても配当が課税されてしまいます。
2.2 株主優待は本来「雑所得」に区分される
国税庁の所得税基本通達35-1では、雑所得の例示の一つとして「法人の株主等がその株主等である地位に基づき当該法人から受ける経済的な利益で、24-2により配当所得とされないもの」(35-1(7))が挙げられています。
株主優待の贈呈品は、この規定にあたる経済的利益として、原則雑所得に区分される仕組みです。
つまり、株主優待自体はNISA口座で買ったかどうかにかかわらず、もともと配当所得とは別枠の課税ルールの中にあるということになります。
3. 【編集者の視点】
会社員の方であれば、給与以外の所得(株主優待の評価額を含む雑所得の合計)が年20万円以下なら、原則として所得税の確定申告は不要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。
ただし、これは所得税の話です。住民税には同じ20万円という非課税ラインがなく、金額にかかわらず申告が必要になるケースがある点は見落とされがちです。
複数の優待銘柄を持つ場合、1銘柄ずつの評価額は小さくても、合計すると20万円を超えることがあります。
年末が近づいたら、保有している優待株の評価額(商品券なら額面、商品なら「〇円相当」とカタログ等に記載された金額)を一度合算してみることをおすすめします。
会社員以外の方(自営業やパート等で給与所得者に該当しない場合)は、前提となる20万円ルールがそもそも当てはまりません。判断に迷う場合は自己判断で済ませず、お住まいの自治体の税務窓口や税務署に確認しておくと安心です。
なお、優待品の評価額は、商品券やクオカードのように金額が明記されているものは額面どおり、食品や割引券のような現物・サービスは「〇円相当」とカタログや案内に記載されている金額を目安にするのが基本です。届いた案内状は、評価額を確認できるうちに保管しておくと、後から合算するときに慌てずに済みます。
4. 複数の優待銘柄を組み合わせるなら、1200万円の枠をどう配分するか
成長投資枠の上限1200万円は、1銘柄に全額を使う必要はありません。複数の優待銘柄に分けて投資することもできます(新NISAの上限額と非課税期間まとめ|生涯非課税限度額(1800万円)の枠を使い切った後はどうなる?で、枠全体の使い切り方を解説しています)。
4.1 1銘柄あたりの投資額で、持てる銘柄数は変わる
例えば、1銘柄あたり平均40万円を投資すると仮定すると、1200万円の枠では単純計算で30銘柄まで持てる計算になります(編集部試算)。
優待株は、権利確定月が3月・9月に集中する企業が多い一方、6月・12月など別の月に権利確定日を設定している企業もあります。
権利確定月が異なる銘柄を組み合わせると、年間を通じて優待が届くタイミングを分散させやすくなります。
4.2 【投資額と合計利回りの関係】
投資額20万円のケース
- 配当利回り:2.5%
- 配当額(年):5000円
- 優待評価額:3000円(仮定)
- 合計利回り:4.0%
投資額30万円のケース
- 配当利回り:2.0%
- 配当額(年):6000円
- 優待評価額:3000円(仮定)
- 合計利回り:3.0%
同じ「優待評価額3000円」でも、投資額が小さいほど、優待が合計利回りに与えるインパクトは大きくなります。
逆にいえば、優待だけを目的に配当利回りの低い銘柄へ大きな金額を投じると、優待の恩恵は相対的に薄まる計算になります。
4.3 特定口座と比べると、差が出るのは「配当」だけ
同じ優待株を特定口座で保有した場合との違いも整理しておきます。特定口座では、配当に所得税・復興特別所得税15.315%と住民税5%、合計20.315%の税金が源泉徴収されます(国税庁)。
先ほどの配当額5000円のケースでは、特定口座なら源泉徴収額は約1016円で、手取りは約3984円です。配当額6000円のケースでは、源泉徴収額は約1219円、手取りは約4781円になります(編集部試算)。
NISA口座ならこの源泉徴収がなく、配当額がそのまま手取りになります。一方で、優待そのものの評価額と課税上の扱いは、NISA口座でも特定口座でも変わりません。
5. 「株主優待は減っている」は本当か。廃止と新設の実際の数
東証が2023年3月に上場企業へ「資本コストや株価を意識した経営」を要請して以降、海外投資家への説明のしやすさを理由に株主優待を廃止する企業が増えている、という話を耳にした方もいるかもしれません。
ただし、実際の企業数を見ると、印象とは異なる面があります。
5.1 2025年は新設が廃止を大きく上回った
東京商工リサーチの調査によると、2025年に株主優待を新たに導入した上場企業は175社でした。
一方、優待を廃止した企業は68社です。ただし、この68社のうちTOBやMBOなどによる上場廃止に伴うものが38社を占めています。
上場を続けたまま優待を廃止した企業に絞ると30社で、新設の175社と比べると、新設は廃止の約6倍という結果でした。
6. 【編集者の視点】
「優待は減少傾向」という報道の印象だけで、優待株全体を敬遠したり、逆に「まだ増えているから安心」と一銘柄に集中させたりするのは、どちらも早計です。
優待の新設・廃止は個別企業の経営判断であり、業界全体の傾向と、自分が保有する銘柄の実際の動向は別の話だからです。
保有銘柄については、優待の内容変更・廃止のお知らせが出ていないか、決算発表や適時開示のタイミングで定期的に確認する習慣を持つことをおすすめします。証券会社の株式ニュース欄や、企業の投資家向け情報ページを月に一度チェックするだけでも、変更の見落としはかなり減らせます。
複数銘柄に分散しておけば、仮に1銘柄が優待を廃止・改悪しても、家計や気持ちへの影響を抑えやすくなります。優待の内容だけでなく、配当利回りや事業の状況もあわせて見ておくと、優待の変更に一喜一憂しにくくなります。
7. 権利付最終日を逃すと、その期の優待はもらえない
成長投資枠で優待株を買うタイミングにも、注意すべき実務のルールがあります。
7.1 株式の受け渡しには2営業日かかる
日本取引所グループによると、株式の売買は2019年7月16日の約定分から決済期間が短縮され、取引が成立した日(約定日)から2営業日後に受け渡しが行われる仕組みになっています。
株主名簿に株主として記載されるのは、この受け渡しが完了した時点です。
7.2 優待を受け取るには「権利付最終日」までの購入が必須
優待や配当を受け取る権利が確定する基準日から数えて、受け渡しが間に合う最後の売買日を「権利付最終日」と呼びます。
権利付最終日の翌営業日(権利落ち日)以降に買い付けても、その回の優待は受け取れません。
成長投資枠で優待株を新たに買う場合も、この受け渡しのタイムラグを踏まえて、基準日の直前ではなく余裕を持って購入日を決める必要があります。
7.3 【基準日から権利付最終日を数える目安】
基準日が水曜日の場合
- 権利付最終日:月曜日
- 権利落ち日:火曜日
基準日が金曜日の場合
- 権利付最終日:水曜日
- 権利落ち日:木曜日
祝日をはさむ週は日数がずれるため、実際に売買する際は各証券会社や日本取引所グループが公表するカレンダーで確認することをおすすめします。
なお、権利付最終日の翌営業日である権利落ち日には、配当や優待の価値がなくなった分だけ株価が下がりやすい傾向があります。権利落ち日の値動きだけを見て「優待株は下がりやすい銘柄だ」と判断するのは早計です。
基準日や権利付最終日は銘柄ごとに異なるため、証券会社の取引ツールや企業の適時開示情報で、事前に日付を確認してから成長投資枠の買い注文を出す流れを習慣にしておくと安心です。
※本記事は、編集部が日本証券業協会・国税庁・日本取引所グループ・東京商工リサーチが公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
8. まとめ
- 新NISAで株主優待株を買えるのは、つみたて投資枠ではなく成長投資枠だけです。
- 配当を非課税にするには「株式数比例配分方式」の選択が必要で、株主優待そのものは雑所得として課税対象になり得ます。
- 2025年は株主優待を新設した企業が175社、上場を続けたまま廃止した企業が30社で、新設が廃止を上回りました。
- 優待を受け取るには、権利付最終日までに買い付けを済ませる必要があります。
株主優待は「非課税で得するお楽しみ」という側面だけでなく、配当・値上がり益とは別のルールで動く仕組みだという理解が出発点になります。優待の内容や実施企業の数は今後も変わっていくため、一度組み合わせを決めたら終わりにせず、定期的に見直す前提で付き合っていくくらいがちょうどよいかもしれません。
気になる銘柄があれば、まずは1銘柄あたりの投資額と優待評価額のバランスを確認し、成長投資枠1200万円の中でどう配分するかを考えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
9. よくある質問
9.1 Q. 新NISAのつみたて投資枠でも株主優待はもらえますか?
A. もらえません。つみたて投資枠の対象は、金融庁が定めた要件を満たす一定の投資信託・ETFに限られ、個別株は対象外です。株主優待株を買う場合は、必ず成長投資枠を使うことになります。
9.2 Q. 株主優待をもらうには、新NISA口座でいつまでに買えばいいですか?
A. 権利付最終日までに買い付けを済ませる必要があります。株式の受け渡しには約定日から2営業日かかるため、基準日の直前ではなく、余裕を持って購入日を決めることをおすすめします。
9.3 Q. 新NISA口座で受け取った株主優待には税金がかかりますか?
A. 株主優待そのものは、NISA口座で保有しているかどうかにかかわらず、原則として雑所得に区分されます。給与所得者の場合、雑所得の合計が年20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要ですが、住民税の申告要否は別途確認が必要な点に注意してください。
9.4 Q. 複数の株主優待銘柄を新NISAで持つ場合、非課税枠はどう管理すればいいですか?
A. 成長投資枠の上限は年間240万円、生涯では1200万円です。1銘柄あたりの投資額の目安を決めたうえで、この枠内に収まるように銘柄数や権利確定月の組み合わせを調整する必要があります。
参考資料
- 金融庁「つみたて投資枠対象商品」(NISA特設ウェブサイト)
- 日本証券業協会「NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項」
- 国税庁「所得税基本通達(法第35条 雑所得関係)雑所得の例示」
- 国税庁タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」(令和7年4月1日現在法令等)
- 日本取引所グループ「株式等の決済期間短縮化(T+2化)について」
- 東京商工リサーチ「2025年の株主優待『導入』上場企業は175社 個人株主の取り込みが課題、優待廃止は68社に」(2026年2月25日公表)
LIMO編集部NISA解説班
