2. 年金を受給しながらパートをすると社会保険料はどうなる?

近年は、年金を受給しながらパートやアルバイトなどで給与を得るケースも増えていますが、社会保険料はどうなるのでしょうか。

結論からいうと、年金収入があること自体で、パートなどの社会保険料が決まるわけではありません。パートなどの勤務先で厚生年金・健康保険の加入条件を満たせば、給与をもとに社会保険料が発生します。

たとえば、65歳の方が年間90万円の年金を受け取りながら、パートで年間100万円の給与を得ているとします。

この場合、年金受給額がいくらなのかではなく、あくまでもパート先で社会保険の加入条件を満たしているかどうかが判断基準になるということです。

木内 菜穂子
社会保険の手続きを扱う実務では、加入するかどうかはあくまで勤務先での働き方で判断します。年金をいくら受け取っているかは、この判定には出てきません。年金から保険料が引かれると働き損に見えるかもしれませんが、加入することで得られるものもあるため、次章のメリットとデメリットを見比べたうえで判断していただければと思います。

3. 年金を受給しながら社会保険に加入するメリット・デメリット

年金を受給しながら、パートやアルバイトなどで社会保険に加入して働く場合の、主なメリットとデメリットを解説します。

3.1 社会保険に加入して働くメリット

【将来受け取れる厚生年金が増額する】
年金を受給しながらでも厚生年金保険に加入し保険料を納め続けると、その実績が毎年1回(原則として毎年10月)年金額に反映され、受給できる年金額が手厚くなります。この制度を在職定時改定といいます。

【傷病手当金が受け取れる】
健康保険の加入者は、業務外の病気やケガで休業した際に、給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」の対象になります。傷病手当金は国民健康保険にはない保障であり、社会保険に加入する大きなメリットの一つといえます。

【会社が保険料の半額を負担してくれる】
国民健康保険や国民年金は全額を自分で納める必要がありますが、社会保険料は事業者(勤務先)に半分を負担してもらえます(労使折半)。

3.2 社会保険に加入して働くデメリット・注意点

【給与から社会保険料が控除される】
毎月の給与から厚生年金保険料と健康保険料が引かれるため、短期的に見ると手取り額が減る場合があります。

年金そのものからどのような税金・社会保険料が差し引かれるのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説

【在職老齢年金による年金支給停止のリスクがある】
厚生年金を受給中の方が厚生年金の被保険者である場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計額によっては、年金額が支給停止となることがあります。

基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円以下の場合は支給停止されません。しかし65万円を超える場合は、超えた分の半額にあたる厚生年金が支給停止となり減額されます。

木内 菜穂子

年金を受給しながら厚生年金に加入して働くと、給与から保険料が引かれるほか、在職老齢年金によって年金の一部が支給停止になる可能性もあります。

一方で、在職定時改定によって将来の年金が毎年上乗せされること、健康保険の保障を受けられることは、長い目で見れば小さくないメリットです。給与計算の実務でも、保険料が引かれる月の手取りだけを見て判断される方は多いのですが、増える年金と受けられる保障は数年単位で効いてきます。

支給停止を恐れて働く時間を抑えるのではなく、「保険料を払って増える収入」と「止まる可能性のある年金」の両方を、勤務先の給与額と自分の年金額で一度試算してみてください。判断に迷うときは、年金額の見込みは年金事務所、加入の可否は勤務先に確認するのが確実です。

4. おわりに

2026年10月から、いわゆる「106万円の壁」の基準となっていた月額8万8000円以上という賃金要件が撤廃される予定です。

さらに対象となる勤務先の規模が段階的に拡大される予定であることから、今後の制度改正について注視する必要があります。

社会保険に加入すると目先の手取りは減る場合がありますが、厚生年金によって将来の年金が増えるほか、健康保険の保障を受けられるメリットもあります。

2026年10月以降は、「手取りを減らしたくないから働く時間を抑える」のではなく、現在の手取りと将来の保障を合わせて、自分に合った働き方を考えることがより重要になるでしょう。

参考資料

木内 菜穂子