「年金だけで、この先も体をいたわる出費は続けられるだろうか」。退職後の生活で、こうした不安を抱く方は少なくありません。

総務省統計局の家計調査(2025年)によると、無職世帯が「健康保持用摂取品」、いわゆるサプリメントに使う金額は月平均1534円で、年代別では70歳代前半(70~74歳)が1637円ともっとも高くなっています。

一方、令和8年度は年金額が国民年金1.9%、厚生年金2.0%引き上げられましたが、モデル年金の増加分は月4495円にとどまり、健康維持費の伸びにそのまま直結するとは限りません。

本記事では、家計調査のデータをもとに、無職世帯のサプリメント代の年代別の実態と、令和8年度の年金額改定の中身を具体的な数字で確認していきます。

1. そもそも「健康保持用摂取品」とは?家計調査でみるサプリメントの位置づけ

「健康保持用摂取品」とは、総務省統計局の家計調査の収支項目分類において、栄養成分の補給など保健・健康増進のために用いる食品であって、錠剤、カプセル、顆粒状、粉末状、粒状、液(エキス)状など、通常の医薬品に類似する形態をとるものと定義されている費目です。

一般に「サプリメント」「健康食品」と呼ばれるものの多くがこの分類に含まれ、風邪薬や胃腸薬といった「医薬品」とは家計調査上、別の費目として集計されています。

この記事で扱う数字は、総務省統計局「家計調査 家計収支編」の2025年(令和7年)平均、二人以上の世帯のうち無職世帯(世帯主の平均年齢75.6歳、年金受給世帯が中心)の「世帯主の年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出」(第3-2表)によるものです。

2. 無職世帯のサプリメント代は月1637円がピーク?年代別にみる家計調査の実態

無職世帯全体の健康保持用摂取品への支出は月平均1534円です。世帯主の年齢階級別にみると、次のようになっています。

無職世帯の健康保持用摂取品(サプリメント)への支出額(年代別、1世帯当たり1か月間)1/2

無職世帯の健康保持用摂取品への支出額(年代別、1世帯当たり1か月間)

出所:総務省統計局「家計調査 家計収支編」詳細結果表(2025年)をもとにLIMO編集部作成

  • ~59歳:772円
  • 60~64歳:974円
  • 65~69歳:1486円
  • 70~74歳:1637円
  • 75~79歳:1452円
  • 80~84歳:1669円
  • 85歳~:1679円

もっとも高いのは70歳代前半(70~74歳)の1637円で、この年代の無職世帯が受け取る公的年金給付は月22万3590円です。つまり70歳代前半の無職世帯は、公的年金給付のおよそ0.7%にあたる金額を健康保持用摂取品に充てている計算になります。

2.1 ピークは70歳代前半。75歳前後でいったん減るのはなぜ?

年代が上がるほど右肩上がりに増えていくわけではない点にも注目したいところです。70歳代前半の1637円から、75~79歳ではいったん1452円まで下がり、80~84歳で1669円、85歳以上で1679円と、再び上向く動きになっています。

体調や生活環境の変化によって摂取品にかける優先順位が変わることに加え、年代が上がるほど集計対象となる世帯の数自体が変わることも影響していると考えられます。実際、この調査で70~74歳は565世帯、75~79歳は694世帯が集計対象になっており、平均額の背後にはさまざまな世帯の事情が混ざっていることも念頭に置いておきたい部分です。

3. 筆者からのコメント

熊谷 良子

「サプリメント代は年齢とともに右肩上がりに増えていく」と考えている方は多いのではないでしょうか。

実際には、無職世帯のデータを見ると、70歳代前半の1637円をピークに、75歳代でいったん1452円まで下がり、80歳代以降に再び増加するという、単純な右肩上がりとは違う動きを見せています。

この傾向は無職世帯に限った話ではありません。同じ家計調査の二人以上の世帯全体でみても、70~74歳の1634円から75~79歳では1568円へといったん下がり、80歳代以降に再び上向く、よく似た形になっています。年金の有無にかかわらず、70歳代後半で摂取品への支出がひと息つく世帯が一定数あると考えられます。

背景には体調や生活環境の変化に加えて、年代ごとの集計世帯数の違いも関係していそうです。平均額だけを見て「この年代はサプリメントへの関心が薄れる」などと決めつけず、あくまで一つの目安として捉えるのがよいでしょう。