スーパーで買い物をするたびに、「また値上がりしている」とため息をつく方は多いのではないでしょうか。
帝国データバンクの調査によると、2026年9月に値上げが判明した食品は単月で4923品目にのぼり、前年同月のおよそ3倍に急増しました。食料の消費者物価指数も2025年度は前年度比5.8%の上昇と、2年続けて大きく伸びています。
それでも、同じように値上げの影響を受けているはずなのに、「今月は貯蓄ペースを守れた」という月と、「気づけば貯蓄用の口座から取り崩していた」という月がある方も少なくないでしょう。
この記事では、総務省「家計調査」のデータをもとに、貯蓄ペースを守れる家計と守れない家計を分けている「食費の重み」の違いを整理します。
1. 家計調査で見る「食費の重み」と貯蓄ペースの関係
総務省「家計調査報告(家計収支編)」2026年(令和8年)7月分によると、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり30万1245円(前年同月比:実質3.6%の減少、名目1.5%の減少)でした。
このうち食料費は9万5681円(前年同月比:実質1.3%の減少、名目2.2%の増加)で、消費支出に占める食料費の割合を示す「エンゲル係数」は31.7%となっています。
- 消費支出(二人以上の世帯):30万1245円(前年同月比 実質3.6%減、名目1.5%減)
- 食料費:9万5681円(前年同月比 実質1.3%減、名目2.2%増)
- エンゲル係数:31.7%
- 黒字率(勤労者世帯):30.1%
- 平均消費性向(勤労者世帯):58.2%
食料費が実質では減っているのに名目では増えている、という数字のねじれは、値上げの分だけ財布から出ていくお金が増えている一方で、買う量・内容そのものは切り詰められていることを示しています。
背景には、食料の物価上昇が続いていることがあります。総務省統計局「消費者物価指数(全国)」の年度平均でみると、食料の指数は2024年度(令和6年度)が前年度比5.0%の上昇、2025年度(令和7年度)が前年度比5.8%の上昇と、2年続けて大きく伸びました。
食費が家計の中で相対的に重くなっているこの局面で、貯蓄ペースを守れる世帯と守れない世帯の分かれ目はどこにあるのでしょうか。
2. 年収が高い世帯ほど食費の負担は軽いのか?
総務省「家計調査(家計収支編)」の詳細結果表には、世帯を年間収入で5つの階級(五分位階級)に分けて集計した統計表があります(用途分類 表2「年間収入五分位・十分位階級別」)。
2024年(令和6年)のデータでは、年間収入がおよそ262万円台の第Ⅰ階級(最も収入が低い層)のエンゲル係数は33.1%だったのに対し、年間収入がおよそ1242万円台の第Ⅴ階級(最も収入が高い層)は25.0%でした。その差は8.1ポイントです。
2.1 実際の食費はどれくらい違う?
消費支出そのものは、第Ⅰ階級が月額およそ18万7000円、第Ⅴ階級がおよそ49万7000円と、2.66倍の開きがあります。
これをエンゲル係数で計算し直すと、食料費は第Ⅰ階級がおよそ6万1900円、第Ⅴ階級がおよそ12万4300円です。金額そのものは第Ⅴ階級の方が2倍ほど多いものの、家計全体に占める食費の「重さ」は第Ⅰ階級の方が明らかに大きいことが分かります。
食費のような生活に欠かせない支出は、収入が少ない世帯ほど切り詰めにくく、値上げの影響をそのまま受け止めざるを得ない側面があります。
外食費だけを見ても、第Ⅰ階級と第Ⅴ階級では5倍前後の開きがあるとの分析もあり、収入によって「削れる食費」と「削れない食費」の内訳自体が違うことがうかがえます。
3. 筆者からのコメント
「エンゲル係数が高い」と聞くと、単に外食や贅沢な食事が多いというイメージを持つ方が少なくありません。
しかし実際には、エンゲル係数は「収入や消費支出全体のうち、食費がどれだけの割合を占めているか」を示す指標です。値上げが続く局面でこの割合が高いということは、それだけ食費という「削りにくい支出」に家計の自由度を奪われやすいことを意味します。
総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)」2025年(令和7年)平均結果(表Ⅲ-2-1「年間収入五分位階級、貯蓄・負債の種類別貯蓄・負債現在高」)を見ると、年間収入が最も低い第Ⅰ階級の貯蓄現在高は1552万円、最も高い第Ⅴ階級は2878万円と、ストックの面でもすでに差がついています。
フロー(毎月の黒字率)とストック(貯蓄現在高)は必ずしも同じ動きをするとは限りませんが、値上げが続く局面では、もともと家計に占める食費の重みが大きい世帯ほど、貯蓄に回す余地を削られやすい構造にあると考えられます。
