9月1日から、年金生活者支援給付金の請求書が順次送られています。次の年金支給日は10月15日です。
この給付金は、年金収入やその他の所得が一定の基準を下回る方に、年金へ上乗せして支払われるものです。2026年度の基準額は月5620円ですが、実際に受け取っている人の平均は老齢で4146円にとどまります。
この記事では、公的年金の受給額に大きな幅があることを確認したうえで、年金生活者支援給付金の額と支給要件、そして基準額どおりに受け取れる人とそうでない人が分かれる理由を見ていきます。
なお、年金生活者支援給付金の制度内容と公的年金の平均受給額については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 公的年金の受給額は、平均だけでは見えないほど幅がある
年金生活者支援給付金の話に入る前に、そもそも公的年金の受給額がどれくらいばらついているのかを押さえておきます。この幅が、給付金の対象になるかどうかを分けているためです。
1.1 国民年金は5万円台、厚生年金は15万円台が平均
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)で15万円台です。
男女別に分けた金額は、【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説に整理されています。
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
1.2 月30万円以上の人がいる一方で、月3万円未満の人もいる
ただし、グラフを見ると分かるとおり、厚生年金を月額30万円以上受け取っている人もいれば、国民年金・厚生年金ともに月額3万円未満という人もいます。受給額は幅広いゾーンに散らばっており、平均という1つの数字ではとらえきれません。
年金とその他の所得を合わせても一定の基準を下回る場合、年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性があります。つまりこの制度は、いま見た分布の下のほうに位置する方を支えるために設けられたものです。
2. 2026年度の年金生活者支援給付金は月5620円、前年度から3.2%の引き上げ
ここからは給付金そのものの中身に入ります。まずは金額から確認しましょう。
2.1 受給中の年金に応じて3種類に分かれる
年金生活者支援給付金は、年金収入やその他の所得額が一定の基準を下回る年金生活者を支援するため、2019年に始まった制度です。給付金は2カ月に一度、公的年金に上乗せして支給されます。
受給している年金の種類によって、次の3つに分かれます。それぞれに支給要件と支給額(基準額)が定められています。
- 老齢年金生活者支援給付金:老齢基礎年金を受給している方向け
- 障害年金生活者支援給付金:障害基礎年金を受給している方向け
- 遺族年金生活者支援給付金:遺族基礎年金を受給している方向け
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
2.2 2026年度の基準額は月5620円、障害1級のみ7025円
2026年度の給付金額は、前年度から3.2%の引き上げとなりました。
2026年度の月額は次のとおりです。
- 老齢年金生活者支援給付金:5620円(基準額)
- 障害年金生活者支援給付金:1級7025円・2級5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:5620円
いずれも月額です。支給日には2カ月分がまとめて年金に上乗せされますので、基準額どおりに受け取れる場合、1回の支給で約1万1000円、年額にすると約6万7000円になります。
2.3 実際に受け取っている人の平均は、老齢で4146円
ここで押さえておきたいのが、老齢年金生活者支援給付金は5620円で確定する額ではないという点です。この金額はあくまで基準額であり、実際の給付額は保険料納付済期間などに応じて計算されます。
「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2025年3月において認定されている平均給付月額は、老齢年金生活者支援給付金4146円、障害年金生活者支援給付金5727円、遺族年金生活者支援給付金5228円です。
老齢だけが基準額の5620円を大きく下回っています。基準額と実額の間に1474円、年額では1万7688円の開きがあることになります。なぜこの差が生まれるのかは、後ほど計算式に当てはめて確認します。
3. 年金生活者支援給付金の支給要件は、3種類で線引きが違う
同じ制度でありながら、対象となる条件は3種類で大きく異なります。以下は厚生労働省が示す令和8年10月時点の金額です。この給付金は判定結果が毎年10月分から反映される仕組みのため、所得の基準額も10月を境に切り替わります。
3.1 障害・遺族は「前年の所得491万8000円以下」だけが線引き
障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金は、それぞれの年金(障害基礎年金または遺族基礎年金)を受給していて、前年の所得が491万8000円以下であることが要件です。
判定に用いる所得に、障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。また、扶養親族などの数に応じて、所得の基準額は上がります。
3.2 老齢は3つの条件をすべて満たす必要がある
これに対して老齢年金生活者支援給付金は、本人の所得以外の要件がいくつか加わります。対象となるのは下記をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下
障害・遺族の491万8000円に対して、老齢は82万6500円。線引きの水準がまったく違うことが分かります。加えて老齢だけは「同一世帯の全員が非課税」という世帯単位の条件がつくため、本人の所得が低くても、同居する家族の誰か1人に住民税が課されていれば対象外です。
なお、老齢の判定にも障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
基準額をわずかに超えた人には「補足的老齢」がある
基準額ぎりぎりで給付対象となる人との間に不公平感が生じないよう、基準額をわずかに超えて対象外となる人には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
対象となる所得の範囲は、昭和31年4月2日以後に生まれた方で82万6500円を超え92万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方で82万4100円を超え92万4100円以下です。所得が増えるにつれて給付額は減っていきます。
4. 【独自試算】老齢の給付金は、納付済期間と免除期間でいくら変わるか
ここまで見てきたとおり、老齢年金生活者支援給付金の実額は基準額どおりにはなりません。日本年金機構が公表している計算式に当てはめて、どこで差がつくのかを確かめてみます。
4.1 計算式は2つの足し算でできている
日本年金機構によると、老齢年金生活者支援給付金の月額は次の2つの合計です。
- 保険料納付済期間に基づく額=5620円 × 保険料納付済期間 ÷ 480月
- 保険料免除期間に基づく額=1万1768円 × 保険料免除期間 ÷ 480月
後ろの1万1768円は、老齢基礎年金の満額(月額7万608円)の6分の1にあたる金額です。全額免除・4分の3免除・半額免除の期間にこの額を使い、4分の1免除の期間は5884円となります(いずれも昭和31年4月2日以後に生まれた方の場合)。
4.2 納付済期間だけで見ると、40年納めて5620円
まず、免除期間がまったくない場合の給付額を、納付済期間ごとに計算してみます。端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上1円未満を切り上げて処理しています。
- 480カ月(40年)すべて納付:5620円
- 420カ月(35年)納付:4918円
- 360カ月(30年)納付:4215円
- 300カ月(25年)納付:3513円
- 240カ月(20年)納付:2810円
- 180カ月(15年)納付:2108円
先ほど確認した平均給付月額4146円は、この並びのなかでは354カ月(29年6カ月)納付のケース(4145円)とほぼ重なります。全体でならすと、30年に届かない程度の納付期間、という位置づけになります。
4.3 同じ納付済20年でも、残りが未納か免除かで月5884円変わる
ここからが、この計算式でいちばん差がつく部分です。納付済期間を240カ月(20年)に固定して、残りの240カ月の扱いだけを変えてみます。
- 納付済240カ月+残り240カ月が未納:2810円
- 納付済240カ月+残り240カ月が全額免除:8694円
その差は月5884円、年額にすると7万608円です。未納のまま放置していた期間はこの計算にまったく乗らないのに対し、免除の手続きを取っていた期間は別枠で加算されるためです。
日本年金機構も、納付済240カ月・全額免除60カ月というケースを例示しています。この場合は2810円と1471円の合計で4281円となり、納付済期間だけで計算した2810円を上回ります。
全額免除の期間が長い方の給付額が基準額の5620円を超えることもあるのは、この仕組みによるものです。老齢基礎年金そのものが減っている分を、給付金の側で一部補う設計になっている、と理解しておくとよいと思います。
※上記は日本年金機構が公表する計算式に令和8年度の金額を当てはめた概算です。実際の給付額は、ご自身の年金証書や支給額変更通知書に記載された納付済期間・免除期間によって決まります。
5. 請求しなければ受け取れない。9月から順次届く請求書
年金生活者支援給付金を受け取るには、請求手続きが必要です。支給対象になったからといって、自動的に年金へ上乗せされるわけではありません。
5.1 すでに年金を受給中の人には、はがき型の請求書が届く
すでに年金を受給している人で、所得が下がって対象となった場合は、毎年9月1日以降、順次「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が送付されます。
※すでに年金を受け取っている方の中でも、繰上げ受給をしている場合は書類の様式が異なります。
手続きの流れは、年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説に次のように整理されています。
支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求に関する書類が送付されます。基本的には、その書類に必要事項を記入して返送するだけで手続きは完了します。これから老齢年金の受給を開始する方には、受給が始まる3カ月前に届く「年金請求書(事前送付用)」に「年金生活者支援給付金請求書」が同封され(緑色の封筒)、すでに年金を受給中の方にはハガキ形式の請求書が届きます(薄緑色の封筒)。
出所:年金生活者支援給付金とは?2026年最新の対象者・いくらもらえるか・ハガキが届かない理由を徹底解説
5.2 2年目からは手続き不要、ただし判定は毎年おこなわれる
年金生活者支援給付金は、一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り2年目以降の手続きは不要で、継続して受給できます。
継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。
なお、その年度(4月分から)の支給金額は、毎年6月上旬に送付される「年金生活者支援給付金 支給金額(改定)通知書」および「年金生活者支援給付金 振込通知書」で確認できます。
6. まとめにかえて
2026年度の年金生活者支援給付金は前年度から3.2%引き上げられ、基準額は月5620円(障害1級のみ7025円)となりました。基準額どおりであれば、1回の支給で約1万1000円、年額で約6万7000円が年金に上乗せされます。
ただし老齢の給付金は保険料納付済期間などに応じて計算されるため、2025年3月時点の平均給付月額は4146円にとどまっています。要件も3種類で異なり、老齢は「65歳以上」「同一世帯の全員が市町村民税非課税」「前年の公的年金等の収入とその他の所得の合計が82万6500円以下」の3つをすべて満たす必要があります(令和8年10月時点)。
給付額の差がどこから生まれるのかは、日本年金機構の計算式に当てはめると見えてきます。同じ納付済20年でも、残りの期間が未納か全額免除かで月5884円、年7万608円の違いが出ることを本文で確認しました。
そして共通しているのが、請求しなければ受け取れないという点です。9月から順次届く請求書は、開封して中身を確かめておきましょう。


