7. 50歳代に多い「開設した口座に手をつけないままになっている」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が伝えたいこと

老後の資金を準備しておきたいという思いはあるものの、始めるところで止まってしまっているというご相談をいただくことは、よくあります。

7.1 50歳代に多いお悩み相談は「毎月いくら回せばよいのか決めきれない」

50歳代(ご相談者)
老後の資金の準備に関心があります。以前、非課税の制度を使う口座を開設しましたが、そのまま手をつけていません。手元の預金から毎月いくらかを資産形成に回したいと思っています。ただ、いくらまでなら回してよいのか、どこから始めればよいのかが決めきれずにいます。

同じようなご相談は少なくありません。口座を用意したところまでは進んでいて、そこから先の金額を決める段階で止まっている、という状態です。手元の預金をどこまで動かしてよいのかがはっきりしないと、毎月の金額も決めにくくなります。

7.2 【ファイナンシャルアドバイザー・鶴田 綾が回答】確かめる順番が決まると、最初の金額は決めやすくなる

鶴田 綾
まずは、手元の資金から万一の際に必要な資金額を確保しましょう。その上で10年から15年以上、運用しても問題ない余裕資金がいくらか確認をします。
また、いきなり株式などリスクの高いものに一括投資をするのはおすすめできません。まずは、NISAやiDeCoなどの制度を活用して少額の積立投資から始めましょう。
毎月積立にまわす金額は、目標額から算出するため、まずは老後資金にいくら必要か目標金額の設定をしましょう。
例えば、「老後資金2000万円を20年後までに貯めたい。」ということであれば、毎月約5万円を年平均5%で運用できれば目標達成できる見込みです。
ただ、投資には元本割れがつきものです。投資をして相場が荒れた時に、自分の資産が一時的にでも、どのくらい減っても平気かリスク許容度はしっかり把握しておきましょう。
自分のリスク許容度にあっており、かつ毎月の積立額も家計に負担のない範囲で資産運用を始めることが大事です。

7.3 ポイント1:急な出費に備える資金の目安を先に決める

最初に決めていただくのは、急な出費が生じたときに使える資金を、生活費の何カ月分ほど手元に置いておくかという目安です。ここが決まらないまま毎月の金額だけを先に決めると、想定外の支出が起きたときに、値動きのある資産を値下がりした場面で取り崩すことになりかねません。何カ月分が妥当かは、収入の入り方の安定度、家族の状況、勤務先の制度などによって変わりますので、一律の目安をあてはめるより、ご自身の事情から考えていただく形になります。金額を1つに決めきれない場合でも、おおよその範囲を置いておくだけで次の判断が進みやすくなります。

7.4 ポイント2:その外側にある資金から、回す金額を考える

目安が置けたら、その外側にある資金を対象にして、毎月いくらを回すかを考えます。手元の預金をすべて見渡してから金額を決めるのではなく、備えとして取り分けた分を先に外して、残った範囲のなかで考えるという順序です。この順序で見ると、動かしてよい金額の上限がはっきりしますので、迷いの幅が狭くなります。毎月の金額は、続けられる水準から始めて、家計に余裕が出た段階で見直すという進め方もあります。収入が減る時期があっても止めずに済む金額かどうかは、決めるときに確かめておきたいところです。

7.5 ポイント3:引き出しの自由度が高いものから始めるという順番がある

始める順番についても、考え方があります。制度によって、必要になったときに引き出せるかどうかの自由度は異なります。自由度が高い制度から始めておくと、急な出費が生じたときの選択肢を残したまま準備を進められます。すでに口座を開設されているのであれば、そこから始めるという進め方が自然です。個人型の年金制度のように税制上の利点が用意されている仕組みもありますが、そちらは原則として受け取れる年齢まで引き出せない性質があります。自由度の高いものから順に使い、そのあとで税制上の利点のある仕組みを検討する、という順番が組み立てやすいと考えられます。

回し方についても、値動きを受け入れて収益を狙う部分と、元本の安定を重視する部分では役割が違います。円だけでなく通貨を分けて持つという考え方もありますが、為替の動きによって円に換算したときの金額は上下しますし、安定を重視するとされるものにも価格変動はあり、元本割れが起きないわけではありません。それぞれの性質を確かめたうえで、ご自身の優先順位に合う配分を考えていく形になります。

なお、非課税の制度や個人型の年金制度は、対象となる範囲、上限額、引き出しや税制上の取り扱いが改正されることがあります。ご自身のケースでどうなるかは、公的機関が公表している最新の情報を確かめたうえで、関連する窓口や専門家に確認していただく形になります。手元の目安、外側の資金、始める順番という順に確かめていくと、最初の金額は決めやすくなります。

8. まとめにかえて

2026年度の年金生活者支援給付金は前年度より3.2%の引き上げとなり、6月支給分から増額率が適用されています。受け取れるかどうかは、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が、生年月日に応じた基準額を下回っているかどうかで分かれます。基準額を少し上回る場合にも、補足的な給付が用意されている点は押さえておきたいところです。

受け取るには請求の手続きが要る仕組みで、対象と判断された方には日本年金機構から書類が届きます。届いた書類に記入して返送するという流れですので、心当たりのある封筒は開封しておきたいところです。

年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、同じ年代でも金額は大きく散らばります。だからこそ、現役のうちに自分で用意しておく部分の大きさも人によって変わります。記事のなかで示した試算は、手元に残す額を変えると20年後の景色がどう動くかを見るための目安であり、利回りを一定と置いた計算です。運用の成果は市場環境によって変動し、投じた元本を下回ることもありますので、数字そのものより、何と何を見比べれば判断できるのかという見取り図として使っていただければと思います。

手元に残すべき額は、収入の入り方、家族の状況、働き方によって一人ひとり異なります。まずはひと月の生活費を把握し、そのうえで何カ月分を手元に置くかの目安を決めるところから始めてみてください。なお、制度の内容や条件、税制上の取り扱いは改正されることがありますので、ご自身が対象になるかどうかや手続きに関わる部分は、公的機関の情報や関連する窓口で確認のうえで進めてください。

参考資料

鶴田 綾