新NISAについて調べていると、「やめとけ」「大損」「暴落」という言葉が目についてしまい、始めるのをためらってしまう方は少なくありません。すでに口座を開設した方でも、相場が下がった局面で不安になり、売却すべきか悩むこともあるでしょう。

この記事では、「新NISAはデメリットしかない」と言われる背景にある事実を、金融庁や日本証券業協会が公表する一次資料の数字で確認します。感情的な「怖さ」ではなく、実際に何が起きたのか、何が制度上のリスクで何が誤解なのかを、順を追って整理します。

なお、新NISA制度の基礎知識に関する詳しい説明は、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション
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1. 「新NISAはデメリットしかない」と言われる理由をおさらい

「新NISA デメリットしかない」「新NISA やめとけ」といった検索が目立つ背景には、いくつかの具体的な制度上の注意点があります。まずは基本を確認しましょう。

1.1 元本割れリスクと、損益通算・繰越控除ができない仕組み

新NISAで購入する投資信託や上場株式は、預金と異なり元本が保証されていません。相場が値下がりすれば、非課税であっても資産の評価額そのものが減ります。

さらに、NISA口座で生じた損失は、特定口座や一般口座で保有する株式等の利益と相殺する損益通算ができません。この損失を翌年以降に繰り越す繰越控除も適用されない仕組みです。

その上場株式等を売却したことにより生じた損失について、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等やその上場株式等を売却したことにより生じた譲渡益との損益通算や、繰越控除をすることはできません

出典:国税庁タックスアンサー「No.1535 NISA制度」

特定口座であれば、その年の損失を翌年以降3年間、利益と相殺して税負担を減らせます。NISAにはこの仕組みがないため、「損をしたときの逃げ道が少ない」と感じる人が多いのは事実です。

また、どこまでリスクを取れるかは年齢やライフステージによっても変わります(高齢者・50代・40代のデメリットと戦略で詳しく解説しています)。

下村 美乃莉
私自身も最初から大きな金額を投じていたわけではなく、まずは月2万円の少額積立からスタートしました。値動きが気になる時期もありましたが、金額を抑えていたことで淡々と続けられたように思います。今振り返ると、金額を小さく始めたこと自体が、続けるための工夫だったのだと感じています。

2. 金融庁データで検証する「本当にみんな大損しているのか」

「暴落」という言葉は誇張ではありません。新NISAが始まった2024年、実際に大きな値動きがあったことは公的資料に記録されています。まずその事実を確認します。

2.1 史上最高値からひと月足らずで、過去最大の下げ幅を記録

日本証券業協会がまとめた年表によると、日経平均株価は2024年2月22日に終値で当時の史上最高値(3万9098円、約34年2か月ぶりの更新)を付けました。

その後7月11日には終値で史上最高値(4万2224円)を記録しましたが、8月5日には終値ベースで前日比4451円安という、史上最大の下げ幅を記録しています。

2024年8月 ・日経平均株価(終値)が史上最大の下げ幅を記録(8月5日:前日比4451円安)

出典:日本証券業協会「新NISA白書2024」

新NISAを始めて半年ほどのタイミングでこの下落を経験した人にとって、「暴落」という言葉が誇張ではなかったことがわかります。

2.2 それでも「約7割」がプラスだったという事実

この値動きを経て、実際に投資信託を保有する人の運用損益はどうなったのでしょうか。金融庁が毎年公表する「共通KPI」で確認できます。

共通KPIとは、各金融機関が投資信託を保有する顧客の運用損益を集計し、金融庁の要請に基づいて共通の基準で公表している指標です。金融機関ごとの実績を横並びで比較できる数少ない公的データの一つです。

2024年3月末時点では、運用損益がプラスの顧客の割合は全業態平均で91.7%でした。ところが2025年3月末時点では71.8%まで下がっています。

編集部で計算すると、この1年でプラスの顧客の割合は19.9ポイント下がった計算になります。個人が主に利用する証券会社に絞ると、89.2%から69.8%へ、19.4ポイントの低下でした。

下がったことは事実ですが、裏を返せば約7割の人は依然として含み益の状態にあるということでもあります。「大損した人が大半」という状況ではありません。

投資信託の運用損益プラス顧客割合の変化1/2

投資信託の運用損益プラス顧客割合の変化

出所:金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析(2025年3月末基準)」などを基にLIMO編集部作成

2.3 【運用損益がプラスの顧客割合】

2024年3月末時点

  • 全業態平均:91.7%
  • 証券会社:89.2%
  • 主要行等:89.7%

2025年3月末時点

  • 全業態平均:71.8%(19.9ポイント低下)
  • 証券会社:69.8%(19.4ポイント低下)
  • 主要行等:77.8%(11.9ポイント低下)

3. 【編集者の視点】

ここで見落としやすいのが、「同じ主要行等」という括りの中でも成績にはかなりの差があるという点です。金融庁の資料では、運用損益がプラスの顧客の割合が最も高い主要行で92.3%、最も低い主要行では56.8%と、35.5ポイントの開きがありました。

この差を生む主な要因は、保有している商品の種類とコストです。同じ「NISA口座を持っている」という状態でも、何を買ったか、いつ買い始めたかによって結果は大きく変わります。

「新NISAで大損する」という漠然とした不安を持つより、自分が保有している商品の運用損益率を、証券会社のマイページなどで実際に確認してみることが最初の一歩になります。

具体的には、商品ごとの評価損益・取得単価を確認し、積み立てているのがインデックス型の投資信託か、値動きの大きい個別株かを整理するとよいでしょう。値動きの大きい商品ほど、短期的な評価損益の振れ幅も大きくなります。

運用損益がマイナスであっても、それは売って損失が確定した状態ではなく、あくまで評価上の含み損です。慌てて売却する前に、次の章で触れる非課税保有期間の仕組みを踏まえて判断することをおすすめします。

下村 美乃莉
同じ制度を使っていても、金融機関や商品によって結果に35ポイントもの差が出ている数字を見ると、少し驚きました。裏を返せば、自分の選び方次第で変えられる部分がまだ残っているということでもあります。漠然と怖がるより、自分の中身を見直すきっかけにできればと思います。

4. 「損益通算できない」の意味を正しく理解する

NISA口座の弱点としてよく挙げられる「損益通算ができない」という制度ですが、実は新NISAには、この弱点の重さを和らげる別の変更点があります。

4.1 含み損と「損失の確定」は違う

損益通算ができないのは、あくまで売却して損失が確定した場合の話です。値下がりしている商品を売らずに保有し続けている間は、税務上の損失は発生していません。

暴落の報道やSNSの投稿を見て慌てて売却すると、含み損を確定損に変えてしまいます。売らなければ、その後の値上がりで評価損が縮小・解消する可能性も残ります。

4.2 旧NISAにあった「期限」が、新NISAでは無くなった

2023年までの一般NISAは非課税保有期間が5年間、つみたてNISAは20年間という期限がありました。期限が近づくと、含み損の状態でも売却や課税口座への移し替えを迫られる場面がありました。

2024年以降の新NISAでは、この非課税保有期間が無期限化されています。

一般NISA及びつみたてNISAでは、購入した上場株式・投資信託等を非課税で保有できる期間が、一般NISAでは5年、つみたてNISAでは20年までに制限されていた。2024年以降は一度購入した上場株式・投資信託等は無期限に非課税で保有できるようになった

出典:日本証券業協会「新NISA白書2024」

つまり、暴落局面で「〇年以内に結論を出さなければならない」という期限のプレッシャーそのものが、制度上は無くなったということです。損益通算ができない弱点は残る一方、待つという選択肢の自由度は広がっています。

旧NISAと新NISAの非課税保有期間の違い2/2

旧NISAと新NISAの非課税保有期間の違い

出所:日本証券業協会「新NISA白書2024」を基にLIMO編集部作成

4.3 【非課税保有期間の比較】

2023年までの旧制度

  • 一般NISA:非課税保有期間5年間、年間投資枠120万円
  • つみたてNISA:非課税保有期間20年間、年間投資枠40万円

2024年以降の新NISA

  • つみたて投資枠・成長投資枠とも非課税保有期間は無期限
  • 年間投資枠は合計360万円(つみたて120万円+成長240万円)
下村 美乃莉
かつては期限があると聞くだけで身構えてしまいそうですが、無期限になったと知ると少し肩の力が抜ける気がします。値動きに一喜一憂しすぎない距離感を保てるのは、私自身の積立を続けるうえでもありがたい部分です。長く付き合っていく制度だからこそ、こうした余白は心強く感じます。

5. 【編集者の視点】

非課税保有期間が無期限になったとはいえ、「だから何もしなくていい」というわけではありません。ここで整理しておきたいのが、年間投資枠の使い方に関する制約です。

NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円と決まっており、その年に使わなかった枠を翌年に繰り越すことはできません。慌てて売却して非課税枠を空けても、その枠を同じ年のうちに再び使うことはできない点には注意が必要です(非課税枠が翌年以降にどう戻るかは非課税枠の復活ルール(年末売却・翌年復活)で詳しく解説しています)。

暴落時にやってはいけないのは、値下がりに焦って売却し、非課税で保有できる資産を意図せず減らしてしまうことです。生活費に充てる予定がないお金であれば、無期限という制度を生かして保有を続ける選択肢を検討する価値があります。

判断に迷う場合は、自分の家計の中で「今後数年使う予定のないお金」がどれだけあるかを、家計簿や口座の残高で確認してから考えるとよいでしょう。証券会社によっては、保有商品の長期の値動きを確認できるツールも用意されています。

6. 「大損したなら口座数は減るはず」は本当か

暴落が話題になった年の後、NISAの利用実態はどう変わったのでしょうか。金融庁が定期的に公表する調査結果から確認します。

6.1 2024年末から2025年末で、口座数・買付額はむしろ増えた

金融庁の調査によると、NISA口座数は2024年12月末の2559万口座から、2025年12月末には2821万口座に増えています。

NISAの累計買付額も、2024年12月末の53兆円から2025年12月末には71兆円まで伸びています。編集部で計算すると、1年間で約34%の増加です。

「大損したから新NISAをやめる人が続出している」という状況であれば、口座数や買付額の伸びは鈍化するはずです。しかし数字の上では、伸びは続いています。

この伸びの中には、暴落を経験したあとに新しく口座を開設した人も含まれています。「暴落が怖いから始めない」ではなく、暴落を実際に見たうえで始める人が一定数いるということでもあります。

下村 美乃莉
口座数が増え続けていると聞くと、「みんな平気なんだ」と単純に考えてしまいそうになりますが、それも早合点だと思います。増え続ける数字の裏で、実際に不安を感じながら向き合っている方が大勢いることも、忘れずにいたいと思います。統計の外側にいる一人ひとりの事情まで、想像力を働かせたいところです。

※本記事は、編集部が金融庁・日本証券業協会が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

7. 【編集者の視点】

口座数や買付額が伸びているからといって、一人ひとりの家計にとって「今のペースが適切か」は別の問題です。全体の数字と、自分自身の状況は分けて考える必要があります。

実務でよくある罠は、暴落のニュースを見て積立の設定そのものを止めてしまうことです。積立を止めると、その分の非課税枠は翌年に繰り越せず、その年のうちに使い切れなくなります。

防衛策としては、暴落時こそ「積立額を変えるかどうか」と「保有している資産を売るかどうか」を分けて考えることです。生活防衛資金が確保できているなら、積立自体は淡々と続け、売却の判断は急がないという整理が基本になります。

どうしても積立額を見直したい場合は、いきなり停止するのではなく、無理のない金額まで減額するという選択肢もあります。減額であれば、非課税枠を使い切れなくても、翌年以降も同じペースで積立を続けやすくなります。

迷ったときは、契約している証券会社や銀行の窓口、あるいは金融庁のNISA特設サイトなど公的な情報源で、制度の仕組みを確認してから判断することをおすすめします。

8. まとめ

  • 2024年3月末から2025年3月末にかけて、投資信託の運用損益がプラスの顧客の割合は91.7%から71.8%へ低下しましたが、依然として約7割はプラスです。
  • NISA口座の損失は損益通算・繰越控除の対象外ですが、非課税保有期間が無期限化されたことで、暴落時に期限を理由に売却を迫られることはなくなりました。
  • 2024年末から2025年末にかけて、NISAの口座数・累計買付額はいずれも増加を続けています。

「新NISAはデメリットしかない」という言葉は、制度の一部だけを切り取った表現です。実際のデータを見ると、値動きの大きさと、非課税で保有し続けられる自由度の両方が同時に存在していることがわかります。

不安に感じたときほど、感覚的な「大損」のイメージだけで判断せず、自分が保有している商品の評価損益と、生活費に影響しない範囲で投資できているかを、まず確認してみてください。

9. よくある質問

9.1 Q. 新NISAは本当にデメリットしかないですか?

A. 元本割れリスクや損益通算ができない点はデメリットとして事実ですが、非課税保有期間が無期限化されているなど、旧NISAより制約が緩和された部分もあります。デメリットだけを切り取った評価とは言えません。

9.2 Q. 暴落したらすぐに売った方がいいですか?

A. 売却するかどうかは、値下がりした商品を今後も保有し続けられるか、生活費に影響が出ないかによって判断が分かれます。値下がりは売らない限り確定した損失にはなりません。

9.3 Q. 新NISAで大損した人はどれくらいいますか?

A. 金融庁の調査では、投資信託を保有する顧客のうち運用損益がプラスの人の割合は2025年3月末時点で71.8%でした。マイナスの人が一定数いるのは事実ですが、大半が大損しているという状況ではありません。

9.4 Q. 元本割れが怖い場合はどうすればいいですか?

A. 生活費や近い将来使う予定のあるお金を投資に回さないことが基本です。余裕資金の範囲で、値動きの特徴を理解した商品を選ぶことが、不安を減らす一歩になります。

9.5 Q. 積立を続けるだけの余裕がないときはどうすればいいですか?

A. 家計が苦しいときに無理に積立を継続する必要はありません。積立額を減らす、または一時的に停止するという選択肢もあります。まずは生活費を優先し、余裕ができた範囲で再開することを検討してください。

参考資料

LIMO編集部NISA解説班