「介護保険の自己負担割合は、一度2割や3割になったら、それ以降ずっと同じなのだろう」——そう思っていると、実は毎年見直されている仕組みだということを見落としがちです。
この記事では、介護保険の自己負担割合がどのような基準で決まり、いつ見直されるのかを、自治体の公式資料にもとづき編集部が整理します。
1. 40〜64歳は原則1割、65歳以上は所得次第で2〜3割になる
まず、年齢によって自己負担割合の考え方そのものが違う点を確認します。
1.1 65歳以上(第1号被保険者)だけが、所得に応じて割合が変わる
自治体の公式資料によると、介護保険の自己負担割合は原則1割ですが、65歳以上の第1号被保険者については、所得に応じて2割・3割になる場合があります。一方、40歳から64歳までの第2号被保険者は、特定疾病により要介護・要支援認定を受けた場合でも、原則1割負担のままです。
「介護保険は所得が高い人ほど自己負担が重くなる」という理解は、65歳以上の場合には当てはまりますが、40〜64歳の場合には当てはまりません。年齢区分によって仕組みそのものが異なる点を、まず押さえておく必要があります。
2. 【編集者の視点】
実務上、40〜64歳の方が要介護・要支援認定を受けられるのは、末期がんや関節リウマチなど、加齢に伴って生じるとされる「特定疾病」が原因の場合に限られます。この点も、65歳以上の認定基準(原因を問わない)とは異なる部分なので、あわせて確認しておくとよいでしょう。
※本記事は、編集部が自治体が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
3. 2割・3割になるには、2つの所得基準を「両方」満たす必要がある
65歳以上の負担割合の判定基準を、もう少し詳しく見ていきます。
3.1 「本人の合計所得金額」と「世帯の年金収入等」、両方の基準がある
岡山市の案内によると、3割負担になるのは、本人の合計所得金額が220万円以上で、かつ同一世帯の65歳以上の人の年金収入と年金以外の合計所得金額が、単身世帯で340万円以上、2人以上世帯で463万円以上の場合です。
2割負担になるのは、本人の合計所得金額が160万円以上で、かつ世帯の年金収入等の合計が単身世帯で280万円以上、2人以上世帯で346万円以上の場合のうち、「3割負担の基準に該当しない方」とされています。
つまり、本人所得・世帯収入とも2割の基準を満たしていても、3割の基準まで満たしていれば3割が優先される仕組みです。
「本人の所得さえ基準を超えれば、それだけで2割・3割になる」と考えていると、実際には世帯の年金収入等の基準も同時に満たさなければ、割合は上がらないことを見落としがちです。どちらか一方の基準だけを見て、自分の負担割合を思い込んでしまうケースは少なくありません。
3.2 【65歳以上・自己負担割合の判定基準】
- 3割:本人の合計所得金額220万円以上、かつ世帯の年金収入等が単身340万円以上・2人以上463万円以上です
- 2割:本人の合計所得金額160万円以上、かつ世帯の年金収入等が単身280万円以上・2人以上346万円以上(3割の基準に該当しない場合)です
- 1割:上記の2割・3割の基準に該当しない場合です
4. 【編集者の視点】
実務上、この2つの基準を自分で正確に計算するのは難しい場合があります。特に不動産所得や年金以外の副収入がある人は、合計所得金額の計算そのものが複雑になりやすいため、判断に迷う場合はお住まいの市区町村の介護保険担当窓口に確認することをおすすめします。
5. 負担割合は固定ではなく、毎年7月に見直される
最後に、この負担割合が「いつ」決まるのかを確認します。
5.1 負担割合証は毎年更新、有効期間は8月1日から翌年7月31日
自治体の公式資料によると、すでに認定を受けている人については、新年度の所得区分の判定が行われ、毎年7月下旬に新しい「介護保険負担割合証」が交付されます。この負担割合証の有効期間は1年間で、8月1日から翌年7月31日までとされています。
「一度2割や3割になったら、その後もずっと同じ割合が続く」と思い込んでいると、実際には毎年、前年の所得をもとに判定がやり直されていることを見落としがちです。前年に退職などで所得が下がれば、翌年8月から負担割合が下がる可能性もありますし、逆に所得が上がれば割合が上がることもあります。
特に、65歳で定年退職を迎えた直後の1〜2年は、退職前の給与所得が残っていた年の分と、年金収入だけになった年の分とで、判定に使われる所得の中身が大きく変わりやすい時期です。「退職したのに負担割合が下がらない」と感じる場合は、判定に使われている所得が退職前年のものである可能性を確認してみるとよいでしょう。
5.2 【負担割合証・新年度への切り替わり方】
- 毎年7月下旬:前年の所得をもとに新年度の負担割合を判定し、新しい負担割合証を交付します
- 8月1日〜翌年7月31日:交付された負担割合証の有効期間(1年間)です
介護保険料の所得段階別の決まり方については、介護保険料はいくら?年齢×所得の掛け算で決まる仕組みを整理した別記事もあわせて確認してみてください。
6. まとめ
- 介護保険の自己負担割合は、40〜64歳は原則1割、65歳以上は所得に応じて1〜3割に分かれます。
- 2割・3割になるには、本人の合計所得金額と世帯の年金収入等の合計額、両方の基準を満たす必要があります。
- 負担割合証は毎年7月下旬に更新され、有効期間は8月1日から翌年7月31日までです。
- 前年の所得によって、翌年度の負担割合が上下することがあります。
「一度決まった自己負担割合は変わらない」という思い込みのままでいると、毎年届く負担割合証の内容を確認しないまま過ごしてしまいます。
介護サービスを利用している、またはこれから利用する予定がある場合は、負担割合証が届いたタイミングで、記載内容を一度確認しておくことをおすすめします。
7. よくある質問
7.1 Q. 介護保険の自己負担割合は何割ですか。
A. 原則1割ですが、65歳以上の人は所得に応じて2割・3割になる場合があります。40〜64歳は原則1割のままです。
7.2 Q. 2割・3割になる基準はどう決まりますか。
A. 本人の合計所得金額と、世帯の年金収入等の合計額の両方の基準を満たす場合に、2割または3割になります。どちらか一方だけでは割合は上がりません。
7.3 Q. 負担割合は一度決まったら変わりませんか。
A. 変わることがあります。毎年7月下旬に前年の所得をもとに判定が行われ、負担割合証が更新されます。
7.4 Q. 負担割合証の有効期間はいつからいつまでですか。
A. 8月1日から翌年7月31日までの1年間です。
7.5 Q. 40〜64歳でも介護サービスを利用できますか。
A. 末期がんや関節リウマチなど、加齢に伴って生じるとされる「特定疾病」が原因の場合に限り、要介護・要支援認定を受けてサービスを利用できます。
参考資料
齊藤 慧
