実家の車、車検や税金がかさむのはわかっていても、なかなか手放す決心がつかない――そんな方は多いのではないでしょうか。
総務省統計局「家計調査(家計収支編)2025年」の実データによると、70〜84歳の無職世帯(二人以上)は、年金収入だけでは平均して月3万円前後の赤字が生じており、15年間では約598万円にのぼります。
そのうち半分以上を占めるのが自動車関連費です。お彼岸や年末年始に実家へ帰省した際、車を運転する親の姿を見て、このまま車を持たせ続けていいのか、あらためて考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、家計調査など公的統計の実データだけをもとに、高齢無職世帯の赤字の「正体」と自動車関連費が家計に占める重み、そして車や住まいの選択を考えるうえで確認しておきたいポイントを整理します。
※本記事で紹介する数値は、総務省統計局「家計調査」や金融経済教育推進機構(J-FLEC)などの公的統計にもとづく平均値・中央値です。実際の支出額や資産額は、地域・世帯構成・車の使用状況などによって世帯ごとに異なります。
1. 高齢無職世帯の家計は実際どれくらい赤字?「70〜84歳」のリアルな数字
総務省統計局「家計調査(家計収支編)2025年 第3-2表」(二人以上の世帯のうち無職世帯、世帯主の年齢階級別)によると、世帯の収入から支出を差し引いた「黒字(収支差)」は、年齢とともに次のように推移しています。
- 70〜74歳:月3.72万円の赤字(年換算44.7万円)
- 75〜79歳:月3.34万円の赤字(年換算40.1万円)
- 80〜84歳:月2.90万円の赤字(年換算34.7万円)
これを70歳から84歳までの15年間で通算すると、平均的な無職世帯は合計約598万円を貯蓄から取り崩している計算になります。
年金収入だけでは足りず、毎月赤字が出ているのが、高齢無職世帯のリアルな実態です。
2. 自動車関連費。年齢とともにどう減っていく?
自動車関連費(購入費・維持費・ガソリン代・保険料・車検整備費などの合計)についても見てみましょう。
「家計調査 第3-2表」から自動車関連費だけを取り出すと、加齢とともに次のように減っていきます。
- 70〜74歳:月2.30万円(年換算27.6万円)
- 75〜79歳:月1.79万円(年換算21.5万円)
- 80〜84歳:月1.33万円(年換算16.0万円)
15年間を通算すると、自動車関連費の合計は約326万円です。
金額が年齢とともに下がっていく背景には、加齢に伴って運転をやめる世帯が増えていくことがあると考えられます。運転をやめる世帯が一定数存在することが、自動車関連費の全国平均を年齢とともに押し下げる一因になっていると見られます。
ここで注意したいのは、326万円という数字が「途中で運転をやめる世帯」と「乗り続ける世帯」が混在した全国平均だという点です。
最後まで車に乗り続ける予定の世帯にとっては、実際の負担はこの平均より重くなる可能性がありますが、家計調査の公表データだけでは、乗り続けた場合の金額を切り分けて示すことはできません。「平均だから自分にも当てはまる」と考えず、あくまで目安として捉える必要があります。
3. 筆者からのコメント
ここまで自動車関連費の数字を見てきましたが、車は単なる支出項目ではありません。現役で運転を続けることに、生きがいや生活のはりを感じているシニアの方も少なくないはずです。
また、公共交通機関や商店が近くにない地域では、「できれば運転を続けたい」というより「運転せざるを得ない」という事情を抱えている方もいらっしゃいます。手放す・手放さないは、コストだけでは決められない問題です。
私事ですが、後期高齢シニアの叔父が「駅まで車で迎えに行くよ」と言ってくれたとき、「危ないから」とやんわり断ったことがあります。あのときは、少し心が痛みました。あの世代、とりわけ男性にとって、車は生活の一部として長く根づいてきたものなのだと感じたからです。
本文の数字は、あくまで判断材料のひとつです。費用と安全面への配慮、そしてご本人にとって運転が持つ意味の両方を踏まえて、ご家族で話し合っていただければと思います。
