「介護のことは、実際に親の介護に直面してから会社に相談すればいい」——そう思っていると、実は会社側にも先回りして動く義務があることを知らないままかもしれません。令和7年4月の法改正により、会社は労働者が40歳に達した時点から、早い段階で介護関連の情報を提供する義務を負うようになりました。
この記事では、育児・介護休業法における介護関連の改正動向を、厚生労働省の公式資料にもとづき編集部が整理します。
1. 40歳到達時点から、会社に「早期の情報提供」義務が生じる
厚生労働省の資料によると、労働者が40歳に達する日(誕生日の前日)の属する年度、またはその翌日から1年間のいずれかの期間に、事業主は介護休業制度・介護両立支援制度等の情報を、対象の労働者に提供することが義務付けられました。まだ介護に直面していない段階でも、40歳になったタイミングで会社から情報提供を受けられる仕組みです。
「介護は突然始まるものだから、会社側から前もって知らされることはないだろう」と思い込んでいると、実際には40歳という節目で会社から情報提供を受けられる制度があることを見落としがちです。届いた案内に心当たりがない場合は、人事担当部署に確認してみる価値があります。
2. 【編集者の視点】
実務上、この情報提供の方法や時期は、面談・書面交付・FAX・電子メールなど複数の選択肢から会社が選ぶ形になっています。案内の形式は会社によって異なるため、心当たりがない場合は、まず自社の制度がどう運用されているか、人事・労務担当部署に確認してみるとよいでしょう。
※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。就業規則や具体的な運用は会社ごとに異なるため、詳細は必ず自社の人事・労務担当部署にご確認ください。
3. 介護に直面した申出があれば「個別周知・意向確認」が義務に
もう一つの大きな改正が、労働者から実際に家族の介護に直面した旨の申出があった場合の対応です。厚生労働省の資料によると、事業主は「介護休業に関する制度、介護両立支援制度等」「その申出先」「介護休業給付金に関すること」の3項目について、個別に周知し、利用の意向を確認することが義務付けられました。
「介護に直面したら、自分で調べて申請するしかない」と考えていると、実際には会社側から個別に説明を受け、利用の意向を確認される権利があることを見落としがちです。申出をしたのに何の案内もない場合は、対応漏れの可能性もあるため、担当部署に確認してみるとよいでしょう。
3.1 【令和7年4月施行・介護関連の改正ポイント】
- 労働者が40歳に達したとき:介護休業制度等について早期の情報提供(義務)
- 労働者から介護直面の申出があったとき:制度内容・申出先・給付金についての個別周知と意向確認(義務)
4. 【編集者の視点】
実務上、個別周知・意向確認は面談・書面交付・FAX・電子メールのいずれかの方法で行われます。口頭でのやり取りだけで済ませてしまうと、後から「言った・言わない」の行き違いが生じることもあるため、できれば書面やメールなど記録に残る形での案内を依頼しておくと安心です。
5. テレワークの選択も、努力義務として位置づけられた
働き方の面でも変化があります。厚生労働省の資料によると、家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるように措置を講ずることが、事業主の努力義務として新たに位置づけられました。
「介護と仕事の両立は、休業を取るか辞めるかの二択しかない」と思い込んでいると、実際にはテレワークという働き方の選択肢が制度上位置づけられていることを見落としがちです。休業を取らずに働き方を調整したい場合は、この点もあわせて会社に相談してみる価値があります。
義務と努力義務、それぞれの重みの違い
5.1 【義務と努力義務、それぞれの重みの違い】
- 義務:40歳到達時の早期情報提供、介護直面時の個別周知・意向確認
- 努力義務:家族を介護する労働者へのテレワーク等の選択肢の提供
6. 【編集者の視点】
実務上、テレワークはあくまで「努力義務」であり、個別周知・意向確認のような明確な義務とは重みが異なります。会社によって導入状況に差が出やすい部分なので、自社での運用実態については、人事担当部署に直接確認しておくことをおすすめします。
介護保険サービスの自己負担割合や保険料の基本については、介護保険料は40歳から天引き開始。自己負担割合の基本を整理した別記事もあわせて確認してみてください。
7. まとめ
- 労働者が40歳に達した時点から、会社には介護関連の早期情報提供義務が生じます。
- 介護に直面した申出があった場合、会社には個別周知・意向確認の義務が生じます。
- 家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるようにする措置は、努力義務として位置づけられています。
「介護のことは直面してから自分で調べればいい」という思い込みは、令和7年4月以降の制度上は当てはまりません。会社側にも、早期の情報提供や個別周知・意向確認という具体的な義務が課されています。
心当たりのある案内が届いていない場合や、申出をしても対応がない場合は、一人で抱え込まず、早めに人事・労務担当部署に確認してみることをおすすめします。
8. よくある質問
8.1 Q. 介護のことは、直面してから会社に相談すればよいですか。
A. それでも問題ありませんが、令和7年4月以降は、労働者が40歳に達した時点で会社から早期に情報提供を受けられる仕組みもあります。
8.2 Q. 介護に直面した申出をすると、会社は何をしてくれますか。
A. 制度内容・申出先・介護休業給付金について、個別に周知し、利用の意向を確認することが義務付けられています。
8.3 Q. テレワークで介護と仕事を両立することはできますか。
A. 会社には、家族を介護する労働者がテレワーク等を選択できるようにする努力義務が課されています。導入状況は会社によって異なります。
8.4 Q. 自社での具体的な運用が知りたい場合、どうすればよいですか。
A. 就業規則や運用は会社ごとに異なるため、人事・労務担当部署に直接確認することをおすすめします。
参考資料
齊藤 慧
