2. 暮らしを守る「税金と控除」の基本とは
制度の改正点を理解するうえで、そもそも控除がどのような仕組みなのかを知っておくと安心です。給与収入から納税額が決まるまでの流れは、大きく以下のようになります。
- 給与総額から給与所得控除を引いて「所得」を計算する
- 所得から所得控除を引いて「課税される所得」を出す
- 課税される所得に税率をかけて「所得税額」を出す
- 所得税額から税額控除を引いて「最終的な納税額」が決まる
ここで大切なのは、所得控除と税額控除は差し引かれるタイミングがまったく違うということです。
2.1 所得控除
税率をかける前の金額を減らす制度です。基礎控除、扶養控除、生命保険料控除などが該当します。控除された金額に税率をかけた分だけ、税金が安くなります。今回の改正で要件が緩和された扶養控除などもこちらに含まれます。専門用語で合計所得金額といった言葉が出てきますが、これは各種の所得(利益)を合計した金額のことです。
2.2 税額控除
計算された税金そのものから、直接金額を差し引く制度です。住宅ローン控除などが該当します。税金から丸ごと差し引かれるため、一般的に節税効果が高くなります。同じ金額の控除であっても、所得控除よりも税額控除のほうが、実際に安くなる税金の額は大きくなる傾向があります。
3. 現役FPが解説「5つのライフイベント別」今のうちに見直したい主な控除
税金の負担を減らす制度は、ライフステージによって使えるものが変わります。いざという時に慌てないよう、代表的なものを押さえておきましょう。
3.1 結婚や出産
配偶者の収入に応じた配偶者控除や配偶者特別控除があります。また、出産や通院で医療費が一定額を超えた場合に使える医療費控除も覚えておきたい制度です。
3.2 住宅の購入
大きな節税効果がある住宅ローン控除は、税額控除の代表格です。今回の改正で適用期限が延長されたため、これからマイホームを検討する方にも朗報です。
3.3 子育てや教育
16歳以上のお子さまがいる場合の扶養控除や、先ほど紹介した大学生年代向けの特定親族特別控除などがあります。ひとり親控除の金額も35万円から38万円に引き上げられました。
3.4 病気やけが
医療費控除にくわえ、税金ではありませんが高額療養費制度や傷病手当金など、社会保険側の給付制度も家計の助けになります。
3.5 老後の備え
個人型確定拠出年金(iDeCo)への掛金は全額が所得控除の対象となり、将来の年金づくりと現在の節税を両立できます。2027年1月からは新NISAのつみたて投資枠も年齢下限が撤廃され0歳から利用可能になり、活用の幅が広がることが予想されます。
このほか、生命保険料控除や、ふるさと納税(寄附金控除)は、ライフステージを問わず活用できる身近な制度です。とくに23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除は、令和9年分まで適用限度額が引き上げられています。
4. まとめにかえて
今回は、9月の今のうちから押さえておきたい令和8年の年末調整の改正ポイントと、税金や控除の基本的な仕組みについて解説しました。
基礎控除の引き上げや新しい年収の壁の拡大など、私たちの手取り収入に直結する変更が多く予定されています。税金の制度は自分から申告しないと恩恵を受けられないものも少なくないため、早めの情報収集が大切です。年末調整の書類が配られてから慌てないよう、いま一度ご自身やご家族が使える制度がないか確認しておきましょう。
参考資料
村岸 理美
