公的年金は偶数月に2カ月分をまとめて受け取る仕組みで、直近では8月に振込がありました。次の支払いは10月に控えており、2026年度は4年連続のプラス改定となった、改定後の金額での振込が続いています。
受け取る側の金額が動く一方で、現役世代にも変化が起きています。2025年6月には年金制度改正法が成立し、厚生年金に加入できる働き方の幅を広げる見直しなどが、数年かけて順に実行されていくことになりました。
年金の一覧表を眺めていると、「この金額では足りないかもしれない」という思いから、自分で積み立てる部分に目が向きます。ただ、毎月いくら積み立てるかにばかり気を取られ、それを何年続けるのかという時間の側面は、意外と後回しになりがちです。
この記事では、2025年に成立した年金制度改正の全体像、公的年金の2階建てのしくみ、2026年度の改定額、そして厚生労働省年金局の統計から見た平均年金月額と受給額の分布を順に確認します。そのうえで、毎月の積立額を同じにしたまま積み立てる期間だけを変えた場合、到達額がどこまで開くのかを試算で並べてみます。
なお、公的年金の仕組みや2026年度の年金額、平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 年金制度改正で何が変わる|現役期間の長さが年金額に効く仕組みへ
「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決されたのは、2025年6月13日のことです。これにより、年金制度改正法が成立しました。
働き方や家族のかたち、暮らしのリズムが以前より多様になったことを受けての見直しです。私的年金の制度を広げたり、所得の再分配を強めたりすることで、シニア世代の暮らしを支えることも狙いに置かれています。
改正の中身を見ていく前に、公的年金と手取りの関係を押さえておきたい方は、【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説もあわせてご覧いただくと、全体像がつかみやすくなります。
1.1 今回の改正で見直された5つの柱
厚生年金に加入できる働き方の幅を広げる
- 中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする
働きながら受け取る年金が減りにくくなる
- 年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする
遺族厚生年金の男女差をなくす
- 遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
計算の土台となる賃金の上限を引き上げる
- 月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする
私的年金や子どもの加算などもあわせて見直す
- 子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し
- 私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど
並べてみると、どの項目も「どれだけ長く、どういう形で制度に加わっていたか」に関わるものだとわかります。公的年金は受け取る段階だけの話ではなく、現役の時期をどう過ごすかと地続きだということです。
人生100年時代と呼ばれるようになり、老後と呼ばれる期間そのものが長くなりました。だからこそ、若いうちから公的年金のしくみに関心を持っておきたいものです。
2. 1階と2階で決まり方が違う|公的年金の土台をつくる40年という期間
公的年金の骨格については、【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイントから要点を引用して確認しておきましょう。
日本の公的年金は、よく「建物の階層」に例えられます。
1階部分の国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務付けられ、自営業者、フリーランス、学生、無職の人などが「第1号被保険者」として一律の保険料を納めます。会社員に扶養されている配偶者(年収130万円未満など)は「第3号被保険者」となり、個別の保険料負担はありません。
2階部分の厚生年金は、厚生年金保険の適用事業所に勤務する会社員や公務員が加入し(第2号被保険者)、国民年金に上乗せされる形で加入するため、将来は「基礎年金+厚生年金(報酬比例部分)」の2階建てで年金を受け取ることができます。保険料は給与額に応じて変動し、会社と従業員が半分ずつ負担する「労使折半」が大きな特徴です。
1階の国民年金は、20歳から60歳までの40年間という長さのなかで、どれだけ保険料を納めたかによって金額が決まります。毎月の負担額は収入にかかわらず同じですから、差がつくのは金額ではなく「納めた期間の長さ」のほうです。
2階の厚生年金は、そこに報酬の高さという要素が加わります。同じ40年でも、いくらの給与でどれだけの期間加入していたかによって、上乗せされる金額が変わってくるということです。
1階も2階も、短い期間で一気に積み上がる性質のものではありません。長い時間をかけて少しずつ積み上がっていく点は、公的年金も自分で行う積立も似ています。
3. 2026年度は4年連続のプラス改定|国民年金1.9%増・厚生年金2.0%増の中身
続いて、2026年度の年金額を確認します。改定の内容については、【2026年最新】60歳~89歳の年金一覧表!年代別の平均受給額と「手取り・非課税世帯」のリアル!年金口座の「凍結リスク」とは?から要点を引用します。
2026年度の年金額は、国民年金が前年度比1.9%増、厚生年金(報酬比例部分)が同2.0%増の増額改定となりました。国民年金(満額・1人分)は月額7万608円、厚生年金(モデル夫婦世帯・2人分)は月額23万7279円です。
ただし「ねんきん定期便」などに記載された金額は税金や社会保険料が引かれる前の「額面」であるため、実際の手取り額はこれより少なくなります。
金額そのものは4年連続で増えました。ただし、ここに書かれた国民年金の満額7万608円は、40年間きちんと保険料を納めた場合の金額です。納付していない期間があれば、その分だけ差し引かれた金額になります。
もう一点、注意しておきたいのが「額面」という言葉です。老後の家計を考えるとき、この金額をそのまま毎月の収入として置くか、税金や社会保険料が引かれた後の金額に置き直すかで、必要な上乗せの大きさは変わってきます。
4. 厚生年金と国民年金の平均月額|男女で約6万円ひらく理由をデータで確かめる
ここからは、厚生労働省が2025年12月に公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、60歳~90歳以上のすべての受給権者における「平均年金月額」と「受給額分布」を見ていきます。
4.1 国民年金|全年齢の平均月額と男女差
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
4.2 厚生年金|全年齢の平均月額と男女差
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※上記の厚生年金の金額には、国民年金の部分が含まれています
厚生年金の受給額の分布や年代別の内訳は、【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイントでくわしく整理されています。
国民年金の平均は、男女どちらも月5万円台から6万円台に収まっています。厚生年金は全体の平均が15万円台ですが、男女の平均額にはおよそ6万円の開きがあります。
この差が生まれるのは、厚生年金の金額が現役時代の賃金水準と加入期間に応じて決まるためです。収入に比例して保険料を納める仕組みですから、働き方や勤めていた期間の違いが、そのまま将来の年金額に映ります。
とくに現在のシニア世代では、女性が出産や育児、家族の事情をきっかけに働き方を変えたり、いったん仕事を離れたりするケースが少なくありませんでした。その結果として厚生年金の加入期間や賃金水準に差が生じ、平均受給額の男女差として表れています。
ここでも効いているのは、金額そのものより「どれだけの期間、加入し続けられたか」という時間の長さです。
毎月3万円を20年間積み立てた場合の到達額についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
新NISAで毎月3万円を20年積み立てたらどうなる?利回り3%・5%のシミュレーション結果を大公開【2025年の買付額は約71兆円】
5. 【試算】毎月2万円は同じでも、10年・20年・30年で到達額はどこまで開くか
公的年金が長い期間の積み重ねで決まるように、自分で用意する上乗せも、積み立てを続けた年数が結果を大きく左右します。毎月の金額を変えずに、積み立てる期間だけを10年・20年・30年と入れ替えると、到達額はどう動くのか。目安として並べてみましょう。
5.1 置いた前提
- 毎月2万円を積み立てる(金額は3つのケースとも同じ)
- 積立期間は10年(120カ月)・20年(240カ月)・30年(360カ月)の3パターン
- 想定年利は3%とする
- 月利は「(1+年利)の12分の1乗-1」で求め、毎月末に積み立てて複利で運用が続くものとする
- 税金・手数料・インフレの影響は考慮していない
5.2 積立期間別の到達額(年利3%・目安)
- 10年:積立元本240万円 → 到達額 約279万円(増えた分は約39万円)
- 20年:積立元本480万円 → 到達額 約654万円(同 約174万円)
- 30年:積立元本720万円 → 到達額 約1157万円(同 約437万円)
積み立てた元本は240万円・480万円・720万円と、きれいに3倍になっています。いっぽう到達額のほうは約279万円から約1157万円へと、約4.1倍まで広がりました。増えた分が到達額に占める割合も、10年では約1割ですが、20年で約3割弱、30年では約4割弱になります。
同じ毎月2万円でも、期間が伸びるほど「積み立てた金額以外の部分」の比重が大きくなっていく、という形です。
5.3 途中でやめた場合はどうなるか(年利3%・目安)
では、続けることそのものにはどれくらいの意味があるのでしょうか。30年後という同じ時点で比べられるように、途中で積み立てをやめて残高をそのまま運用し続けたケースも並べてみます。
- 10年で積立をやめ、その後20年は運用のみ:積立元本240万円 → 30年後 約504万円
- 20年で積立をやめ、その後10年は運用のみ:積立元本480万円 → 30年後 約879万円
- 30年間続ける:積立元本720万円 → 30年後 約1157万円
10年でやめた場合と30年続けた場合の差は、30年後の時点で約653万円です。追加で積み立てた元本の差は480万円ですから、差額はそれを上回っています。続けた年数の分だけ、複利が働く期間も長くなるためです。
ただし、これは一定の利回りが続いたと仮定した場合の計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の運用では価格が上下し、途中で大きく値下がりする局面もあります。受け取るタイミングの相場によっては、積立元本を下回る、いわゆる元本割れが起きる可能性もあります。
また、期間を長くとれば安全になるという話でもありません。長く続けるためには、途中で止めずに済む金額に設定しておくことが前提になります。無理のある金額で始めて数年で中断するより、続けられる金額で長く置いておくほうが、時間という要素を味方につけやすい、という見方もできます。
ここでは年利3%という一つの前提で並べていますが、低めの前提に置き直すと結果は変わりますし、価格変動によって元本を下回る可能性も残ります。
数字を一つに決め打ちせず、低めの前提でも暮らしが成り立つかを確かめておくという使い方もあります。なお、保険は保障とセットになった仕組みですので、利回りの数字だけを取り出して他の商品と横並びに比べると、判断の材料としては足りない部分が出てきます。
公的年金の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所でご自身の記録から確認できますし、税制や制度の適用については関連部署や専門家にお確かめいただくと安心につながるでしょう。前提も必要額も、一人ひとりの状況によって変わるものです。




