5. 元証券会社勤務のFPからのアドバイス|10月の振込を見たらやること
秋に「年金が減った」と相談を受けたとき、まず確認していたのは通帳ではなく、市区町村から届く通知でした。順番を間違えると、原因にたどり着けません。
5.1 通帳より先に、6月から7月に届いた通知を探す
保険料の決定通知や住民税の納税通知書は、初夏に自宅へ届きます。10月からの天引き額は、そこに書かれた年額をもとに決まります。
通帳の数字だけを見ていると、なぜ変わったのかが分かりません。通知を手元に置いて、年額から仮徴収分を引き、3で割る。実際に引かれている額と合っていれば、制度どおりの動きです。合わなければ問い合わせる価値があります。
5.2 減った人こそ、理由を確かめる
天引きが減ったときは、素直に喜べる場合とそうでない場合があります。
前年の所得が下がったために保険料や住民税が下がったのなら、それは収入減の結果です。手取りが増えたように見えても、家計全体は縮んでいます。
一時的な収入があった翌年に天引きが増え、その次の年に戻る、という動きもよくあります。増減の理由を1回確かめておくと、翌年以降は通知を見ただけで見当がつくようになります。
5.3 「額面で老後設計を組んでいないか」を点検する
ねんきん定期便やねんきんネットに表示されるのは、あくまでも「額面」です。ここまで見てきたとおり、平均的な受給額でも1割近くが引かれます。
生活費を月15万円と見込んでいたなら、実際に使えるのは13万円台。20年で計算すれば350万円ほどの差になります。
老後資金の取り崩し計画を立てるときは、手取りベースに直してからにしましょう。
6. まとめ
10月に年金の手取りが動くのは、仮徴収から本徴収に切り替わるためです。4月から8月までは前年度と同じ額を仮に引いておき、10月からの3回で1年分のつじつまを合わせます。
2026年度は後期高齢者医療保険料が全国平均で年6935円上がりました。その差が10月からの3回に寄るため、1回あたりでは2312円ほど増える計算になります。
平均に近い月15万円で試算すると、手元に残るのは13万5465円ほど。所得税はかからず、引かれているのは社会保険料と住民税です。
年金の天引き額は、本人が何もしなくても毎年動くので、動いたときに理由が分かる状態にしておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
- 厚生労働省「保険料(税)の特別徴収 ~図解資料~」
- 厚生労働省「介護保険、国民健康保険及び後期高齢者医療制度における保険料(税)の特別徴収関係資料」
- 厚生労働省「第9期計画期間における介護保険の第1号保険料について」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金からの介護保険料、国民健康保険料(税)、後期高齢者医療保険料、住民税および森林環境税の特別徴収」
- 日本年金機構「年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
- 国税庁「高齢者と税(年金と税)」
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
加藤 聖人
