8. 積み立てた資産から受け取る段階で、扱いは本業と合算されてから決まる。手取りが変わる仕組みと持ち方の選び方を、IFA・筒井 亮鳳が解説

50歳代になると、給与のほかにお金が入ってくる場面が少しずつ増えてきます。長く積み立ててきた資産から分配を受け取る、満期を迎えた契約からお金が戻ってくる、勤め先以外の仕事で報酬を受け取る。前半でみたように、新NISAの枠の中で増やした分には税金がかかりませんが、枠の外で受け取るお金は扱いが変わります。

実務でご相談を受けていて感じるのは、この本業以外の分を給与とは切り離した別枠のものとして考えてしまう方が多いということです。実際には、申告が必要かどうかも、どの区分で扱われるかも、本業と合算されたあとで決まる部分があります。相談の場では次のような声を耳にします。

8.1 50歳代に多いお悩み相談は「本業以外の収入が増えたとき、確定申告が必要になるのかが分からない」

50歳代のお客様
「これまでNISAで投資信託を積み立ててきましたし、個人年金や保険にも入っています。預貯金もある程度は手元に残っているので、今度はまとまった分を、決まった利息を受け取れる債券に回そうかと考えているところです。ただ、本業以外に大きな収入があるわけではないので、受け取る利息が増えたときに確定申告が必要になるのかが分かりません。証券会社を通して持つのと、保険会社の商品として持つのとで扱いが違うという話も聞きました。契約の説明も一度うかがっただけでは頭に入りませんでしたし、もし自分に何かあったときに子どもへどう渡るのか、途中でやめたくなったらどうなるのかも気になっています」

相談の場でも、本業以外に入ってくるお金を給与とは別のものとして考えたまま、確定申告が必要になるのかどうかの見立てがつかずにいる方に数多くお会いします。

こうした方に多いのは、金額の大小で判断しようとしていることです。実際に扱いを分けているのは金額ではなく、どこを通して受け取るかという形のほうだったりします。

8.2 【IFA・筒井 亮鳳が回答】受け取ってから考えるのではなく、持つ前に確かめる順番がある

筒井 亮鳳
「本業以外の収入は給与とは別枠だから、細かいことは受け取ってから考えればいい」と決めつける前に、契約の書類は良いところより先に注意の側から読み、受け取る人と分け方を契約するときに決めておき、どこを通して持つかで本業と合算されたあとの扱いがどう変わるのかを見比べ、期間を持ち切る前提が崩れたときに受取額がどうなるのかまで確かめておくことが、受け取り始めてから慌てない備え方になります。また、今後も新しく契約をする可能性がある場合は、改めて確定申告が不要なものか必要なものかの確認や最新の税制についても理解しておくといいでしょう。

8.3 ポイント1:契約の書類は、良いところより先に「注意」の側から読む

債券でも保険の形で持つ商品でも、契約の前には契約の概要をまとめた書類と、注意すべき点をまとめた書類の二つが渡されます。前者には利率や期間、いくら受け取れるのかという条件が書かれていて、後者には元本が戻らない場合があること、途中でやめたときの扱い、申し込みを撤回できる期間といった、都合の悪い側の条件が書かれています。読む順番としては、後者を先にすることをおすすめしています。一度の説明で全部が頭に入る方はほとんどいませんし、それは当たり前のことです。だからこそ、その場で分かった気にならずに、この商品で損をする道筋を三つ挙げられるかどうかを自分に問い直してみてください。三つ挙げられないうちは、まだ説明を受け直したほうがいい段階です。有利な条件は覚えていても、注意すべき条件は聞いた記憶が残りにくいので、書類のその部分に印を付けて持ち帰るくらいでちょうどよいと考えています。

8.4 ポイント2:受け取る人と分け方を、契約するときに決めておく

次に確かめたいのが、そのお金を最後に誰が受け取るのかという点です。保険の形で持つ商品には、受け取る人をあらかじめ指定できるものがあり、指定しておけば、その人へ渡る筋があらかじめ決まります。指定のない資産は、残された方が話し合って分け方を決めることになりますから、同じ金額でも手続きの重さが変わってきます。お子さんが複数いるご家庭なら、誰にどれだけという割り振りまで含めて考えておく意味があります。ここで大事なのは、金額の多さの話ではなく、決めていないと残された人が決めなければならないという構造の話です。持つときに決められることを、持ってから決め直そうとすると手間が増えます。ただし、受け取る人の指定ができるかどうかは商品によって違いますし、相続にかかる税や手続きの扱いはご家庭ごとの条件と制度の内容によって変わります。指定の仕方まで踏み込む段階では、契約の担当者と、必要に応じて税務の専門家に条件を確かめてください。

8.5 ポイント3:どこを通して持つかで、本業と合算されたあとの扱いが変わる

ここが、本業以外の収入を考えるうえでの要点です。同じように債券で運用するとしても、証券会社を通して持つ場合と、保険会社の商品という形で持つ場合とで、受け取ったお金がどの所得の区分で扱われるかが変わることがあります。証券会社を通した利息は、あらかじめ決まった税率で差し引かれてそこで完結する形が基本です。一方、保険会社の商品として受け取るお金には、給与や事業の収入とは別の区分として扱われる部分があり、この区分の収入が年間で一定の額に届かない会社員の場合、確定申告をしなくてよい扱いになることがあります。つまり、本業以外の収入は、それ単体で税率が決まるのではなく、本業と合算されたうえで、申告が必要かどうかも、どの区分で判定されるかも決まるということです。だから、給与以外の収入がほかにどれだけあるかによって、有利な持ち方が入れ替わります。逆に言えば、いま本業以外の収入が少ない方には、選べる余地がその分だけ広いということでもあります。なお、申告が不要になる額の水準や区分の判定は制度の改正でも変わりますし、勤め先で年末調整を受けているかどうかでも扱いが違います。金額を決める前に、税務署や税理士に自分の条件を確かめてください。

8.6 ポイント4:期間を持ち切る前提が崩れたときの受取額を、先に確かめる

最後に、持ち続ける前提が崩れたときの話をしておきます。決まった利息を受け取る形の商品は、約束された期間まで持ち切ることを前提に条件が組まれています。ですから、途中でやめる場合は、約束された額が戻ってくるのではなく、その時点の条件で計算し直した額を受け取ることになります。ここで効いてくるのが市場の金利です。世の中の金利が上がっている局面で途中でやめると、あとから出てきた条件のよい商品と比べられる形になるため、受け取れる額は目減りしやすくなります。保険の形で持つ商品なら、契約から一定の期間は、やめたときに戻ってくる額が払い込んだ額を下回るように設計されているものもあります。途中でやめられるという柔軟さがあることと、いつやめても損をしないことは別の話だと考えてください。だから、数年のうちに使う可能性のあるお金は、ここに入れないでおきたいところです。

本業以外の収入は、金額の大小だけを見ていると給与とは切り離された別枠のように思えます。けれども、申告が必要かどうかも、どの区分で判定されるかも、本業と合算されたあとで決まります。これは一つの考え方であり、どの持ち方が有利になるかは、給与以外の収入がほかにどれだけあるかや、ご家族の状況、そのときの税制の条件によって異なります。申告の要否や区分の判定は年度ごとの制度改正でも変わるため、金額や持ち方を決める段階では、契約の担当者と税務の専門家に自分の条件を確かめながら進めてください。

9. まとめにかえて:無理のないペースで資産形成を続けるために

金融庁の活用事例では、月10万円を15年積み立てて非課税保有限度額1800万円に到達し、その後15年置いた場合の資産額が約3525万円、月3万円を40年続けた場合が約2752万円と示されていました。元本の差は360万円ですが、行き着く額の差は約773万円です。違いを作っているのは毎月の額よりも、運用に充てられた年数のほうでした。

つみたて投資枠の年120万円は「ここまで入れられる」という線であって、埋めなければならない額ではありません。まずは止めずに続けられる額を決めて、そこから年数を確保する順番で考えてみてください。商品の条件や口座の区分は口座を開いた金融機関の説明で、税の扱いは税務署や専門家に確かめながら進めていただければと思います。

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本記事は情報提供を目的としており、投資の推奨や勧誘を行うものではありません。投資には元本割れのリスクが伴うため、最終的な投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。また、記事内のシミュレーション結果は将来の運用成果を保証するものではありません。執筆時点(2026年9月)の情報を基に作成しておりますが、本記事の情報を利用したことによるいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

参考資料

筒井 亮鳳