8. 40歳代に多い「自分で調べて分かったつもりでいたが、合っているのか自信がない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が伝えたいこと

分からないことが出てきたら、まず自分で調べてみる。そうした進め方をされている方は多く、運用を続けている方ほど、その積み重ねで判断してこられています。一方で相談の場では、「調べた内容そのものは間違っていないはずなのに、自分に当てはめてよいのかが分からない」という迷いをうかがうことが少なくありません。40歳代の方からは、とくにこうしたお声をいただきます。

8.1 40歳代に多いお悩み相談は「自分で調べて分かったつもりでいたが、合っているのか自信がない」

40歳代(ご相談者)
運用は自分なりに続けています。分からないことが出てくるたびに調べて、そのつど納得して先に進んできました。ただ、最近になって、調べて分かったつもりでいたことが、自分の場合にもそのまま当てはまるのかどうか、自信が持てなくなっています。書いてあること自体は間違っていないのだと思うのですが、それを自分に当てはめてよいのかが判断できません。かといって、こういうことを誰に確かめればよいのかも分からないままです。

調べること自体はできている、けれども確かめる相手が分からない。そうした状態で止まっている方は多くいらっしゃいます。情報が足りていないのではなく、手元にある情報を自分の状況に結びつけるところで迷っている、という状況です。

8.2 【ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が回答】情報の正誤と、自分に当てはまるかどうかを分けて考える

中島 卓哉
「自分で調べた内容に自信が持てない」と悩む必要はありません。まずは「情報の正誤」と「自分に当てはまるか」を分けて考えることが大切です。一般的な正解が、ご自身のご家族構成や雇用形態にそのまま該当するとは限りません。まずは情報の出典や最新の情報であるかを確認し、年収や加入制度などの前提条件を書き出してみましょう。そのうえで「自分なりにこのように理解していますが、合っていますか?」と専門の窓口やファイナンシャルアドバイザーに尋ねてみてください。自分専用の答え合わせを行うことで、調べた知識は確固たる判断材料に変わり、資産運用について自分で判断できるようになるでしょう。

8.3 ポイント1:情報が正しくても、自分の場合に当てはまるとは限らない

調べて出てきた説明が誤っている、という話ではありません。公的機関が出している案内であっても、そこに書かれているのは一般的な取り扱いや、ある条件に当てはまる場合の話です。お金にまつわる決まりごとは、働き方、収入の種類、加入している制度、ご家族の状況といった前提によって扱いが変わることがあります。ですから、確かめたいのは「その情報が正しいかどうか」ではなく、「その情報が想定している条件に、自分が当てはまっているかどうか」のほうです。相談の場でも、調べ方が悪かったわけではなく、前提の確認が抜けていただけ、という整理に行き着くことが少なくありません。あわせて、運用しているものは日々価格が動き、受け取るときに積み立てた金額を下回る可能性もあります。調べて納得できた内容が、そのまま将来の結果を約束するわけではない点も、頭の片隅に置いておきたいところです。

8.4 ポイント2:出どころをたどり、いつの時点の内容なのかまで見る

調べた内容に自信が持てないときは、その説明がどこから来ているのかをたどってみると、確かめる手がかりが増えます。読みやすくまとめられた解説ほど、書かれた時点の取り扱いをもとにしていることがあり、その後に内容が変わっている場合もあります。制度のことであれば所管する公的機関が出しているページ、税のことであれば税を所管する公的機関が出している案内というように、大もとの情報にあたると、いつの時点の内容なのか、どういう条件を前提にしているのかが示されていることが多いです。ここまで見ておくと、「自分の場合はこの条件に当てはまりそうだ」「ここは自分では判断がつかない」という線引きができます。判断がつかない部分がはっきりすれば、あとはそこだけを人に聞けばよくなります。なお、制度や税の取り扱いは改正されることがあり、個々の事情によっても変わるため、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。

8.5 ポイント3:自分の条件を書き出してから、その分野を扱う窓口に確かめる

最後まで判断がつかない部分は、人に確かめてしまうほうが早いです。ただ、「これはどうなりますか」とだけ尋ねると、返ってくるのもまた一般的な説明になりがちで、同じところに戻ってしまいます。先に、何をいつから持っているのか、どの制度を使っているのか、働き方はどうなっているのかといった自分の条件を書き出しておくと、話がかみ合いやすくなります。そのうえで「自分はこう理解しているのですが、合っているでしょうか」という聞き方をすると、どこで取り違えていたのかがはっきりします。聞く先は内容によって分かれ、税に関することは税務署や税理士、公的な制度に関することは所管する公的機関やその窓口、勤め先の制度に関することは勤め先の担当窓口というように、その分野を扱っているところに尋ねるのが近道です。自己判断で抱えていた思い違いが、人に話してみたことであっさり解けた、というお話は相談の場でもよくうかがいます。

ご自身で調べてこられたことは、確かめるための土台としてそのまま活きます。理解している内容を言葉にして、その分野を扱っているところに当ててみる。それだけで、合っている部分と、まだ確かめきれていない部分とを切り分けられます。

9. 【独自試算】同じ働き方でも、いつ要件を満たしたかで受け取る額はどれだけ変わるか

前提が1つ違うだけで結果が変わる、というのは考え方の話にとどまりません。1ページ目で見た高年齢雇用継続給付の数字を使って、金額に置き換えてみます。前提は次のとおりです。

  • 60歳到達時の賃金は月40万円、再雇用後の賃金は月24万円(60歳到達時の60%)とする
  • 61%以下まで下がった場合にあたるため、支給率は上限の率で計算する
  • 厚生年金に加入したまま老齢年金を受け取っており、標準報酬月額は24万円とする
  • 税金や社会保険料は考えない

9.1 2025年4月1日以降に要件を満たした場合

  • 高年齢雇用継続給付:24万円×10%=月2万4000円
  • 年金からの支給停止:24万円×4%=月9600円
  • 差し引き:月1万4400円/年17万2800円

9.2 2025年3月31日以前に要件を満たしていた場合

  • 高年齢雇用継続給付:24万円×15%=月3万6000円
  • 年金からの支給停止:24万円×6%=月1万4400円
  • 差し引き:月2万1600円/年25万9200円

同じ賃金、同じ働き方でも、いつ要件を満たしたかによって、年間で約8万6400円の差がつく計算です。給付の側だけを見て10%と15%を比べると差は5ポイントですが、年金から止まる分もあわせて見ると、手元に残る額での比較になります。

この記事を読んで「自分は10%だろうか、15%だろうか」と迷ったとすれば、それは調べ方の問題ではありません。どちらに当てはまるかは、いつ要件を満たしたかという前提で決まるためです。ここが、ポイント1でお伝えした「情報が正しくても、自分の場合に当てはまるとは限らない」の具体例にあたります。

なお、これは一定の条件を置いた試算です。実際の支給率は賃金の下がり方に応じて決まり、年金からの支給停止も上限として示されている率です。ご自身の場合の金額は、ハローワークと年金事務所でご確認ください。

10. まとめにかえて

お金にまつわる決まりごとには、誰にでも同じように当てはまるものと、その方の条件によって扱いが分かれるものとがあります。調べて出てきた説明は前者の形で書かれていることが多いため、自分の状況に置き換える段階で迷いが生まれやすくなります。情報が足りないのではなく、自分の条件と突き合わせる工程が残っているだけ、と考えていただくとよいかもしれません。理解している内容を書き出し、大もとの情報にあたり、それでも判断がつかないところを、その分野を扱う窓口に「こう理解しているが合っているか」と当ててみる。この順番であれば、思い違いを抱えたまま先へ進まずに済みます。なお、制度や税の取り扱いは改正されることがあり、個々の事情によっても変わるため、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。この記事でお伝えした内容は一般的な考え方であり、ご自身に当てはまる扱いは一人ひとり異なります。

参考資料

中島 卓哉