3. 高額療養費制度の払い戻しを受けるには申請が必要?

従来まで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えるためには、事前の申請により「限度額適用認定証」の交付を受ける必要がありました。

しかし、2021年10月からは、マイナ保険証を提示して情報提供に同意した場合、医療機関に限度額の情報が共有されるようになりました。これにより、手続きなしで窓口での支払いを限度額までに抑えられます。

ただし、同一月に複数の医療機関を利用して自己負担限度額を超える場合など、別途申請が必要となるケースもあるため注意しましょう。

また、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、地域によって高額療養費の初回利用時のみ申請が必要な場合もあります。

該当者には診療月から3〜4か月後を目安に申請書が届くため、必要事項を記入して返送しましょう。

4. 【元銀行員のアドバイス】入院時の医療費は「高額療養費の対象外」となる費用まで含めて考える

高額療養費制度を利用すれば、70歳以上で一般的な年金収入の場合、毎月の医療費は6万1500円、年間では53万円までに抑えられることが分かりました。

しかし、「高額療養費制度があるから万が一のときの入院費用も安心」と考えるのは早計です。

高額療養費制度の対象となるのは、保険適用分の医療費における自己負担額です。

つまり、入院時の食事代や個室を選択した場合の差額ベッド代、タオルやパジャマのレンタル費用などは高額療養費制度の対象外であり、全額を自己負担する必要があります。

そのため、医療費について考える際は、高額療養費の対象外となる費用まで含めて計算しなければなりません。

たとえば、一般的な年金収入を受け取る高齢者が、1日〜末日までの30日間入院して個室を利用した場合、以下の費用は全額自己負担になります。

  • 入院時の食事代:1食550円×3食×30日間=4万9500円
  • 個室の差額ベッド代(1日7000円と仮定):7000円×30日間=21万円
  • 合計:25万9500円

このケースでは、高額療養費制度を利用して1か月の医療費の自己負担額が約6万円に抑えられたとしても、食事代や差額ベッド代を合わせると約32万円もの出費につながります。

想定外の費用負担に戸惑うことがないよう、月ごとの自己負担限度額とあわせて「高額療養費の対象とならない費用」についても確認しておきましょう。

5. まとめにかえて

2026年8月からの高額療養費制度の見直しにより、自己負担限度額が段階的に引き上げられます。これにより、医療費の負担が大きくなる人も少なくないでしょう。

一方で、新たに年間上限が設けられているため、継続的に高額な医療費がかかる場合でも年間の医療費は上限額までに抑えられます。

まずはご自身の収入から、当てはまる負担区分を確認しておきましょう。

また、入院時には食事代や差額ベッド代など、高額療養費制度の対象外となる費用も発生します。

医療費の備えについて考える際は、こうした自己負担分までを含めて準備しておく意識が大切です。

参考資料

池田 夕華