3. 遺族厚生年金の受給権があると老齢年金を繰り下げられない

65歳前後でもう1つ影響するのが、繰下げ受給の扱いです。

3.1 66歳到達日以前に権利があると繰下げできない

日本年金機構によると、原則として66歳に到達した日以前に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、老齢年金を繰り下げて受給することができません。

ただし65歳に到達する前に遺族年金等を受け取る権利を失権していた場合は、老齢年金を繰り下げて受給することができます。

3.2 待機期間中に権利ができると増額率が固定される

66歳に到達した日後の繰下げ待機期間中に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、その時点で増額率が固定されます。

老齢年金の請求の手続きを遅らせても、増額率はそれ以上増えません。

4. 令和7年の法律改正で繰下げの取り扱いが変わる

この繰下げの扱いについては、改正が決まっています。

4.1 対象は昭和38年4月2日以降生まれの方

日本年金機構によると、令和7年の法律改正により、令和10年3月31日時点において遺族厚生年金を受け取る権利を有しており、かつ65歳に到達していない方(昭和38年4月2日以降生まれ)が対象になります。

4.2 老齢厚生年金と老齢基礎年金で扱いが分かれる

老齢厚生年金は、遺族厚生年金の請求を行っていない場合に限り、繰下げ請求することができるようになります。

老齢基礎年金は、遺族厚生年金の請求の有無にかかわらず、繰下げ請求することができるようになります。2つで条件が違いますので、どちらの話なのかを分けて確認しておきたいところです。

5. 月報の平均額を自分の見込額と重ねるときの見方

月報の平均月額8万6780円は、全国の受給者を集計した数値です。自分の場合を考えるときの見方を挙げておきます。

5.1 平均額には65歳未満の方も含まれている

月報の平均額は年齢で分けられていません。65歳未満で支給停止のない方も、65歳以上で老齢厚生年金に相当する額が停止されている方も、まとめて集計されています。

65歳以上の方が実際に受け取る遺族厚生年金は、この平均額より少なくなることがあります。老齢厚生年金と合わせた総額で見ておくのが実態に近い見方です。

5.2 支給額の決定には老齢厚生年金の裁定請求が必要

日本年金機構は、遺族厚生年金の受給権者が老齢厚生年金・退職共済年金または遺族共済年金を受ける権利を有するときは、遺族厚生年金の支給額の決定のため、これらの年金の裁定の請求が必要であるとしています。

遺族厚生年金の側だけを請求しても額が決まりません。自分の年金の請求手続きもあわせて必要になりますので、年金事務所で手順を確認しておきましょう。

6. 65歳からは老齢厚生年金が全額、遺族厚生年金は差額になる

2026年8月31日に公表された厚生年金保険・国民年金事業月報の令和8年4月分では、厚生年金保険(第1号)の遺族年金の平均月額は8万6780円でした。

65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金の両方に権利がある方は、老齢厚生年金が全額支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。年金額は「報酬比例部分の4分の3」と「報酬比例部分の2分の1に自身の老齢厚生年金の2分の1を合算した額」を比べて高い方になります。

また66歳に到達した日以前に遺族年金等を受け取る権利を有した場合は、原則として老齢年金を繰り下げられません。令和7年の法律改正で扱いが変わりますので、生まれた年もあわせて確認しておきましょう。

参考資料

村岸 理美