「もう7万円の給付金をもらったから、年金生活者支援給付金は関係ない」——そう思い込んでいる人がいるとしたら、それは誤解かもしれません。この2つは、金額の水準こそ近いものの、まったく別の制度です。

逆に、「年金生活者支援給付金をもらっているから、7万円給付も自動的にもらえるはず」という思い込みも同様に誤解です。2つの制度の関係を正確に理解しておくことが、混乱を防ぐ第一歩になります。

結論から言うと、「7万円給付」は令和5年度に実施された住民税非課税世帯向けの一時金で、すでに受付を終了しています。一方、年金生活者支援給付金は、年金受給者に向けて現在も継続している月額の上乗せ制度です。この記事では、両者の違いと、通帳への記載のされ方の違いを編集部で整理します。

なお、年金生活者支援給付金の制度全体や2026年度の基準額については、下記の記事より一部を引用・参照しています。

【年金生活者支援給付金】2026年度は月5620円に3.2%引き上げ。65歳以上・世帯全員非課税・所得80万9000円以下が要件、9月から薄緑色の封筒が届いたら要申請
【年金生活者支援給付金】2026年度は月5620円に3.2%引き上げ。65歳以上・世帯全員非課税・所得80万9000円以下が要件、9月から薄緑色の封筒が届いたら要申請

1. 「7万円給付」とは、そもそも何だったのか

まず、「7万円給付」という言葉が指している制度を確認します。

1.1 令和5年度、住民税非課税世帯向けに実施された一時金

「7万円給付」は、令和5年度に実施された住民税均等割非課税世帯向けの給付金です。物価高騰の影響を受ける低所得世帯を支援するため、国の重点支援地方交付金を財源に、自治体が1世帯あたり7万円を支給しました。18歳以下の子どもがいる世帯には、こども加算として児童1人あたり5万円が上乗せされるケースもありました。

この7万円という金額は、令和5年度に先行して実施されていた3万円給付に加えて、追加で7万円(合計で10万円の支援)を支給する形で実現したものです。段階的に金額が拡大された経緯があるため、「3万円給付」「7万円給付」という2つの呼び方が混在している点も、記憶が曖昧になりやすい一因です。

さらに、自治体によっては支給時期や名称の表記が微妙に異なっていたことも、記憶の混乱に拍車をかけています。「特別給付金」「臨時特別給付金」など、自治体ごとに正式名称が違っていたため、同じ制度なのに別のものだと感じている人も少なくありません。振込元の名義が自治体名になっているケースが多く、通帳を見返せば当時の入金記録を確認できる場合もあります。

1.2 すでに受付を終了しており、今は申請できない

この7万円給付は、令和5年度末から令和6年度にかけて多くの自治体で支給が完了しており、現在は受付を終了しています。「7万円給付をもう一度申請したい」と考えている場合、この制度自体はすでに終わっているという前提を押さえておく必要があります。

物価高騰対応の給付金としては、この後も自治体独自の給付が実施されている場合がありますが、それらは「7万円給付」とは別の、新しい制度です。名称や金額が変わって継続していることもあるため、最新の情報はお住まいの自治体で確認する必要があります。

齊藤 慧
「7万円給付」と「年金生活者支援給付金」は、金額の水準がなんとなく近いこともあり、記憶の中で混ざってしまいやすい2つの制度だと感じます。似た名前・似た金額の制度が同時期に走ると、こういう混同はどうしても起きやすくなります。片方は一度きりの一時金、もう片方は今も続く月々の上乗せという、性格そのものが違う点をまず押さえておくことをおすすめします。

2. 編集部試算:なぜ「同じような金額」に感じるのか

2つの制度が混同されやすい背景には、金額の水準が近く見えるという事情もあります。具体的に確認します。

ここでの試算は、あくまで「なぜ混同されやすいのか」を編集部が独自に検証するためのものであり、実際の受給額を保証するものではありません。個々の受給額は、日本年金機構からの通知書で確認するのが最も確実です。

2.1 年金生活者支援給付金を1年間受け取ると、7万円に近い金額になる

令和8年度の年金生活者支援給付金の基準額は月5620円です。これを12か月分単純に合計すると、年額でおよそ6万7440円になります。一時金として支給された7万円と、年間で受け取る年金生活者支援給付金の合計額は、たまたま近い水準になるため、両者が同じ制度の話だと誤解されやすいのだと考えられます。

この年額約6万7440円という数字は、あくまで基準額をそのまま12か月分掛け合わせた単純計算です。実際に受け取る額は、保険料納付済期間や保険料免除期間の長さによって個人ごとに異なり、満額の5620円をそのまま12か月分受け取れるとは限りません。保険料の未納期間があれば、その分だけ受給額は目減りします。

2.2 【7万円給付と年金生活者支援給付金・金額と性格の違い】

前提条件:令和8年度の年金生活者支援給付金基準額(月5620円)の年間合計を編集部で試算し、7万円給付と比較1/2

前提条件:令和8年度の年金生活者支援給付金基準額(月5620円)の年間合計を編集部で試算し、7万円給付と比較

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金を受け取っています。昨年度と金額が違うのですが、どのように計算されていますか。」内閣府地方創生推進事務局「各市区町村の給付金事業一覧」などを基にLIMO編集部作成

  • 7万円給付(令和5年度):1世帯7万円の一時金、すでに受付終了
  • 年金生活者支援給付金(令和8年度):年間約6万7440円(月5620円×12か月)の継続的な月額上乗せ
齊藤 慧
金額の近さだけで「同じ制度だろう」と判断してしまうのは自然なことです。ただ、一時金と継続的な上乗せでは、家計への意味合いがまったく違います。7万円給付が終わったからといって、年金生活者支援給付金の対象からも外れたと考えるのは早計で、この誤解だけで請求をあきらめてしまうのはあまりにもったいないと思います。

3. 【編集者の視点】

実務上のポイントは、「7万円給付を受け取ったかどうか」と「年金生活者支援給付金の対象になるかどうか」を、完全に切り離して考えることです。7万円給付を受け取った実績があってもなくても、年金生活者支援給付金の支給要件(65歳以上・老齢基礎年金受給・所得基準・世帯の課税状況)を満たしていれば、別途対象になります。

逆に、7万円給付を受け取っていないからといって、年金生活者支援給付金も対象外だと決めつける必要もありません。それぞれの制度の要件を個別に確認することが大切です。

特に、7万円給付の対象だった「住民税均等割非課税世帯」と、年金生活者支援給付金の所得基準は、判定に使う基準そのものが異なります。前者は世帯単位の住民税課税状況のみを基準にするのに対し、後者は世帯の非課税要件に加えて年金受給者本人の前年の所得額(年金を含む)にも厳しい制限が設けられているため、片方の要件を満たしていても、もう片方の要件を自動的に満たすとは限りません。

4. 通帳への記載も、まったく異なる

2つの制度は、実際に振り込まれる際の記帳のされ方も異なります。

4.1 7万円給付は、自治体から一度だけ振り込まれる

7万円給付は、対象の自治体から一度だけ振り込まれる一時金です。通帳には、給付を実施した自治体の名称などで、1回限りの入金として記帳されます。

振込元の表記は自治体ごとに異なりますが、多くの場合「〇〇シ」「〇〇クヤクショ」といった形で、自治体名や部署名の略称が記帳されます。当時の入金記録を確認したい場合は、この表記を手がかりに通帳をさかのぼって探すとよいでしょう。

4.2 年金生活者支援給付金は、年金と同じ日に別々に記帳される

日本年金機構の資料によると、年金生活者支援給付金は、年金と同じ口座、同じ日に、年金とは別に振り込まれます。そのため通帳には、年金と年金生活者支援給付金の2つの振り込みが記載されることになります。偶数月の15日(土日祝の場合は直前の金融機関営業日)に、年金とあわせて繰り返し記帳される点が、一時金である7万円給付とは大きく異なります。

齊藤 慧
通帳に同じ日に2つの入金が並んでいると、「年金が増えたのか、それとも別のお金なのか」と戸惑う人も少なくないはずです。あらかじめ、年金とは別枠で記帳される仕組みだと知っておくだけで、通帳を見たときの安心感が変わってきます。制度の細部まで含めて理解してもらいたいという思いで、この記事をまとめました。

※本記事は、編集部が日本年金機構が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。

5. 【編集者の視点】

通帳の記帳を確認する際は、年金の振込額だけを見て「今月は増えた/減った」と判断せず、年金生活者支援給付金の分も別途記載されていないかを確認する習慣をつけるとよいでしょう。特に、初めて年金生活者支援給付金の対象になった月は、記帳が2行に分かれていることに気づかないまま見過ごしてしまう可能性があります。

通帳の記載内容に不明な点がある場合は、日本年金機構から送付される「振込通知書」を確認するか、年金事務所に問い合わせることをおすすめします。

なお、年金と年金生活者支援給付金の振込先口座は同一である必要があります。別々の口座に振り分けて受け取ることはできない仕組みになっているため、通帳を分けて管理したい場合でも、この点は制度上の制約として理解しておく必要があります。

6. 制度の位置づけを、もう一度整理する

ここまでの内容を、実施主体と目的の違いという観点から、あらためて整理します。混同を防ぐには、金額の水準だけでなく、制度の骨格そのものを別々のものとして頭に入れておくことが有効です。

6.1 実施主体も、根拠となる法律も異なる

7万円給付は、国の交付金を財源に各自治体が実施する制度です。一方、年金生活者支援給付金は、年金生活者支援給付金の支給に関する法律に基づき、日本年金機構が実施する制度です。同じ「非課税世帯・低所得の年金受給者」を対象にしていても、実施主体そのものが異なります。

実施主体が違うということは、問い合わせ先も異なるということです。7万円給付について年金事務所に問い合わせても、担当外のため回答が得られませんし、逆に年金生活者支援給付金について自治体の給付金窓口に問い合わせても、案内してもらえない可能性があります。どちらの制度について確認したいのかを整理してから、適切な窓口に問い合わせることが、回り道を避けるコツです。

6.2 【「7万円給付」と年金生活者支援給付金・制度の違い】

前提条件:「7万円給付」と年金生活者支援給付金の実施主体・根拠・性格の違いを編集部で整理2/2

前提条件:「7万円給付」と年金生活者支援給付金の実施主体・根拠・性格の違いを編集部で整理

出所:内閣府地方創生推進事務局「各市区町村の給付金事業一覧」日本年金機構「年金生活者支援給付金は年金と一緒に振り込まれるのですか。」などを基にLIMO編集部作成

  • 実施主体:7万円給付は各自治体(国の交付金が財源)、年金生活者支援給付金は日本年金機構
  • 性格:7万円給付は一時金(1回限り)、年金生活者支援給付金は継続的な月額上乗せ
  • 現在の状況:7万円給付は受付終了、年金生活者支援給付金は継続中

7. 自分の状況を確認する方法

最後に、2つの制度について自分の状況を確認する方法を整理します。

7.1 7万円給付については、お住まいの自治体に確認する

すでに受付を終了している7万円給付について、自分が受け取ったかどうか記憶が曖昧な場合は、お住まいの自治体の担当窓口に確認することをおすすめします。当時の通帳履歴や、自治体から送付された案内文書が手元に残っていれば、それを見返すことでも確認できます。

自治体によっては、給付の実施記録を一定期間保管しているため、電話や窓口での問い合わせに応じてもらえる場合があります。ただし、制度自体がすでに終了しているため、記録の保管期間を過ぎていると回答が得られないこともある点は留意しておく必要があります。

7.2 年金生活者支援給付金については、日本年金機構に確認する

現在も継続している年金生活者支援給付金の対象になるかどうかは、日本年金機構や年金事務所で確認できます。7万円給付の受給実績とは関係なく、現在の所得や年齢の要件で個別に判定されます。

自分が対象になっているかどうかを確認する最も確実な方法は、日本年金機構から送付される通知書や、通帳の記帳内容を実際に確認することです。対象になっている場合は、年金の振込と同じ日に、年金生活者支援給付金の分も別枠で記載されているはずです。

心当たりがない場合は、要件を満たしていない可能性もあるため、年金事務所に個別の状況を相談するとよいでしょう。

なお、関連して年金生活者支援給付金の対象となる支給要件の基本についても、あわせて確認しておくと理解が深まります。

8. まとめ

  • 「7万円給付」は令和5年度に実施された住民税非課税世帯向けの一時金で、すでに受付を終了しています。
  • 年金生活者支援給付金は、年金受給者に向けて現在も続いている月額の継続的な上乗せ制度です。
  • 年金生活者支援給付金を1年間受け取ると、年額でおよそ6万7440円になり、7万円給付と金額の水準が近いことが混同の一因と考えられます。
  • 通帳への記載も異なり、年金生活者支援給付金は年金と同じ日に、別々の振込として記帳されます。
  • 2つの制度は要件も判定も別々のため、片方の受給実績でもう片方の対象可否を判断しないことが大切です。

「7万円給付」と「年金生活者支援給付金」は、金額の水準が近く見えることから混同されやすい制度ですが、一時金と継続的な上乗せという性格の違い、そして通帳への記載のされ方まで、実際にはまったく別物です。この違いを正確に理解しておくことが、給付金を見落とさないための第一歩になります。

自分の状況について具体的に確認したい場合は、7万円給付については自治体の窓口、年金生活者支援給付金については日本年金機構や年金事務所に相談することをおすすめします。

あわせて、結局いくらもらえる?給付基準額の計算式とシミュレーションも参考にしてみてください。

9. よくある質問

9.1 Q. 「7万円給付」は、今からでも申請できますか。

A. できません。この給付金は令和5年度に実施された住民税非課税世帯向けの一時金で、すでに受付を終了しています。

9.2 Q. 7万円給付をもらったら、年金生活者支援給付金はもらえませんか。

A. そのような制限はありません。7万円給付の受給実績にかかわらず、年金生活者支援給付金の支給要件を満たしていれば、別途対象になります。

9.3 Q. 年金生活者支援給付金は、通帳にどう記載されますか。

A. 年金と同じ口座、同じ日に、年金とは別の振り込みとして記帳されます。通帳には2つの入金が記載されることになります。

9.4 Q. 通帳に見慣れない入金があった場合、どう確認すればよいですか。

A. 日本年金機構から送付される振込通知書を確認するか、年金事務所に問い合わせることをおすすめします。

9.5 Q. 7万円給付の対象だったのに、年金生活者支援給付金の対象にはならないのはなぜですか。

A. 2つの制度は判定基準が異なるためです。7万円給付は世帯単位の住民税課税状況で判定されましたが、年金生活者支援給付金は年金受給者本人の年齢や前年所得などの要件で個別に判定されます。片方の要件を満たしていても、もう片方の要件を自動的に満たすとは限りません。

参考資料

齊藤 慧