「手取りで年間300万円くらい」から「手取りで年間1000万円くらい」まで、幅広い層の会社員に向けた記事です。額面の年収がいくらに当たるのかを、編集部で実際に試算しました。

あわせて、早見表だけでは見えてこない「同じ額面年収でも、いつ稼いだかによって社会保険料が変わってしまう」という制度上の癖にも踏み込みます。

転職の年収交渉や住宅ローンの返済計画を立てる前に、自分の手取り帯がどのあたりに位置するのかを、まず把握しておきましょう。

1. そもそも「手取り」と「額面(年収)」は何が違うのか

「額面年収」は、会社が支払う給与の総額です。ここから税金・社会保険料が天引きされた後に、実際に口座に振り込まれるのが「手取り」です。

1.1 天引きされる4つの項目

会社員の給与から天引きされるのは、主に次の4つです。厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料、そして所得税・住民税です。

厚生年金と国民年金の違いや、保険料の仕組みについては、下記の記事でも詳しく解説しています(国民年金 厚生年金 違い)。

厚生年金保険料は本人負担分で給与の9.15%、健康保険料は東京都在住・令和8年度で4.925%です。これらは会社と折半して負担します。

雇用保険料は本人負担分で0.5%(令和8年4月〜令和9年3月)とわずかですが、子ども・子育て支援金という比較的新しい項目も、令和8年4月分の給与から健康保険料に上乗せする形で徴収が始まっています。

所得税は超過累進税率で、稼ぐほど税率が上がります。住民税は所得に対して一律10%の所得割と、定額の均等割(東京23区は都民税1000円+区市町村民税3000円の合計4000円)で構成されます。

これとは別に、森林環境税という国税(年1000円)が住民税の均等割と合わせて徴収されます。この2つを合計した年5000円が、実際に天引きされる定額負担の目安です。

1.2 年収が上がるほど、手取りの割合が下がる理由

所得税の税率が段階的に上がる一方で、厚生年金保険料には上限があり、一定の年収を超えると保険料が頭打ちになります。

厚生年金保険料は、月給が63万5000円(32等級)を超えても保険料は増えません。年収に換算すると、およそ780万円が実質的な天井です。

低・中所得帯では厚生年金保険料の負担感が相対的に大きく、高所得帯に近づくにつれて所得税の伸びが上回っていく、というねじれた構造になっています。

健康保険料にも別の上限があります。ただし月収135万5000円以上(標準報酬月額139万円)で頭打ちになる仕組みのため、年収1600万円台まで届かない限りは関係しません。

この2つの力がせめぎ合った結果、年収帯によって「手取り率」の下がり方には強弱があります。次の章の早見表で、実際の数字を見ていきます。

2. 【早見表】年間の手取り300万〜1000万円は、額面年収でいくらか

編集部で、東京23区在住・40歳未満・独身・扶養家族なし・ボーナスなし(月給×12を年間の額面年収とする)という条件で、年間の手取りが300万円から1000万円になる額面年収を試算しました。

標準報酬月額の32等級による端数や、厚生年金保険料・子ども子育て支援金の上限は考慮していますが、それ以外は概算です。

年間の手取り300万〜1000万円に対応する額面年収の早見表1/2

年間の手取り300万〜1000万円に対応する額面年収の早見表

出所:国税庁タックスアンサーNo.1199「基礎控除」同No.1410「給与所得控除」全国健康保険協会「令和8年度保険料額表(東京支部)」などを基にLIMO編集部が試算

2.1 【年間の手取り300万〜1000万円に対応する額面年収の早見表】

年間の手取りが約300万円の場合

  • 年間の手取り:約300万円
  • 額面年収:約378万円
  • 手取り率:約79%

年間の手取りが約400万円の場合

  • 年間の手取り:約400万円
  • 額面年収:約514万円
  • 手取り率:約78%

年間の手取りが約500万円の場合

  • 年間の手取り:約500万円
  • 額面年収:約652万円
  • 手取り率:約77%

年間の手取りが約600万円の場合

  • 年間の手取り:約600万円
  • 額面年収:約808万円
  • 手取り率:約74%

年間の手取りが約700万円の場合

  • 年間の手取り:約700万円
  • 額面年収:約960万円
  • 手取り率:約73%

年間の手取りが約800万円の場合

  • 年間の手取り:約800万円
  • 額面年収:約1114万円
  • 手取り率:約72%

年間の手取りが約900万円の場合

  • 年間の手取り:約900万円
  • 額面年収:約1273万円
  • 手取り率:約71%

年間の手取りが約1000万円の場合

  • 年間の手取り:約1000万円
  • 額面年収:約1457万円
  • 手取り率:約69%
下村 美乃莉
手取り700万円を目指すのに額面960万円が必要と聞くと、思ったより差が大きいと感じる方も多いはずです。私自身、初めて厚生年金保険料の仕組みを知ったときは同じ驚きがありました。数字だけで判断せず、内訳まで見てみる価値はあると思います。

3. 【編集者の視点】

この早見表を見るときに気をつけたいのは、「ボーナスなし・月給×12」という前提です。実際には賞与がある会社員のほうが多く、賞与にも社会保険料はかかります。

ただし賞与を含めても、額面年収の合計が同じであれば、年間の社会保険料の総額はほぼ変わりません。保険料率は月給にも賞与にも同じ料率がかかる仕組みだからです。

変わるのは「いつ・どのくらいの割合で引かれるか」という月々の体感だけで、年間の手取り総額そのものが大きくズレるわけではありません。

一方で扶養家族の有無や、住んでいる自治体、年齢(40歳から介護保険料が加わります)によって、実際の手取りはこの早見表より変わります。

特に国民健康保険料や個人住民税の税率は自治体ごとに定められているため、東京23区の料率をそのまま他の地域に当てはめると、実際の金額とずれることがあります。

また住民税は前年の所得を基準に、翌年6月から天引きが始まる仕組みです。昇給した直後の年は、この早見表が示す「その年の手取り」よりも実際の手取りが多く感じられることがあります。

あくまで「だいたいこのくらい」という目安として使い、正確な金額を知りたい場合は、給与明細や源泉徴収票に記載された実際の控除額で確認することをおすすめします。

特に確認したいのは、給与明細の「社会保険料」欄の内訳です。厚生年金・健康保険・雇用保険がそれぞれいくら引かれているかを見れば、この早見表とのズレの原因も特定しやすくなります。

4. 早見表通りにいくとは限らない。「いつ稼いだか」で社会保険料が変わる罠

ここまでの早見表は「年間を通じて毎月同じ給与」という前提で計算しています。しかし実際には、月によって残業代やインセンティブの多寡が変わる方も少なくありません。

実は、社会保険料の計算にはこの「月ごとのばらつき」が思わぬ形で影響することがあります。

4.1 4〜6月の平均で1年分が決まる「定時決定」の仕組み

厚生年金・健康保険の保険料は、毎月の給与そのものではなく「標準報酬月額」という区分値をもとに計算されます。

日本年金機構は、この標準報酬月額について「4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額をもとに、標準報酬月額を決定し、その年の9月から翌年8月まで適用します」としています。

つまり、たまたま4〜6月に残業やインセンティブが集中していた人は、その平均額をもとにした標準報酬月額が、その年の9月から翌年8月までの丸1年間、固定されて使われ続けます。

4〜6月以降に残業が落ち着いて実際の給与が下がっても、標準報酬月額は自動では下がりません。

標準報酬月額は、実際の給与そのものではなく、一定の幅ごとに区切られた「等級」で決まります。報酬月額60万円は59万円の等級に、約46万7000円は47万円の等級に、それぞれ該当します。

4〜6月に残業が集中した場合の標準報酬月額のズレ2/2

4〜6月に残業が集中した場合の標準報酬月額のズレ

出所:日本年金機構「標準報酬月額の決定方法(定時決定)」同「随時改定(月額変更届)」同「厚生年金保険料額表(令和8年度版)」を基にLIMO編集部が試算

4.2 【4〜6月に残業が集中すると、その後の社会保険料が下がりにくくなる仕組み】

4〜6月(繁忙期・算定対象期間)

4〜6月の繁忙期に月給60万円(3か月平均)となると、この金額を基に新しい標準報酬月額(60万円)が決定されます。

9月〜翌年8月(定時決定の適用期間)

実際の月給が約46万7000円に落ち着いても、4〜6月の平均で決まった高い標準報酬月額(60万円)が9月から翌年8月まで1年間適用され続けます。

下村 美乃莉
「繁忙期にがんばった月の給与が、1年後まで保険料に響く」というのは、私も知ったときに少し意外でした。年収だけを見ていても分からない仕組みが、まだ他にもありそうだと感じます。数字の裏側を一つずつ確かめていく作業を、これからも続けたいと思います。

5. 【編集者の視点】

この「定時決定」の仕組みで、さらに見落とされやすいのが「随時改定」との関係です。

随時改定とは、昇給・降給などで固定的賃金が変わり、標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合に、年の途中でも標準報酬月額を見直す制度です。

固定的賃金とは、基本給や役職手当、住宅手当など、あらかじめ支給額や支給率が決まっている賃金を指します。

しかし日本年金機構は、固定的賃金は変わらず残業手当などの非固定的賃金だけが変動して2等級以上の差が生じた場合は、随時改定の対象にならないとしています。

つまり先ほどの例のように、基本給は変わらず残業代の増減だけで標準報酬月額とのズレが生じたケースでは、随時改定を使って途中で下げることはできません。

逆に基本給そのものが上がった場合は、随時改定の対象になり得ます。ズレの原因が「残業代の変動」なのか「基本給の変更」なのかを、まず切り分けて考える必要があります。

繁忙期の見込みがある方は、賞与や基本給の見直し時期と、4〜6月の繁忙期が重ならないよう会社側と調整できるか、人事・総務担当者に相談してみる価値があります。

すでにズレが生じてしまい、負担感が大きいと感じる場合の相談先は、勤務先の管轄年金事務所です。標準報酬月額の決定通知書を手元に、状況を具体的に伝えて確認しましょう。

6. 額面年収と手取りの差は、どんな場面で問題になるか

この額面と手取りの差は、単なる数字の話ではなく、実生活のいくつかの場面で判断を左右します。

転職活動でオファーを比較するとき、多くの求人票は額面の年収で提示されます。年収178万円の壁など、税金や扶養の制度も基本的に額面の年収で判定されます(年収の壁178万円の基本で仕組みを解説しています)。

一方で、住宅ローンや教育費の予算を立てるときに使うべきなのは、実際に使える手取りの金額です。

額面ベースで「年収が上がった」と喜んでいても、社会保険料や税金の増え方次第では、手取りの伸びがそれほど大きくないというケースも起こり得ます。

ふるさと納税の控除限度額も、住民税の所得割額を基準に決まる仕組みです。手取りの感覚ではなく、額面年収から逆算した目安を確認しておく必要があります。

児童手当や保育料の階層区分も、多くの自治体は世帯の額面年収や合計所得を基準に判定します。手取りの感覚だけで「対象から外れるはずがない」と思い込まないよう注意が必要です。

住宅ローンの審査でも、金融機関は額面の年収を基準に返済負担率を計算します。審査に通る金額と、実際に無理なく返せる金額(手取りベース)は、必ずしも一致しません。

返済負担率は「額面年収に対する年間返済額の割合」で計算されるのが一般的です。審査上の上限いっぱいまで借りると、手取りベースでは家計が苦しくなることもあります。

年間の手取り300万円台から1000万円台まで、いま自分がどのあたりにいるのかを額面年収に置き換えて把握しておくと、こうした場面での思い込みのズレを防げます。

なお本記事の早見表は、手取り月額15万〜25万円台の若手・非正規層向けの試算(手取り15万〜25万円は年収いくらか)とあわせて確認すると、より細かい年収帯の対応が分かります。

下村 美乃莉
額面の数字だけで一喜一憂せず、手取りベースで家計を組み立てる。当たり前のようで、意外とできていない方が多い印象です。私自身も、新NISAの積立額を見直すたびに、この基本に立ち返っています。焦って金額を決めず、まず手取りの実態を確かめることを大切にしたいです。

※本記事は、編集部が国税庁・日本年金機構・全国健康保険協会が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

7. まとめ

  • 年間の手取り300万円は額面約378万円、500万円は約652万円、700万円は約960万円、1000万円は約1457万円が目安です。
  • 手取り率は年収が上がるほど下がり、手取り300万円台の約79%から、手取り1000万円台では約69%まで下がります。
  • 社会保険料は毎月の給与ではなく「標準報酬月額」という区分値で決まり、4〜6月の報酬平均で1年分が固定される「定時決定」という仕組みがあります。
  • 残業代など非固定的賃金の増減だけでは「随時改定」の対象にならず、年の途中で標準報酬月額を下げることはできません。

早見表は便利な目安ですが、実際の手取りは扶養家族の有無や賞与の配分、そして「いつ稼いだか」によって細かく変動します。

額面の数字を追いかけるだけでなく、給与明細に記載された標準報酬月額や控除額を、年に一度は自分の目で確認してみることをおすすめします。

8. よくある質問

8.1 Q. 手取り年収500万円は、額面でいくらになりますか?

A. 東京23区在住・40歳未満・独身・扶養家族なし・ボーナスなしという条件の編集部試算では、額面年収は約652万円です。扶養家族がいる場合や、住んでいる地域、年齢によって金額は変わります。詳しい内訳は本記事の早見表と図解セットを参照してください。

8.2 Q. ボーナス(賞与)がある場合、この早見表の額面年収は変わりますか?

A. 本記事の早見表は、賞与を含めず月給×12を年収とする前提です。賞与にも月給と同じ料率の社会保険料がかかるため、額面年収の合計が同じであれば、年間の手取り総額は賞与の有無で大きくは変わりません。ただし賞与額が極端に大きい場合は、賞与だけに設けられた社会保険料の上限(健康保険は年573万円まで等)が影響することがあります。

8.3 Q. 標準報酬月額は、いつ・どうやって見直されますか?

A. 原則として毎年4〜6月の報酬平均をもとに年1回「定時決定」で見直され、その年の9月から翌年8月まで適用されます。基本給の変動などで2等級以上の差が生じた場合は「随時改定」で年の途中でも見直されますが、残業代など非固定的賃金の変動だけでは対象になりません。心当たりがある方は、勤務先の管轄年金事務所に確認してみてください。

8.4 Q. この早見表は誰にでも当てはまりますか?

A. 東京23区在住・40歳未満・独身・扶養家族なし・ボーナスなしという条件の概算です。扶養家族がいる場合や40歳以上(介護保険料が加わります)、地域による国民健康保険料・住民税率の違いによって、実際の手取りは変わります。個人事業主や会社役員など、厚生年金・健康保険の適用条件が異なる働き方の方にも当てはまりません。

参考資料

LIMO編集部年収解説班