「重度訪問介護」という言葉を、通常の「訪問介護」と同じものだと思っていないでしょうか。名前は似ていますが、この2つはまったく別の制度に基づくサービスです。この違いを知らないまま家族の介護を検討すると、本来使えるはずの支援を見落としてしまうことがあります。

この記事では、介護保険サービスの基本を解説した記事より一部を引用・参照しつつ、重度訪問介護の対象者とサービス内容を、公的資料にもとづき編集部が整理します。

1. 重度訪問介護は「介護保険」ではなく「障害福祉サービス」

まず、重度訪問介護がどの制度に基づくサービスなのかを確認します。

1.1 根拠となる法律も、対象年齢の考え方も、通常の訪問介護とは別物

重度訪問介護は、介護保険制度の訪問介護とは異なり、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。厚生労働省の定義では、「重度の肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって常時介護を要するもの」を対象に、居宅における入浴・排せつ・食事等の介護、調理・洗濯・掃除等の家事、生活等に関する相談・助言、外出時の移動介護などを総合的に行うサービスとされています。

介護保険の訪問介護が原則65歳以上(特定疾病の場合は40歳以上)を対象とするのに対し、重度訪問介護は年齢にかかわらず、障害の状態と支援区分によって利用可否が判断される点が大きな違いです。

1.2 【重度訪問介護の基本情報】

前提:厚生労働省公式ホームページの公表情報に基づく編集部整理1/2

前提:厚生労働省公式ホームページの公表情報に基づく編集部整理

出所:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」を基にLIMO編集部作成

  • 根拠法:障害者総合支援法
  • 対象:障害支援区分4以上(身体障害基準または行動障害基準に該当)
  • サービス範囲:身体介護・家事援助・相談助言・外出時の移動介護を総合的に提供
齊藤 慧
「訪問介護」という名前だけで検索すると、介護保険の情報にたどり着きがちです。重度の障害があるご家族の支援を探している場合は、最初から「重度訪問介護」という制度そのものを軸に情報を探していく必要があります。

2. 【編集者の視点】

重度訪問介護は、身体介護・家事援助・外出時の移動介護を「総合的に」提供する点が、介護保険の訪問介護(身体介護と生活援助が明確に区分される)と大きく異なります。1回の訪問の中で、入浴介助から外出の付き添いまで連続して対応できる柔軟性が、長時間の見守りが必要な重度障害者の生活を支える基盤になっています。

3. 対象になるのは「障害支援区分4以上」で一定の基準を満たす人

次に、具体的な対象者の条件を確認します。

3.1 身体障害基準か、行動障害基準のいずれかに該当する必要がある

重度訪問介護の対象は、障害支援区分が区分4以上であり、かつ次のいずれかに該当する人です。1つ目は「身体障害基準」で、二肢以上に麻痺等があり、かつ「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれについても「支援が不要」以外と認定されていることです。2つ目は「行動障害基準」で、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上であることです。

年齢の上限はなく、原則18歳以上が対象ですが、15歳以上の障害児についても、児童相談所長が必要性を認めた場合には利用できます。

齊藤 慧
「身体障害基準」と「行動障害基準」という2つの入り口があることは、あまり知られていません。身体的な障害だけでなく、行動面の困難さで対象になるケースもあるという点は、ご家族にもぜひ知っておいてほしいところです。

4. 【編集者の視点】

実務上のポイントは、障害支援区分の認定を受ける段階で、この2つの基準のどちらに該当する可能性があるかを、市区町村の窓口や相談支援専門員に具体的に伝えることです。行動関連項目の点数は見落とされがちなため、日常生活での困難さを具体的に説明することが、適切な支援区分の認定につながります。

※本記事は、厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

5. 「行動援護」「同行援護」との違いも押さえておく

重度訪問介護と混同されやすい制度として、「行動援護」「同行援護」もあります。どちらも障害者総合支援法に基づく訪問系サービスですが、対象者と支援内容が異なります。

5.1 行動援護は知的・精神障害、同行援護は視覚障害が対象の中心

厚生労働省の定義によると、行動援護は、障害支援区分3以上であり、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上の人のうち、知的障害または精神障害により行動上著しい困難を有し、常時介護を要する人を対象に、危険を回避するための援護や外出時の移動介護を行うサービスです。一方、同行援護は、視覚障害により移動に著しい困難がある人を対象に、外出時に同行して移動に必要な情報を提供するサービスとされています。

重度訪問介護は、身体障害基準または行動障害基準のいずれかで対象になる点、また入浴・排せつ・食事等の介護から外出時の移動介護までを「総合的に」1つのサービスとして提供する点が特徴です。これに対し、行動援護・同行援護は、それぞれ特定の場面(危険回避、移動時の情報提供)に特化したサービスという違いがあります。

5.2 【重度訪問介護・行動援護・同行援護の対象者】

前提:厚生労働省公式ホームページの公表情報に基づく編集部整理2/2

前提:厚生労働省公式ホームページの公表情報に基づく編集部整理

出所:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」を基にLIMO編集部作成

  • 重度訪問介護:障害支援区分4以上(身体障害基準または行動障害基準に該当)
  • 行動援護:障害支援区分3以上・行動関連項目等の合計点数10点以上(知的・精神障害)
  • 同行援護:視覚障害により移動に著しい困難がある人

行動援護は、重度訪問介護の行動障害基準(合計点数10点以上)と条件が近いものの、障害支援区分の下限が3以上と重度訪問介護(4以上)より低く設定されています。区分4に届かない場合でも、行動援護であれば対象になる可能性があるため、どちらの制度が使えるかは、支援区分の認定結果を踏まえて個別に確認する必要があります。

齊藤 慧
似た名前のサービスが並んでいると、どれが自分の家族に当てはまるのか分かりにくいものです。「常時介護が必要か、特定の場面での支援か」という切り口で整理すると、選ぶべき制度が見えやすくなります。迷ったときは、相談支援専門員に一度まとめて聞いてみるとよいでしょう。

6. 【編集者の視点】

実務上、障害支援区分の認定を受ける段階で、どのサービスの対象になりそうかをあらかじめ相談支援専門員と共有しておくと、区分が決まった後の申請がスムーズになります。区分4に届かない場合でも、行動援護など別のサービスで支援が受けられる可能性がある点は、覚えておいて損はありません。

7. 入院中でも、条件を満たせば利用を継続できる

最後に、入院時の重度訪問介護の扱いを確認します。

7.1 障害支援区分6なら、入院後90日以内は継続利用が可能

平成30年度の制度改正により、障害支援区分6の人については、入院又は入所中の病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、助産所においても、重度訪問介護を利用できるようになりました。対象となるのは、看護師等とのコミュニケーション支援を要し、これが行われないと苦痛を感じるような特殊な体位交換や環境調整等を必要とする人です。

7.2 【入院中利用の期間ルール】

  • 入院・入所から90日以内:市町村の判断で利用可能
  • 90日超:市町村が支援の継続が必要と認めれば延長可能

1回の入院につき、少なくとも90日以内は市町村の判断で継続でき、それを超える場合も、支援の継続が必要と市町村が認めれば延長できる仕組みです。

病院内でヘルパーが提供できるのは、看護に該当しない「コミュニケーション支援」(体位交換の際の意思疎通のサポートなど)であり、医療的な看護行為そのものを代わりに行うわけではありません。この仕組みが病院側に十分理解されておらず、入院調整の際にトラブルになるケースもあるとされているため、入院が決まった段階で、病院側とケアマネジャー・相談支援専門員とで事前にすり合わせておくことが重要です。

7.3 「区分6なら自動的に使える」わけではない点に注意する

この入院中利用の仕組みは、障害支援区分6の人であれば無条件に対象になるわけではありません。厚生労働省の資料では、対象を「看護師等とのコミュニケーション支援を要し、これが行われないことにより苦痛を感じるような特殊な体位交換や環境調整等を必要とする者」のうち区分6の人に限るとされています。つまり、区分6であることに加えて、こうした特殊なコミュニケーション支援の必要性が個別に認められることが前提です。

この点は、家族の側から見ると「区分6なら自動的に使える」と誤解しやすい部分でもあります。実際に利用できるかどうかは、入院前の状態や、入院先の医療スタッフとの意思疎通の状況を踏まえて、市町村が個別に判断する仕組みになっています。

8. 介護保険と障害福祉サービスを併用できるケースもある

最後に、65歳以上で障害と要介護状態の両方を抱える人のケースを確認します。

8.1 原則は介護保険優先、ただし障害福祉固有のサービスは併用可能

障害者総合支援法第7条により、65歳になると、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、原則として介護保険サービスを優先して利用することになります。ただし、これは一律の運用ではなく、本人や家族の意見を聴取したうえで個別に判断されるものです。介護保険サービスだけでは十分な支援が受けられないと判断されれば、障害福祉サービスの利用が認められます。

重度訪問介護についても、介護保険の訪問介護の支給限度額の不足分や、支給対象とならない支援内容・時間が必要な場合は、介護保険と重度訪問介護を併用できるケースがあります。

厚生労働省が示す考え方では、行動援護や同行援護のように、介護保険に相当するサービスが存在しない障害福祉サービス固有のものについては、65歳以降も引き続き障害福祉サービスとして利用できます。介護保険優先原則は、あくまで介護保険に相当するサービスがある場合の話であり、すべての障害福祉サービスが一律に打ち切られるわけではありません。

「65歳になったら障害福祉サービスは全部使えなくなる」という誤解も見られますが、実際にはサービスの内容次第で継続利用の余地があります。65歳が近づいてきた場合は、早めに市区町村の障害福祉担当窓口に、介護保険移行後の支援の見通しを相談しておくことをおすすめします。

実務上は、65歳になる前の段階で、現在利用している障害福祉サービスのうち、介護保険に相当するサービスがあるものとないものを一覧で整理しておくと、窓口での相談がスムーズに進みます。相談支援専門員に依頼すれば、こうした整理を一緒に行ってもらえることが多いため、1人で抱え込まず早めに相談することをおすすめします。

齊藤 慧
65歳という年齢の壁で支援が急になくなるのではと不安に感じる人は多いはずです。実際には制度間の調整の仕組みがきちんとあるので、不安なまま抱え込まず、早めのタイミングで窓口へ相談することをおすすめします。相談の際は、現在利用しているサービス名を具体的に伝えると話がスムーズです。

9. まとめ

  • 重度訪問介護は、介護保険ではなく障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。
  • 対象は、障害支援区分4以上で、身体障害基準または行動障害基準のいずれかに該当する人です。
  • 障害支援区分6の人は、平成30年度の改正により、入院中でも一定条件のもとで利用を継続できます。
  • 入院中に利用できるのは看護に該当しないコミュニケーション支援であり、事前に病院側との調整が重要です。

重度訪問介護は、名前が似ている介護保険の訪問介護とはまったく別の制度です。対象者の基準や利用できる場面を正しく理解しておくことで、必要な支援を見落とさずに活用できます。

行動援護・同行援護といった近い制度との違い、入院中利用や65歳問題といった制度の切れ目にあたる場面のルールまであわせて把握しておくことで、家族の状況が変化したときにも慌てず対応しやすくなります。

具体的な利用条件や申請方法については、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員に確認することをおすすめします。

10. よくある質問

10.1 Q. 重度訪問介護と訪問介護は同じものですか。

A. 別のものです。重度訪問介護は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、訪問介護は介護保険制度に基づくサービスです。

10.2 Q. 重度訪問介護の対象者の条件は何ですか。

A. 障害支援区分4以上で、身体障害基準(二肢以上の麻痺等)または行動障害基準(行動関連項目の合計点数10点以上)のいずれかに該当する人です。

10.3 Q. 重度訪問介護は何歳から利用できますか。

A. 原則18歳以上ですが、15歳以上の障害児も、児童相談所長が必要性を認めた場合は利用できます。

10.4 Q. 入院中も重度訪問介護は利用できますか。

A. 障害支援区分6の人に限り、一定条件のもとで利用できます。1回の入院につき90日以内は市町村の判断で継続でき、それ以降も必要性が認められれば延長できます。

10.5 Q. 入院中にヘルパーができることは何ですか。

A. 看護に該当しない「コミュニケーション支援」(体位交換の際の意思疎通のサポート等)です。医療的な看護行為そのものは行いません。

10.6 Q. 重度訪問介護はどこに相談すればよいですか。

A. お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、または相談支援専門員に相談することをおすすめします。

10.7 Q. 行動援護・同行援護と重度訪問介護はどう違いますか。

A. 重度訪問介護は障害支援区分4以上で入浴・排せつ・食事等の介護から外出時の移動介護までを総合的に提供する制度です。行動援護は区分3以上の知的・精神障害がある人の危険回避や移動介護、同行援護は視覚障害がある人の外出時の情報提供に特化した制度で、対象者と支援内容が異なります。

10.8 Q. 65歳になると重度訪問介護は使えなくなりますか。

A. 一律に使えなくなるわけではありません。介護保険に相当するサービスがない障害福祉サービス固有のものは、65歳以降も継続して利用できます。介護保険サービスだけでは支援が不十分な場合は、上乗せで障害福祉サービスを利用できる場合もあります。

参考資料

齊藤 慧