「デイサービスは週に何回まで利用できますか」。介護保険サービスを検討し始めた人からよく聞かれる質問です。しかし、実は「週◯回まで」「月◯回まで」という直接的な回数制限は、制度上どこにも規定されていません。では、実際の利用回数は何によって決まっているのでしょうか。
この記事では、デイサービスの仕組みと料金の基本を解説した記事より一部を引用・参照しつつ、デイサービスの利用回数が実質的に何によって決まるのかを、公的資料にもとづき編集部が整理します。
1. 「回数の上限」ではなく「金額の上限」で管理されている
まず、デイサービスの利用回数がどのような仕組みで制限されているのかを確認します。
1.1 介護保険制度に「週◯回まで」という規定は存在しない
介護保険サービスの利用回数について、法令上「デイサービスは週に◯回まで」といった直接的な回数制限は定められていません。実際に利用回数を左右しているのは、要介護度ごとに定められた「区分支給限度基準額」という、1か月あたりに介護保険から給付される金額(単位数)の上限です。
この限度額の範囲内であれば、デイサービスに限らず、訪問介護や短期入所など複数のサービスを自由に組み合わせて利用できます。
限度額を超えて利用した分は、介護保険が適用されず全額自己負担になります。つまり「回数の上限」ではなく「使える金額の上限」が、結果として利用できる回数を決めている、という構造です。
1.2 【要介護度別・区分支給限度基準額】
- 要支援1:5032単位
- 要支援2:1万531単位
- 要介護1:1万6765単位
- 要介護2:1万9705単位
- 要介護3:2万7048単位
- 要介護4:3万938単位
- 要介護5:3万6217単位
2. 【編集者の視点】
この仕組みのため、デイサービス以外のサービス(訪問介護や福祉用具のレンタルなど)を併用している人ほど、デイサービスに使える限度額の余りは少なくなります。「デイサービスを増やしたいのに限度額が足りない」というケースは、他のサービスとの兼ね合いで起きていることが多く、ケアプラン全体でのバランス調整が必要になります。
3. 編集部試算:デイサービスだけに限度額を使い切った場合の回数
では、区分支給限度基準額の全額をデイサービスだけに使った場合、理論上何回利用できるのでしょうか。
3.1 通所介護1回(7時間以上8時間未満)は658〜1148単位
厚生労働省の告示によると、通常規模型の通所介護費(所要時間7時間以上8時間未満)は、要介護1で658単位、要介護2で777単位、要介護3で900単位、要介護4で1023単位、要介護5で1148単位です。この1回あたりの単位数で、区分支給限度基準額を割ると、理論上の最大利用回数が試算できます。
要介護1では16765単位÷658単位でおよそ月25回、要介護3では27048単位÷900単位でおよそ月30回、要介護5では36217単位÷1148単位でおよそ月31回という計算になります。これはあくまで「デイサービスだけに限度額の全額を使った場合」の理論上の最大値であり、実際には他のサービスも組み合わせて利用するため、この回数をそのまま使い切る人は多くありません。
3.2 【デイサービスのみに限度額を使った場合の理論上の回数】
前提:区分支給限度基準額÷通常規模型通所介護費(7時間以上8時間未満)の編集部試算2/2
出所:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」、堺市「要介護度別・区分支給限度基準額」を基にLIMO編集部が試算
- 要介護1:658単位/回 → 約25回
- 要介護3:900単位/回 → 約30回
- 要介護5:1148単位/回 → 約31回
4. 【編集者の視点】
実務上重要なのは、この試算はあくまで「上限」であり、実際に必要な利用回数は本人の心身の状態や家族の介護力によって大きく異なるという点です。限度額いっぱいまで使うことが目的化してしまうと、かえって過剰なサービス利用につながることもあります。ケアマネジャーと相談しながら、必要な分だけを組み合わせることが基本です。
※本記事は、編集部が厚生労働省・堺市が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
5. 要支援の場合は「回数」ベースの区分になっている
ここまで要介護1〜5を中心に確認してきましたが、要支援の場合は少し仕組みが異なります。
5.1 介護予防通所サービスは「月単位の定額」で提供される地域が多い
要支援1・2の人が利用する「介護予防通所サービス」は、市区町村が実施する「総合事業」の枠組みで提供されることが多く、その場合の料金体系は、要介護1〜5のような「1回ごとの単位数の積み上げ」ではなく、「月額の定額制」になっているケースが一般的です。
この場合、利用回数を増やしても1回あたりの追加費用が発生しない代わりに、そもそも月に利用できる回数の上限が、サービス提供事業所ごとに設定されていることがあります。
「要支援だから回数の考え方が同じはず」と思い込まず、要支援の場合は、利用している事業所や市区町村の総合事業の内容を個別に確認する必要があります。
6. 住宅改修費・福祉用具購入費は、区分支給限度基準額とは別枠
デイサービスの限度額を考える際、あわせて誤解されやすいのが、住宅改修や福祉用具購入の費用との関係です。
6.1 手すりの取付けなどの住宅改修費は、要介護度にかかわらず定額20万円
厚生労働省の通知(老企第42号)によると、居宅介護住宅改修費の支給限度基準額は、要介護状態区分にかかわらず定額20万円と定められています。これは、デイサービスや訪問介護などに使う区分支給限度基準額とは別枠で管理される仕組みです。つまり、デイサービスの利用回数を増やして区分支給限度基準額を使い切っていても、手すりの取付けや段差の解消といった住宅改修は、別途20万円まで利用できます。
同様に、腰掛便座や入浴補助用具などの特定福祉用具の購入費も、要介護度にかかわらず年度あたり10万円が上限とされており、こちらも区分支給限度基準額とは別枠です。「限度額を使い切ったから、もう何も利用できない」と思い込む必要はありません。
6.2 【区分支給限度基準額と別枠になっている費用】
- 住宅改修費:要介護度にかかわらず定額20万円
- 特定福祉用具購入費:要介護度にかかわらず年度あたり10万円
なお、住宅改修費については、要介護状態区分が変更されても支給限度額がリセットされるわけではなく、以前に支給された額を20万円から差し引いた残額が上限になります。ただし、介護の必要の程度が著しく高くなった場合(要介護等状態区分の段階が3段階以上上がった場合)は、1回に限り改めて20万円までの支給を受けられる特例もあります。
7. 【編集者の視点】
実務上、住宅改修は工事着工前の事前申請が必須です。先に工事を進めてしまうと、原則として保険給付を受けられなくなるため、必ずケアマネジャーや市区町村の窓口に事前相談してから着工することが重要です。
8. 利用時間が短いプランを選べば、回数はさらに増やせる
最後に、利用時間の設定によって回数がどう変わるかを確認します。
8.1 短時間のデイサービスなら、1回あたりの単位数はさらに低くなる
今回試算した658〜1148単位は、7時間以上8時間未満という比較的長い利用時間の単位数です。3時間以上4時間未満といった短時間のデイサービス(機能訓練特化型など)を選べば、1回あたりの単位数はこれより低くなり、同じ限度額でもさらに多くの回数を利用できる計算になります。
逆にいえば、頻度を増やしたいという要望に対して、担当者から時間の短いプランへの変更を提案されることもあります。「短時間だと物足りないのでは」と感じる場合は、その回数分を確保する目的が、リハビリなどの機能訓練にあるのか、それとも家族の介護負担を軽減する時間の確保にあるのかを整理して伝えると、ケアマネジャーもプランを組みやすくなります。
長時間しっかり過ごしたいのか、短時間でも頻度を増やしたいのかによって、選ぶべきプランは変わります。この点もケアマネジャーに相談しながら、家庭の状況に合わせて調整することをおすすめします。
9. 限度額いっぱいまで使うことが目的にならないよう注意する
最後に、限度額の使い方について、実務上気をつけたい視点を整理します。
9.1 「使わないともったいない」という発想が、過剰なサービス利用につながることもある
区分支給限度基準額は、あくまで「介護保険から給付される上限」であり、必ず使い切らなければならない金額ではありません。「せっかくの枠なのだから、使い切らないともったいない」という発想で回数を増やしてしまうと、本人の負担が増えるだけでなく、実際には必要のないサービス利用につながることもあります。
大切なのは、限度額の範囲内でどれだけ使うかではなく、本人の心身の状態や家族の介護力に合わせて、必要な分だけを組み合わせることです。ケアマネジャーは、こうしたバランスを踏まえてケアプランを提案してくれる専門家なので、遠慮せずに希望や不安を伝えることをおすすめします。
9.2 限度額を超えた分は「全額自己負担」であって「サービスが使えなくなる」わけではない
もう1点、誤解されがちなのが「限度額を超えたら、それ以上サービスを利用できなくなる」という思い込みです。実際には、限度額を超えて利用すること自体は可能で、超えた部分が介護保険の給付対象外になり、全額自己負担になるという仕組みです。
例えば、要介護1の人が限度額を超えてデイサービスを追加で利用したい場合、その追加分の利用料を全額自分で支払えば、サービス自体は継続して利用できます。「限度額=利用できる回数の絶対的な上限」ではなく、「限度額=介護保険が負担してくれる範囲の上限」と捉え直すと、実際の使い方の選択肢が見えやすくなります。
ただし、全額自己負担での利用は家計への影響が大きいため、まずは限度額の範囲内で必要なサービスを組み合わせることを基本とし、それでも足りない場合の選択肢として、全額自己負担での利用や、要介護度の見直し(区分変更申請)を検討する、という順序で考えるのが現実的です。
10. まとめ
- デイサービスの利用回数そのものに、制度上の直接的な上限は定められていません。
- 実質的な上限を決めているのは、要介護度ごとの区分支給限度基準額(1か月あたりの金額の上限)です。
- デイサービスだけに限度額を使い切った場合、理論上の利用可能回数は要介護1で約25回、要介護5で約31回です。
- 実際の利用回数は、他のサービスとの組み合わせや利用時間の長さによって変わります。
「デイサービスは週に何回まで」という疑問の答えは、区分支給限度基準額という金額の枠組みの中にあります。回数だけを気にするのではなく、限度額全体をどう配分するかという視点で考えることが、無理のないケアプランづくりにつながります。
デイサービス単体の回数だけでなく、住宅改修や福祉用具といった別枠の制度もあわせて把握しておくことで、限られた予算の中でも、より柔軟に必要な支援を組み合わせられるようになります。
具体的な利用回数やケアプランの組み方については、担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。
11. よくある質問
11.1 Q. デイサービスは週に何回まで利用できますか。
A. 制度上、回数そのものの上限は定められていません。要介護度ごとの区分支給限度基準額(金額の上限)の範囲内であれば、複数回利用できます。
11.2 Q. 限度額を超えて利用するとどうなりますか。
A. 超えた分は介護保険が適用されず、全額自己負担になります。
11.3 Q. デイサービスだけに限度額をすべて使うと、何回利用できますか。
A. 理論上の試算では、要介護1で約25回、要介護3で約30回、要介護5で約31回です。ただし、これは他のサービスを一切使わない場合の上限であり、実際にはこの回数をそのまま使い切る人は多くありません。
11.4 Q. 短時間のデイサービスを選ぶと、回数を増やせますか。
A. 増やせます。利用時間が短いプランほど1回あたりの単位数が低くなるため、同じ限度額でもより多くの回数を利用できる計算になります。
11.5 Q. 他のサービスと併用すると、デイサービスの利用回数は減りますか。
A. 減る可能性があります。訪問介護や福祉用具のレンタルなど他のサービスも同じ限度額の枠内で利用するため、併用が多いほどデイサービスに使える限度額の余りは少なくなります。
11.6 Q. 利用回数を増やしたい場合、どうすればよいですか。
A. 要介護度の見直し(区分変更申請)や、利用時間の短いプランへの変更、他サービスとのバランス調整など、いくつかの方法があります。担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。
11.7 Q. デイサービスの限度額を使い切ったら、住宅改修や福祉用具も利用できなくなりますか。
A. なりません。住宅改修費(定額20万円)や特定福祉用具購入費(年度あたり10万円)は、デイサービスなどに使う区分支給限度基準額とは別枠で管理されています。
参考資料
齊藤 慧
