5. 30歳代に多い「余裕がないから積立は始められない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が伝えたいこと

保障の準備を先に整えてきた方ほど、あとから積立を足そうとしたときに、その原資が見えにくくなりがちです。ここからは、ファイナンシャルアドバイザーが日頃の面談でよく受けるご相談のうち、積立の金額をどう決めるかに関するものを取り上げます。個人が特定されないよう、内容は一般化しています。

5.1 30歳代に多いお悩み相談は「余裕がないから積立は始められない」

30歳代(ご相談者)
保障を兼ねた契約をいくつか持っていて、毎月の支払いがそれなりの額になっています。非課税で積み立てられる制度も気になってはいるのですが、月々の家計に大きな余裕はなく、いくらに設定すればよいのか見当がつきません。相場が動いているという話も耳に入ってきて、いま新しく加えることには踏ん切りがつかないままです。

すでに毎月支払っているものがあるぶん、そこへ新しい積立を重ねる余地が見えにくくなります。金額を決めきれないまま時間だけが過ぎてしまう、という状態に置かれる方は少なくありません。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・中島 卓哉が回答】金額を決める前に、いまの負担の全体を確かめる

中島 卓哉

「毎月の余裕がないから」と諦めてしまう前に、まずは現在支払っている保険料や固定費など、出費の全体像を一度しっかりと整理してみましょう。
万一への備えや貯蓄型保険など、支払っているコストの役割を細かく分解してみると、保障の重複や現在の生活スタイルに合わなくなった部分が見えてくることがあります。
それらを見直すことで、無理なく積立に回せる新たな資金を生み出すことが可能です。
また、投資における相場の変動は避けられない前提として捉え、どうしても決断の材料が足りない段階であれば、焦って金額を決めるのではなく「まずは少額から始める」「予算の半分程度で始めてみて一度様子を見てみる」という選択肢を残しておくことも大切です。
現状を把握し柔軟に備えておくことで、落ち着いて最初の一歩を踏み出すことができるでしょう。

5.3 ポイント1:いま出している分を含めて、毎月の負担の全体を把握する

新しく積立をいくらにするかを考える前に、いますでに出ている分を並べてみるところから始めるという進め方があります。保障を兼ねた契約を複数お持ちの場合、毎月の支払いは家計のなかで一定の位置を占めています。そこに積立を足すかどうかだけを見ていると、負担の全体像が見えないまま金額の話に進んでしまいがちです。万一のときに家族の生活を支える役割、病気やけがに備える役割、将来のために貯める役割というように、支払っているものを役割ごとに分けて並べてみると、重なっている部分や、いまの暮らしに合わなくなっている部分が見つかることがあります。そこで生まれた分を積立に回すという道筋も考えられますし、そのまま家計のゆとりとして残しておくという選び方もあります。なお、契約の内容を変えたときに保障がどう変わるかは契約ごとに条件が異なりますので、実際に手続きへ進む前に、契約先の窓口や担当部署に確認のうえで判断していただくのがよいでしょう。

5.4 ポイント2:相場が動くことは前提として織り込んでおく

相場の変動が気になって始められない、というお話は日頃の面談でよくうかがいます。ただ、相場が動くこと自体は避けられるものではなく、いつ始めても向き合うことになる前提と考えておくほうが、判断の材料は整理しやすくなります。毎月一定額を買い付けていく方法には、値段が高いときには少なく、安いときには多く買うことになるという性質があります。それでも価格の変動はありますので、元本割れとなる可能性は残ります。そのうえで確かめておきたいのが、あとから調整できる余地がどの程度あるかという点です。金額の設定を変えられるか、いったん止めて再開できるかといった柔軟さは、利用する制度や契約によって違います。始める前にそこを確かめておくと、相場が動いたときに慌てて全部をやめる、という展開を避けやすくなります。

5.5 ポイント3:材料が足りない段階では、金額を決めきらないという選択もある

ここまで確かめてもなお決めきれない、という場合もあります。そのときは、今回は追加を見送る、あるいはいま出せる範囲にとどめておくという選び方も残っています。実際の面談でも、家計の状況をふまえて今回は追加の加入を見送るという整理に落ち着くことがあります。これは始められなかったという結果ではなく、材料がそろっていない段階で金額を決めきらないための判断です。家計の状況は、収入や家族構成の変化とともに動きます。いま決めきらずに置いておけば、状況が変わったときにあらためて考えれば足ります。相談の場でも、始めるか始めないかの二択ではなく、いま持っているものの役割を確かめてから決める、という順番に行き着くことが少なくありません。

積立の金額に唯一の正解があるわけではなく、無理のない水準は家族構成や収入の安定度、すでに備えている保障の内容によって変わります。この記事でお伝えしたのは考え方の順番ですので、ご自身の場合にどう当てはまるかは、契約先の窓口や専門家に確かめながら進めていただければと思います。

6. まとめにかえて

2026年度の年金額はプラスの改定となりましたが、モデル世帯として示された金額は、一定の働き方を前提に計算されたものです。実際の受給額には広い幅があり、ご自身の見込み額はねんきん定期便やねんきんネットで確かめる必要があります。

見込み額と生活費の差を埋める手段の1つが毎月の積立ですが、その原資は収入の増加を待たなくても見つかることがあります。毎月ほぼ同じ額が出ていく支出を組み替えると、判断が必要なのは最初の1回だけで、そのあとは同じ効果が続きます。食費や交際費を毎月抑えていく方法と比べて、続けるための気力を使わずに済む点が違いです。

一方で、削れる支出の余地は家庭ごとに違います。すでに整えたあとであれば、動かせる部分は多くありません。その場合に積立を見送ったり、いま出せる金額にとどめたりすることは、後ろ向きな判断ではありません。材料がそろっていない段階で金額を決めないほうが、あとで調整する手間は少なくて済みます。

なお、運用に回した部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性があります。また、必要な金額や無理のない積立額は、家族構成や収入の安定度、住まいの形によって変わります。この記事で示した内容はいずれも考え方の目安ですので、個別の判断については、契約先の窓口や専門家に確かめながら進めていただければと思います。

参考資料

中島 卓哉