10. 40歳代に多い「持っているものが増えてきて、これで分散できているのか分からない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が伝えたいこと

非課税で運用できる制度を使って積み立てを始めてから数年が経ち、気づけば保有しているものがいくつかに増えていた、というお話をうかがう機会は少なくありません。増えること自体が悪いわけではないのですが、数が増えるほど「これで分散できているのか」「多すぎないか」が自分では判断しにくくなります。ここでは、そうしたご相談として多いものを取り上げます。

10.1 40歳代に多いお悩み相談は「持っているものが増えてきて、これで分散できているのか分からない」

40歳代(ご相談者)
新NISAの口座で積み立てているほかに、別の仕組みでも運用していて、気づけば保有しているものがいくつもある状態です。ひとつずつは自分で選んだつもりなのですが、全部合わせて見たときに、これで分散できているのか、それとも多すぎるのかが分かりません。もう少し効率よく運用したいという気持ちはあるのですが、増やすほうに動くべきなのか、まとめるほうに動くべきなのかを決めきれていません。

保有しているものが増えてきた段階で立ち止まる方は多く、相談の場でもよくうかがう内容です。ここでの迷いは「良い商品かどうか」ではなく、全体として自分がどういう持ち方をしているのかがつかめない、という点にあります。

10.2 【ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が回答】数を数える前に、中身が重なっていないかを確かめる

中島 卓哉
「本数が多すぎるかも」と悩む前に、まずは保有している資産の「中身」を確かめることが先決です。
名前が違っても、投資先の国や資産の種類が重複していれば、思っているほどの分散効果は得られません。
複数の商品を組み合わせても分散効果が低いものもあり、逆に1つの商品で広範囲に分散されているものもあります。
まずは手元の資産を並べ、過去に「いつ、何の目的で投資したのか」を振り返ってみましょう。
そのうえで、自分自身が無理なく管理し続けられるシンプルな形になっているかを検証することが重要です。
中身の重複を整理し、自分にとって見やすく管理しやすい状態を作ることこそが、今後資産を増やすか絞るかを適切に判断するための確かな足場になります。

10.3 ポイント1:本数の多い少ないではなく、中身が重なっていないかを先に見る

分散できているかどうかは、保有している本数では測れません。名前の違うものを複数持っていても、投資している国や地域、資産の種類が大きく重なっていれば、値動きは似た方向にそろいやすくなります。この場合、本数のわりに分散が効いていないという見方ができます。反対に、幅広い投資先を1つにまとめた仕組みであれば、数が少なくても中身は広く散らばっていることがあります。まず確かめたいのは、それぞれが何にどう投資しているのかという中身のほうです。運用会社が公開している目論見書や月次のレポートには、投資先の地域や資産の内訳が示されています。手元のものを並べて見比べると、重なっている部分と、どこにも入っていない部分が見えてきます。なお、どのように投資していても値動きによって元本を下回る可能性はあり、重なりを減らすことで値下がりがなくなるわけではありません。

10.4 ポイント2:増えた背景を、いつ何のために買い足したかでたどり直す

保有しているものが増えていく経緯は、最初にまとめて決めたというより、そのときどきの関心や目にした情報をきっかけに買い足してきた結果であることが少なくありません。そこで、ひとつずつについて、いつ買ったのか、そのとき何のために選んだのかを思い出して書き出してみる、という進め方があります。使う時期が比較的近いお金なのか、当面は動かさない前提の資金なのか。値動きを受け入れて増やすことを狙った部分なのか、変動を抑えることを優先した部分なのか。役割で並べ直すと、同じ役割のものが何本も重なっていることや、想定していた役割がもう思い出せないものがあることに気づく方もいらっしゃいます。ここで大切なのは、減らすことを前提にしないという点です。役割が空いている部分が見つかれば、そこを埋める形で持ち方を組み直すという考え方もあります。

10.5 ポイント3:これから自分が把握し続けられる形かどうかで確かめる

最後は、この先も自分で状況をつかんでいられる形になっているか、という観点です。値動きのある資産では、価格が大きく下がる時期がこれまでにも繰り返し起きてきました。そうした局面で、自分が何をどんな理由で持っているのかを説明できない状態だと、判断が揺れやすくなります。制度ごとに口座が分かれていると全体像はさらに見えにくくなるため、口座をまたいだ一覧を1枚つくっておく、年に一度など確認する時期を決めておく、といった工夫が助けになります。ここでいう「把握できる範囲」は人によって違うので、何本までなら管理できるという共通の目安はありません。ご自身が無理なく見渡せる形に寄せていく、という考え方でよいかと思います。なお、NISAやiDeCo、企業型DCといった制度の枠や条件は改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。

保有しているものが増えてきたときに必要なのは、正解の本数を探すことではなく、いま持っているものの中身と役割を自分の言葉で整理し直すことだと考えています。そのうえで、増やすのか、まとめるのか、いまのまま続けるのかを選んでいけば、判断の理由が自分の中に残ります。

11. まとめにかえて

保有している商品の数が増えてくると、「何本くらいが適正なのだろう」という問いに向かいがちですが、分散が効いているかどうかは数では決まりません。中身がどこまで重なっているか、それぞれにどんな役割を持たせていたか、そしてこの先も自分で見渡していられるか。この3つを順に確かめていくと、増やすか、まとめるか、いまのまま続けるかという判断の材料がそろってきます。運用である以上、値動きによって元本を下回る可能性は残りますし、どのような持ち方が合うかはご家庭の状況や使う時期によって変わります。制度の枠や条件も改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報や関連する窓口でご確認いただき、個別の判断に迷うときは専門家にご相談ください。

参考資料

中島 卓哉