5. 2026年6月期は増収増益。国内の客数と免税売上が牽引した

数字をあらためて並べる。2026年6月期は売上高2兆4,452億円で前期比+8.8%、営業利益1,748億円で+7.7%、経常利益1,775億円で+12.0%、親会社株主に帰属する当期純利益1,100億円で+21.6%だった。増収増益である。

国内事業が伸びた理由は会社が説明している。消費者の生活防衛意識や価格感度が高まるなか、顧客の行動変化に対応した価格戦略や販促施策を推進した結果、既存店の客数が伸長した。加えて顧客嗜好性の高いIPコンテンツ商品やトレンド商品の販売が好調に推移し、売上高の伸びに貢献したという。

免税売上高については、一カ国に依存しないインバウンド戦略が奏功し、東南アジアおよび欧米からの顧客が増加したことで過去最高を更新した。ここに25店舗の新規出店が加わっている。

目を引くのはアジア事業だ。売上高991億円に対し営業利益は55億円で、前期比+186.0%と大きく伸びた。会社は、各エリアでの品揃えの見直しや現地商流を活用した商品調達の強化で価格競争力が向上し客数が増えたこと、不採算店舗の閉店や廃棄率の低減、労働生産性の向上で販管費の効率化が進んだことを挙げている。

規模はまだ小さいが、営業利益率は5.6%まで来た。北米の1.3%と比べると、海外の中でも明暗が分かれている。買収で広げた北米と、自前で出店を積み上げたアジアの違いが、そのまま利益率の差に出ているとも読める。

6. 2027年6月期の計画に置かれた慎重さと、自己資本比率44%への到達

会社が示した2027年6月期の見通しは、売上高2兆6,870億円で+9.9%、営業利益1,790億円で+2.4%、当期純利益1,105億円で+0.4%である。売上は2桁近く伸ばす計画なのに、利益はほぼ横ばいという形だ。

背景には長期の絵がある。会社は長期経営計画として、2035年6月期に売上高4兆2,000億円、営業利益3,300億円という目標を掲げている。直近の売上を1.7倍、営業利益を1.9倍にする構想だ。そこへ向けた出店と業態転換の費用が、当面の利益を抑える前提に置かれていると読み取れる。

2026年7月1日付では、株式交換により首都圏で小売業を展開するOlympicグループを完全子会社としている。店舗網の拡大と業態転換の加速を狙った動きだ。

一方で、財務の姿は5期で大きく変わった。自己資本比率は2022年6月期の28.3%から、30.6%、35.8%、40.1%を経て、直近は44.0%である。小売業の中央値48.3%にはまだ届かないものの、5期前とは別の会社のような数字だ。

返済余力も同じ方向に動いている。会社が開示するキャッシュフロー対有利子負債比率は、2022年6月期の6.2年から直近は2.2年まで縮んだ。有利子負債を営業キャッシュフローで返し切るのに必要な年数が、3分の1近くになった計算だ。直近通期の営業キャッシュフローは1,609億円、投資キャッシュフローは▲622億円である。稼いだ資金で投資を賄い、なお借入を返す局面にある。

7. 筆者コメント

この会社の姿が変わろうとしているのが、直近5期の数字を並べたときの印象だ。

かつては借入で土地と店舗を押さえ、規模の拡大でそれを回収する会社だった。自己資本比率が3割を切っていた頃の姿である。いまは自己資本比率が4割台半ばに乗り、有利子負債の返済年数も大きく縮んだ。財務の緊張はほどけている。

その余力をどこへ振り向けるかが、次の10年の目標に直結する。売上を1.7倍にするという絵は、既存店の伸びだけでは描けない。新業態と買収を並行して回すという選択が、すでに翌期の利益計画に表れている。

ただ、買収で広げた事業がどう見えるかは、北米が先に教えてくれている。のれんは資産として残り、償却は毎期の費用として利益を削る。減損はその積み上げが崩れたときに一度に出る。規模の拡大と利益率の維持は、放っておいて両立するものではない。

連結の営業利益だけを追うと、この綱引きは見えない。セグメント別の利益率と、のれんの残高。この2つを毎期並べて追うことをおすすめしたい。数字が正直に語ってくれる場所は、たいてい本文の奥にある。

参考資料

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石津 大希