総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、ひと月の消費支出が26万3979円と示されています。夏の終わりから秋にかけては、冷房を使った月の光熱費や、季節の変わり目にかかった医療費が手元の明細に残る時期でもあり、毎月の支出を振り返る材料がそろいやすいタイミングにあたります。

60歳代から70歳代にかけては、働いて得る収入が細り、家計の土台が年金に移っていきます。そうなると関心は「いくら入るか」から「何にいくら出ていくか」へと動いていきますが、支出をひとまとめの金額として見ているうちは、どこに手をつけられるのかが見えにくいままです。この記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額、厚生年金と国民年金の平均年金月額、そして65歳以上の夫婦のみの無職世帯のひと月の家計収支を順に確認します。そのうえで、消費支出26万3979円を構成する10の費目を、毎月ほぼ動かない支出と使い方で変わる支出のふたつに分け、それぞれいくら・何%になるのかを独自に試算します。

橋本 優理
相談の場では、「支出を見直したいけれど、どこから手をつけたらよいのか分からない」というお話をよくうかがいます。支出は総額で見ると大きなかたまりに見えますが、中身は性格の違うものが混ざっています。まずは統計の数字を順に確かめながら、その中身の分かれ方を見ていきます。

なお、70歳代の貯蓄・年金・家計に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!
【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!

1. 70歳代・二人以上世帯の貯蓄|平均2416万円・中央値1178万円という手元の備え

支出の中身に入る前に、その支出を支える側の数字を確かめておきます。70歳代の貯蓄・年金・家計の全体像は「【70代の貯蓄・年金・家計のリアル】老後赤字を加速させないためには?投資に頼らない防衛策を徹底解説!」でも整理されており、ここではそのうち貯蓄の部分から見ていきます。

使うのは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」です。

※金融資産保有額には、預貯金のほかに株式・投資信託・生命保険なども含まれます。日常的な出し入れや引落しに備えている普通預金の残高は含まれません。

この中には値動きのあるものが含まれるため、評価額は時期によって上下します。価格変動リスクがあり、受け取れる額が投じた額を下回る元本割れとなる場合もあるという点は、貯蓄額の数字を見るときに前提として置いておきたいところです。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)1/4

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

1.1 2416万円と1178万円、成り立ちの違うふたつの数字

70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円です。平均は、大きな金額を持つ世帯があるとその分だけ上に引き上げられる性質を持つため、この2416万円も資産の多い一部の世帯によって押し上げられている面があり、多くの世帯の暮らしぶりとは離れている可能性があります。

もうひとつの中央値は1178万円です。世帯を貯蓄額の少ない順に並べたときにちょうど真ん中に来る世帯の金額を指し、飛び抜けた金額があっても順番が変わるだけなので影響を受けにくく、実態に近い水準として扱われることが多い数字です。

1.2 12区分の分布から見える、世帯ごとの開き

世帯ごとの貯蓄額の分布は次のとおりです。

  • 金融資産非保有:10.9%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:3.7%
  • 300~400万円未満:3.9%
  • 400~500万円未満:2.9%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:11.1%
  • 1500~2000万円未満:6.7%
  • 2000~3000万円未満:12.3%
  • 3000万円以上:25.2%
  • 無回答:0.6%

3000万円以上を保有する世帯が25.2%にのぼる一方、金融資産を保有していない世帯も10.9%あります。中間の層では、1000万〜1500万円未満が11.1%、2000万〜3000万円未満が12.3%と厚みがあり、100万円未満の4.5%、100万〜200万円未満の5.1%、200万〜300万円未満の3.7%といった層も並んでいます。

この開きは、退職金の有無、現役時代の収入の履歴、相続、健康状態といった事情の積み重なりによって生まれるものです。公的年金の受給額も現役時代の加入状況によって変わるため、同じ年代であっても手元に残っている額は世帯ごとに異なります。

橋本 優理
貯蓄の額そのものは、これまでの積み重ねの結果として決まっている部分が大きく、今日から動かせるものではありません。これに対して支出のほうは、月ごとに形が変わる部分を含んでいます。だからこそ、支出の中身がどう分かれているかを知っておくと、手をつけられる範囲がはっきりします。

2. 毎月の収入の柱になる厚生年金|平均年金月額15万289円と階級別の人数

次に、家計に入ってくる側の数字を確かめます。厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の平均年金月額を見ていきます。

厚生年金の平均年金月額と月額階級別の受給権者数2/4

厚生年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の被保険者は第1号から第4号に区分されています。ここで扱うのは、民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額で、以下、記事内では「厚生年金」と表記します。

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には、国民年金の月額部分も含まれています。

2.1 厚生年金の平均年金月額|全体15万289円と男女の開き

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

全体では15万289円、男性は16万9967円、女性は11万1413円という水準です。厚生年金には現役時代の給与水準と加入期間が反映されるため、働き方の違いがそのまま受け取る額の違いとして残ります。

2.2 月額階級別受給権者|金額の幅を人数で見る

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

人数がまとまっているのは10万円台から19万円台にかけての階級ですが、1万円に満たない階級から30万円以上の階級まで、受け取る額は幅広く分かれています。全体の平均である15万289円は、その幅の中の一点にすぎません。

橋本 優理
年金として入ってくる額は、毎月ほぼ同じ金額で続きます。入る側が動きにくいぶん、家計の見直しでは出ていく側の中身を見ることになりますが、その出ていく側にも、入る側と同じように動きにくい部分が含まれています。ここを分けておくことが、後半の話につながります。

3. 国民年金の受け取り|平均年金月額5万9310円と、夫婦二人分で見た合計

厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る、国民年金(老齢基礎年金)の月額も見ておきます。

国民年金の平均年金月額と月額階級別の受給権者数3/4

国民年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

3.1 国民年金の平均年金月額|全体5万9310円と、男女差の小ささ

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

全体で5万9310円、男性が6万1595円、女性が5万7582円です。国民年金は保険料を納めた期間の長さで額が決まる仕組みのため、給与水準が反映される厚生年金と比べると、男女の間の差は小さくとどまっています。

3.2 国民年金の月額階級別受給権者|人数の集まる場所

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

6万円以上〜7万円未満の階級に1715万5059人が集まっており、他の階級とは人数の桁が違います。国民年金には満額の水準が定められているため、厚生年金のように広く散らばる形にはなりません。

3.3 夫婦二人分に置き換えたときの年金月額22万7549円

夫が厚生年金の男性平均月額を、妻が国民年金の女性平均月額を受け取る世帯で考えると、ふたり分を合わせた年金は月額22万7549円という計算になります。

この月額22万7549円という水準に対して、暮らしにかかる支出はどれくらいの規模になるのか。次の章で、実際の家計収支と並べて見ていきます。

橋本 優理
ここで示した22万7549円は、平均どうしを足し合わせた組み合わせのひとつです。世帯としての年金額は、おふたりの働き方の組み合わせによって変わりますので、ご自身の世帯の額は年金の通知書で確かめていただくのがよいかと思います。

4. 【65歳以上・夫婦のみの無職世帯】消費支出26万3979円の中身を10の費目で見る

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の平均的な家計収支を確かめます。

4.1 ひと月の収入25万4395円と、その内側にある社会保障給付

ひと月の収入は25万4395円で、そのうち主に年金にあたる社会保障給付が22万8614円です。収入のほとんどが公的年金でできている家計、という姿がここに表れています。

4.2 消費支出26万3979円|10の費目に分かれた内訳

支出の総額は29万6829円です。このうち、日々の暮らしにかかる消費支出は26万3979円で、費目ごとの内訳は次のとおりです。

  • 食料:7万8964円
  • 住居:1万7739円
  • 光熱・水道:2万3540円
  • 家具・家事用品:1万1237円
  • 被服及び履物:5354円
  • 保健医療:1万7941円
  • 交通・通信:3万1325円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万6538円
  • その他の消費支出:5万1341円
    • うち諸雑費:2万2047円
    • うち交際費:2万3257円
    • うち仕送り金:1135円

いちばん大きいのは食料の7万8964円で、次いでその他の消費支出が5万1341円、交通・通信が3万1325円と続きます。その他の消費支出の内側には諸雑費2万2047円、交際費2万3257円、仕送り金1135円が含まれており、これらは独立した費目ではなく、その他の消費支出という枠の中の内訳にあたります。教育が0円となっているのは、子どもが独立している世帯像を前提にした平均だからです。

4.3 非消費支出3万2850円|直接税と社会保険料の内訳

支出のもうひとつの部分が、税金や社会保険料にあたる非消費支出で、こちらは3万2850円です。

  • 直接税:1万2547円
  • 社会保険料:2万296円

直接税が1万2547円、社会保険料が2万296円という内訳です。これらは自分で金額を決められる部分ではなく、収入や制度上の区分に応じて決まってきます。

4.4 ひと月の家計収支|4万2434円の不足とエンゲル係数29.9%

  • ひと月の赤字:4万2434円
  • エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
  • 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%

収入25万4395円に対して支出は29万6829円ですから、ひと月あたり4万2434円が不足する形になっています。この不足分は貯蓄を取り崩して補うことになり、年間に直すとおよそ51万円の取り崩しが必要という計算です。

エンゲル係数の29.9%は、消費支出26万3979円に占める食料7万8964円の割合を示しています。消費支出のおよそ3割が食にあてられていることになり、費目の中でも重みのある位置にあることが分かります。

75歳を過ぎたあとの家計の実態は、【75歳以上】夫婦の生活費・年金の実態!後期高齢者医療制度の負担割合と高額療養費制度の活用法で確認できます。

橋本 優理
10の費目が並んだ表を見ていただくと、金額の大小には目がいくのですが、性格の違いまでは見えにくいものです。同じ1万円でも、住まいや健康の状況で決まっている1万円と、その月の過ごし方で決まった1万円とでは、扱い方が変わってきます。

5. 支出は「動かしにくいもの」と「選べるもの」に分かれている|線をどこで引くか

消費支出26万3979円という数字は、ひとつの金額として示されています。ただ、その中身を10の費目に分けて見ると、性格の異なるものが混ざっていることが分かります。

ひとつは、住まいの形や健康の状況、契約の内容によっておおよそ決まっている支出です。住居費は持ち家か賃貸か、住宅ローンが残っているかどうかで決まります。光熱・水道費は住まいの広さや設備、地域や季節の影響を受けます。保健医療費は通院の必要があるかどうかで決まります。通信費は契約の内容に沿って毎月同じ額が引き落とされていきます。これらは、その月の気分や心がけで大きく上下する種類のものではありません。

もうひとつは、量や頻度、時期の選び方によって月ごとに差が出やすい支出です。食料は、外で食べるか家でつくるか、何を買うかで幅が出ます。被服及び履物は買う月と買わない月があります。教養娯楽は出かける回数や趣味の内容で変わります。家具・家事用品も、買い替えの時期を選べる部分があります。

5.1 「動かしにくい」は「削れない」という意味ではない

ここで気をつけておきたいのは、動かしにくい支出を、削れない支出と読み替えないことです。動かしにくいというのは、住まいや健康、契約といった暮らしの条件によって額が決まる部分が大きい、という意味にとどまります。

実際、住まいを変えたり、契約の中身を確かめたりすれば、額が変わることはあります。反対に、健康の状況が変われば保健医療費は増えることもあり、そちらの方向にも動きます。つまり、動かしにくい支出は「変わらない」のではなく、「月々の使い方とは別のところで決まっている」というのが実際のところです。

選べる支出のほうも同じです。選べるというのは、削るべきという意味ではありません。教養娯楽や交際にあたる支出は、暮らしの張り合いや人とのつながりを支えている部分でもあります。金額の上下があるという性質を指しているだけで、優先度が低いという評価ではありません。

5.2 線の引き方は一通りではない

そして、どの費目をどちらに入れるかには、決まった正解があるわけではありません。食料は、生きていくうえで欠かせないという意味では動かしにくい支出ですが、買い方や食べ方で幅が出るという意味では選べる支出でもあります。交通・通信も、通信の契約は毎月ほぼ一定である一方、外出にかかる交通費は出かけ方で変わります。

だからこそ、この分け方を使うときには、自分がどの基準で線を引いたのかを先に決めておくことになります。基準を決めておけば、あとから見直したときにも、どこを動かしたのかが分かります。次の章では、実際にひとつの基準で線を引いてみて、それぞれがいくら・何%になるのかを計算します。

橋本 優理
相談の場では、支出を分けてみるところまで進んだあとに、「では自分の家計の場合はどうなっているのか」という段に入っていきます。統計の平均で分け方の形をつかんでおくと、手元の通帳や明細に同じ線を引くときに迷いが少なくなります。次のページでは、その手前でつまずきやすい点について、よくいただくお尋ねをもとにお話しします。

6. 【独自試算】消費支出26万3979円の10費目を、毎月ほぼ動かない支出と使い方で変わる支出に分けるといくら・何%か

前の章で見た分け方を、実際の数字にあてはめてみます。使うのは、65歳以上・夫婦のみの無職世帯のひと月の消費支出26万3979円と、その10の費目です。

前提は次のとおりです。この試算は、記事で扱った数字だけを使った足し算と割り算であり、特定の世帯の家計を示すものではありません。

  • 対象は、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の消費支出26万3979円とする
  • 数えるのは10の費目(食料・住居・光熱・水道・家具・家事用品・被服及び履物・保健医療・交通・通信・教育・教養娯楽・その他の消費支出)のみとする。諸雑費・交際費・仕送り金は「その他の消費支出」の内訳にあたるため、10費目とは別に数えない
  • 「毎月ほぼ動かない支出」は、住まいの形・健康の状況・契約の内容によって額の大半が決まり、その月の使い方では大きく上下しにくいものとする
  • 「使い方で変わる支出」は、買う量・出かける頻度・買い替える時期の選び方によって、月ごとに差が出やすいものとする
  • 割合はいずれも消費支出26万3979円を分母とし、小数第2位を四捨五入する。割り切れないものには「約」を付ける
  • 非消費支出3万2850円(直接税・社会保険料)は消費支出に含まれないため、この試算では扱わない
  • この数字は世帯の平均であり、費目ごとの金額は住まいの形や健康の状況によって世帯ごとに変わる

まず、10費目の合計が消費支出の額と合っているかを確かめます。

  • 7万8964円 + 1万7739円 + 2万3540円 + 1万1237円 + 5354円 + 1万7941円 + 3万1325円 + 0円 + 2万6538円 + 5万1341円 = 26万3979円

消費支出26万3979円と一致しました。この10費目を、上の基準で2つに分けます。

【1】毎月ほぼ動かない支出

  • 住居:1万7739円(持ち家か賃貸か、住宅ローンが残っているかで決まる)
  • 光熱・水道:2万3540円(住まいの広さ・設備・地域・季節で決まる基礎的な部分が大きい)
  • 保健医療:1万7941円(通院や服薬の必要があるかどうかで決まる)
  • 交通・通信:3万1325円(通信の契約が毎月一定の額として続く部分を重く見た)
  • 合計:1万7739円 + 2万3540円 + 1万7941円 + 3万1325円 = 9万545円
  • 消費支出に占める割合:9万545円 ÷ 26万3979円 = 約34.3%

【2】使い方で変わる支出

  • 食料:7万8964円(外で食べるか家でつくるか、何を買うかで幅が出る)
  • 家具・家事用品:1万1237円(買い替える時期を選べる部分がある)
  • 被服及び履物:5354円(買う月と買わない月がある)
  • 教育:0円(この世帯像では計上がないため、どちらに入れても合計は変わらない)
  • 教養娯楽:2万6538円(出かける回数や趣味の内容で変わる)
  • その他の消費支出:5万1341円(内訳の交際費2万3257円・諸雑費2万2047円は付き合い方や暮らし方で幅が出る。ただし仕送り金1135円のように約束のある支出も含む)
  • 合計:7万8964円 + 1万1237円 + 5354円 + 0円 + 2万6538円 + 5万1341円 = 17万3434円
  • 消費支出に占める割合:17万3434円 ÷ 26万3979円 = 約65.7%

検算として、2つの合計を足し戻します。9万545円 + 17万3434円 = 26万3979円で、消費支出の額と一致します。割合も約34.3% + 約65.7% = 100.0%となり、こちらも合っています。金額の差は、17万3434円 − 9万545円 = 8万2889円です。

参考までに、10費目それぞれが消費支出26万3979円に占める割合も出しておきます。

  • 食料:7万8964円(約29.9%)
  • その他の消費支出:5万1341円(約19.4%)
  • 交通・通信:3万1325円(約11.9%)
  • 教養娯楽:2万6538円(約10.1%)
  • 光熱・水道:2万3540円(約8.9%)
  • 保健医療:1万7941円(約6.8%)
  • 住居:1万7739円(約6.7%)
  • 家具・家事用品:1万1237円(約4.3%)
  • 被服及び履物:5354円(約2.0%)
  • 教育:0円(0.0%)

食料の約29.9%は、下敷きの家計収支に示されているエンゲル係数29.9%とも一致しました。

ここからが、この試算でいちばん申し上げておきたいところです。どの費目をどちらに入れるかを変えると、結果は大きく動きます。同じ26万3979円を分けているのに、線の位置が変わるだけで見え方が変わります。

  • 食料7万8964円を「毎月ほぼ動かない支出」の側に移した場合:動かない側は 9万545円 + 7万8964円 = 16万9509円(約64.2%)、使い方で変わる側は 17万3434円 − 7万8964円 = 9万4470円(約35.8%)となり、2つの割合が入れ替わる
  • 交通・通信3万1325円を「使い方で変わる支出」の側に移した場合:動かない側は 9万545円 − 3万1325円 = 5万9220円(約22.4%)、使い方で変わる側は 17万3434円 + 3万1325円 = 20万4759円(約77.6%)となる

つまり、同じ消費支出26万3979円でも、動かない側は約22.4%から約64.2%までの幅で動きます。この試算で示した約34.3%という数字は、上に書いた基準で線を引いたときの結果であって、唯一の答えではありません。

それを踏まえたうえで、この計算から読み取れることを3つに整理しておきます。

  • この基準で線を引くと、消費支出26万3979円のうち約34.3%にあたる9万545円が、住まいや健康、契約の状況によっておおよそ決まっている部分にあたる
  • 残る約65.7%の17万3434円には月ごとの幅があるが、そのうち食料7万8964円が約29.9%を占めており、幅があるといっても中身は暮らしの土台に近いものが多い
  • 食料を動かない側に移すだけで割合は約64.2%まで上がる。分けた結果そのものより、どういう基準で分けたのかを添えて見ることに意味がある

この試算は、どの費目を減らすべきかを示すものではありません。動かない側に入れた住居・光熱・水道・保健医療・交通・通信は、住まいの形や健康の状況、契約の内容といった、月々の心がけとは別のところで額が決まっている部分が大きい費目です。同じように、使い方で変わる側に入れた費目も、削るべき対象という意味ではなく、月ごとに額が動きやすいという性質を示しているにすぎません。

また、ここで使った金額はいずれも世帯の平均です。持ち家か賃貸か、通院の頻度がどれくらいか、家族との行き来がどれくらいあるかによって、費目ごとの金額は世帯ごとに変わります。物価の変動や、医療や介護でまとまった費用がかかる場面も、この計算には含めていません。※税や社会保険料の取り扱い、医療費の負担割合といった制度に関わる部分は改正されることがあるため、最新の内容は市区町村の窓口や年金事務所など、所管の窓口でご確認ください。

7. 【監修者コメント・村岸理美】消費支出をどう分けるかで、見直せる部分の見え方が変わる

村岸 理美
この試算で並んでいるのは、消費支出26万3979円を一定の基準で二つに分けると、9万545円(約34.3%)と17万3434円(約65.7%)になる、という関係です。あわせて示されているとおり、食料7万8964円をどちらに入れるかだけで、動かない側は約34.3%にも約64.2%にもなります。数字そのものより、この振れ幅のほうが家計を見るうえでは示唆に富むかもしれません。家計の中身を確かめる入り口には、いくつかの道があります。直近の数カ月の明細を並べて、毎月ほぼ同じ額が出ている項目に印を付けてみる。印の付いた項目について、その額がどこで決まっているのか(住まいの契約なのか、通信の契約なのか、通院の頻度なのか)を書き添えてみる。印の付かなかった項目については、月ごとにどれくらい幅があるかを見ておく。どこから始めても構いませんし、一度にすべてを済ませる必要もありません。ひとつ添えておくと、毎月ほぼ動かない側に入る支出は、額が固定されているというより、暮らしの条件のほうが固定されている、という見方ができます。ですから、その額を下げることを目的にするより、条件が変わるとき(住み替え、通院の頻度の変化、契約の更新など)に確かめる項目として持っておくほうが、無理のない扱い方になるという考え方もあります。医療費の負担割合や高額療養費制度、税や社会保険料の取り扱いは制度の改正によって変わることがありますので、最新の内容は市区町村の窓口など所管の窓口でご確認いただき、ご自身の家計にあてはめるときの判断は、個別の事情を含めてご相談いただければと思います。