「株式は長期で持てば安心」——そう聞いて、何となく納得してはいないでしょうか。

ですが、実際に何年保有すれば税金や制度でどんな違いが生まれるのかを、具体的に説明できる人は多くありません。

この記事では、不動産の税制と混同しやすい株式特有の課税ルールや、新NISAで変わった非課税期間の仕組み、長期でコツコツ買い増す人が見落としやすい取得費の計算方法まで、公的資料をもとに整理します。

なお、新NISAを使った長期の運用シミュレーションについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション
【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション

1. そもそも「株式投資の長期保有・長期投資」とは何か

株式投資で得られる利益は、主に3種類あります。

1.1 値上がり益・配当・株主優待という3つの利益

1つ目は株価が上がったときに売却して得る値上がり益です。2つ目は企業が利益の一部を株主に還元する配当金です。

3つ目は保有株数に応じて商品やサービスがもらえる株主優待です。

「長期保有」「長期投資」という言葉に、法律上の明確な年数の定義はありません。一般的には、数か月から数年の値動きを狙う短期売買に対し、数年から数十年単位で株式を持ち続ける投資スタイルを指す言葉として使われています。

下村 美乃莉
「長期保有」に何年からという明確な決まりがあると思い込んでいた時期が、私にもありました。実際に調べてみると、法律上の年数の定義はないと知り、少し拍子抜けした記憶があります。人によって「長期」の感覚が違うのも当然なのだと納得しました。自分の目的や資金の使い道に合わせて、期間を決めればよいのだと今は考えています。

2. 長期保有によく言われるメリットとデメリットのおさらい

長期保有のメリットとしてよく挙げられるのは、日々の株価変動に一喜一憂せずに済む点と、配当や株主優待を繰り返し受け取れる点です。

一方でデメリットとして、資金が長期間拘束される点や、保有期間が長くなるほど企業の業績悪化や事業環境の変化に巻き込まれるリスクが高まる点が指摘されています。

ここまでは証券会社の解説記事などでもよく紹介されている内容です。証券口座の開き方など基礎的な手順は、株式投資の始め方を扱った記事で解説しています。本記事ではここから先、税金や制度面で見落としやすいポイントを整理していきます。

3. 「長期保有で税率が下がる」は不動産の話。株式には5年ルールがない

「不動産と同じように、株式も長く持てば税率が下がるはず」と考えている方は少なくありません。

3.1 不動産は保有5年を境に税率が変わる

国税庁の資料によると、土地や建物を売却した場合の譲渡所得税は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」、5年を超えると「長期譲渡所得」に区分されます。

税率は短期譲渡所得が所得税30%・住民税9%、長期譲渡所得が所得税15%・住民税5%です。復興特別所得税を含めると、短期は合計約39.63%、長期は約20.315%になります。

その差は約19.3ポイント、短期は長期のおよそ1.95倍の税負担です。

3.2 株式の譲渡益・配当は保有期間を問わず一律20.315%

一方、上場株式等の値上がり益や配当金は、保有期間の長さに関わらず税率が変わりません。

国税庁の資料では、上場株式等の譲渡益・配当ともに所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%の税率が示されています。

「長く持てば税率が下がる」という不動産的な発想を株式に当てはめると、存在しないルールを期待してしまうことになります。

保有期間と税率の違い、不動産と株式の比較1/3

保有期間と税率の違い、不動産と株式の比較

出所:国税庁「土地や建物を売ったとき(短期譲渡所得の税額の計算)」などを基にLIMO編集部作成

3.3 【保有期間と税率の違い、不動産と株式の比較】

不動産の場合

  • 5年以下(短期譲渡):約39.63%
  • 5年超(長期譲渡):約20.315%

上場株式の場合

  • 保有期間を問わず一律:20.315%
下村 美乃莉
最初にこの数字を知ったとき、私も「株も同じように税率が下がるのでは」と思い込んでいました。不動産の話と混同しやすいのだと、実際に調べてみて初めて気づいた点です。思い込みのまま行動する前に、一度確認しておきたいところです。同じ「税金」でも、資産の種類によって仕組みが違うのだと、あらためて実感しました。

4. 【編集者の視点】

不動産の税制に詳しい方ほど、「長く持てば税金が有利になるはず」という感覚を株式にも当てはめてしまいがちです。

しかし株式の税率は保有期間ではなく、口座の種類によって変わります。特定口座(源泉徴収あり)か一般口座か、そしてNISA口座を使っているかどうかが税負担を左右する要素です。

特にNISA口座であれば、値上がり益にも配当にも税金がかかりません。「何年持てば得か」ではなく「非課税の枠をどう使うか」という視点に切り替えることが、実質的な節税につながります。

証券会社によっては、特定口座とNISA口座の両方で同じ銘柄を保有できる場合があります。どちらの口座で買い付けたかを事前に確認しておくと、後から税金の計算で迷わずに済みます。

5. 旧NISAの「5年」「20年」という期限はもう過去のもの。新NISAで消えた足かせ

NISA制度の変化を知らないままだと、長期保有で損をすることがあります。

5.1 一般NISAは5年、つみたてNISAは20年という期限があった

金融庁の公式サイトによると、2023年までの制度では、非課税保有期間は一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間と定められていました。

期限が来ると非課税のまま保有を続ける手続きを検討する必要があり、投資家自身が期限を意識し続けなければなりませんでした。

5.2 2024年からの新NISAは非課税保有期間が無期限に

金融庁の公式サイトには「非課税保有期間はつみたてNISAでは20年間、一般NISAでは5年間でしたが、2024年からのNISAでは無期限となりました」と明記されています。

期限を気にせず持ち続けられるようになったことで、株式投資における「長期保有」という選択肢そのものの使い勝手が大きく変わったといえます。

5.3 2023年までに投資した分は新NISAに合算されない

金融庁の公式サイトには「2023年末までに、つみたてNISAおよび一般NISAの口座において投資した商品は、2024年1月以降はNISAの外枠で管理され、2023年までのNISA制度における非課税措置が適用されます」とも記載されています。

つまり旧NISAの資産は、新NISAの非課税保有限度額1800万円とは別枠のまま、元の非課税期間まで非課税で持ち続けられます。

非課税保有期間、旧NISAと新NISAの比較2/3

非課税保有期間、旧NISAと新NISAの比較

出所:金融庁「NISAを知る」(NISA特設ウェブサイト)を基にLIMO編集部作成

5.4 【非課税保有期間、旧NISAと新NISAの比較】

旧NISA(〜2023年)の場合

  • 一般NISA(〜2023年):5年間
  • つみたてNISA(〜2023年):20年間

新NISA(2024年〜)の場合

  • 新NISA(2024年〜):非課税保有期間は無期限
下村 美乃莉
期限を気にしなくてよくなったと聞いて、身構えていた肩の力がふっと抜けるような感覚を覚えました。制度がシンプルになると、長期で続けること自体のハードルが下がるのだと実感しています。以前は非課税期間が来るたびに身構えていたので、この変化はとても大きいと感じます。長く続けることへの心理的な負担が、確かに軽くなった気がします。

6. 【編集者の視点】

旧NISAを使っていた方の中には、非課税期間が来るたびに「売るか、課税口座に移すか」を考えていた方もいるでしょう。

2024年以降は、旧NISAの資産は新NISAとは別枠のまま、元の非課税期間まで運用を続けられます。新NISAの非課税保有限度額に合算されるわけではない点は覚えておきたいところです。

旧NISAの非課税期間が終了するタイミングは商品ごとに異なります。証券会社の取引報告書や取引画面で、保有商品の非課税期間がいつまでかを確認しておくと安心です。

わからない場合は、口座を持つ証券会社に直接問い合わせて確認するのが確実な方法です。

7. コツコツ買い増す長期投資家が見落としやすい「取得費」の計算ルール

積立のように、同じ銘柄を時期を分けて何度も買い増すスタイルも、長期保有ではよくあるパターンです。

7.1 「先に買った分から売れる」わけではない

同じ銘柄を複数回に分けて購入し、その一部を売却した場合、税務上の取得費は先入先出ではなく別の方法で計算されます。

国税庁の資料には「同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その株式等の一部を譲渡した場合の取得費は、総平均法に準ずる方法によって求めた1単位当たりの価額を基に計算します」と明記されています。

総平均法に準ずる方法とは、最初に取得した時から譲渡の時までの購入価格を平均して、1単位あたりの取得費を計算する方法です。

つまり、安く買った分だけを狙って売る、あるいは高く買った分だけを損切りする、という自由な選び方はできない仕組みになっています。買い増すたびに、保有株全体の平均取得単価が塗り替わっていくとイメージすると分かりやすいでしょう。

8. 含み損を長期で抱えたときの出口。繰越控除「3年」は放置すると消える

長期保有していても、含み損を抱えたまま売却するケースは起こり得ます。

8.1 売却損は翌年以後3年間、利益と相殺できる

国税庁の資料によると、上場株式等を売却して生じた譲渡損失は、一定の要件を満たせば、損失が生じた年の翌年以後3年間にわたって、上場株式等の譲渡所得等や配当所得等から繰越控除できます。

この制度に、株式の保有期間そのものを問う要件はありません。長期保有していた銘柄の損失でも、短期売買の損失でも、同じように繰越控除の対象になります。

8.2 「その年に所得がないから」と申告をやめると権利を失う

繰越控除を使うには、損失が生じた年だけでなく、翌年以降も連続して確定申告書を提出し続ける必要があります。

「今年は他に利益が出る取引がなかったから」と申告を省略してしまうと、繰越控除の権利そのものが失われてしまいます。長期で投資を続けるなら、含み損を確定させた年以降は、利益の有無にかかわらず申告を続ける必要がある点を覚えておきたいところです。

まとまった資金で一括投資する場合、利益確定のタイミングによっては確定申告そのものが必要になることもあります。詳しくはまとまった資金での株式投資と確定申告の関係を扱った記事で解説しています。

下村 美乃莉
「損切りした年に申告すればそれで終わり」と思い込みそうになったことが、私にもあります。3年間続けて申告するという発想は、言われてみるまで意識したことがありませんでした。一度知ってしまえば当たり前のことですが、知らずにいたら損をしていたかもしれません。

9. 【編集者の視点】

「損切りした年に確定申告すれば終わり」と思い込んでいる方は少なくありません。実際には、繰越控除を使い切るまで毎年申告を続ける必要があります。

特定口座(源泉徴収あり)を使っていて、ふだん確定申告をしていない方ほど、この継続申告を忘れがちです。翌年に無申告のまま放置すると、繰越控除の権利が消えてしまいます。

長期保有の途中で大きな含み損を確定させた年は、その後3年間の申告予定を家計簿やカレンダーにメモしておくといった工夫をしてもよいでしょう。

手続きに不安がある場合は、確定申告の時期に税務署や国税局電話相談センターで、必要な添付書類も含めて確認しておくと安心です。

10. 非課税保有限度額いっぱいまで長期保有したら、税金はどれだけ変わるのか

ここまでの制度を踏まえ、実際に長期保有を続けた場合の税負担の差を試算してみます。

10.1 配当利回り1.94%で長期保有した場合の試算

日本取引所グループの統計月報によると、2026年7月時点のプライム市場全体の配当利回り(加重平均)は1.94%でした。

新NISAの非課税保有限度額1800万円を、この利回りで長期保有したと仮定すると、年間の配当額は約34万9200円になります。

この配当が課税口座での受け取りだった場合、20.315%の税金が引かれます。年間の税額は約7万940円です。

この税額を20年間そのまま単純合計すると、約141万8800円になります。複利効果や配当額の変動は考慮していない、単純な合計です。

NISA口座であれば、この税額はそのまま非課税になります。長期保有を続ける年数が長いほど、非課税の効果が積み上がっていく計算です。

非課税保有限度額を長期保有した場合の税負担の差(編集部試算)3/3

非課税保有限度額を長期保有した場合の税負担の差(編集部試算)

出所:日本取引所グループ「統計月報」2026年7月分などを基にLIMO編集部試算

10.2 【非課税保有限度額を長期保有した場合の税負担の差(編集部試算)】

課税口座の場合

  • 年間配当額:約34万9200円
  • 年間税額:約7万940円
  • 20年間の税額単純合計:約141万8800円

NISA口座の場合

  • 上記の税額がすべて非課税

あくまで配当のみに絞った単純計算であり、値上がり益や配当利回りの変動は考慮していません。実際の金額は保有銘柄や市況によって変わります。

下村 美乃莉
非課税保有限度額いっぱいまで育てるのは簡単なことではないと感じる方もいるはずです。それでも、非課税の効果は続けた年数だけ積み上がっていくのだと知っておくことには意味があると思います。着実に積み上げていく感覚を、私自身も大事にしたいと思っています。

※本記事は、編集部が金融庁・国税庁・日本取引所グループが公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

11. まとめ

  • 株式投資の長期保有・長期投資に、法律上の明確な年数の定義はありません。
  • 不動産の譲渡所得税は保有5年を境に税率が変わりますが、上場株式の譲渡益・配当は保有期間を問わず一律20.315%です。
  • 2024年からの新NISAでは非課税保有期間が無期限になり、旧NISAにあった5年・20年という期限を気にする必要がなくなりました。
  • 同じ銘柄を複数回に分けて買い増した場合、取得費は総平均法に準ずる方法で計算されます。
  • 売却損の繰越控除は翌年以後3年間ですが、権利を維持するには利益の有無にかかわらず毎年申告を続ける必要があります。

長期保有は、じっと待てば自動的に得をする仕組みではなく、税金や制度のルールを理解して初めて実力を発揮するものだといえます。

まずは自分が使う口座の種類と、NISAの非課税枠がどれだけ残っているかを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。わからない点があれば、口座を持つ証券会社や税務署に相談することをおすすめします。

12. よくある質問

12.1 Q. 株式投資の長期保有は何年からと言えますか?

A. 法律上の明確な年数の定義はありません。一般的には数年から数十年単位で保有を続けるスタイルを指す言葉として使われています。

12.2 Q. 株式を長期保有すれば税率は下がりますか?

A. 下がりません。上場株式等の値上がり益・配当は、保有期間を問わず一律20.315%の税率です。保有5年を境に税率が変わる不動産の譲渡所得税とは異なる仕組みです。

12.3 Q. 旧NISAで保有している商品は、新NISAに移せますか?

A. 直接移すこと(ロールオーバー)はできません。 金融庁の公式サイトによると、2023年末までにNISA口座で投資した商品は、2024年以降は新NISAとは別枠で管理され、2023年までの制度の非課税措置がそのまま適用されます
。もし新NISAで運用したい場合は、一度旧NISAの資産を売却し、新NISA口座で買い直す必要があります。

12.4 Q. 株式投資の損失は何年繰り越せますか?

A. 一定の要件を満たせば、損失が生じた年の翌年以後3年間、上場株式等の譲渡所得等や配当所得等から繰越控除できます。ただし、繰越控除を使い切るまで毎年連続して確定申告書を提出する必要があります。

参考資料

LIMO編集部ウェルスマネジメント班