75歳以上の方などが加入する後期高齢者医療制度では、医療費の窓口負担割合は原則1割です。ただし、一定以上の所得がある方は2割、現役並み所得者に該当する方は3割となります。
負担割合の判定は毎年8月に見直されます。資格確認書や自治体からの通知を見て、想定していた負担割合と異なることに気づくケースもあります。特に3割負担は「年収いくらから該当するのか」「単身世帯と夫婦世帯で基準は違うのか」が気になるところです。
本記事では、2026年度時点の公的情報をもとに、後期高齢者医療制度で3割負担となる年収の目安や、単身世帯・夫婦世帯での判定ルールを整理します。制度内容は今後変更される可能性があるため、最終的な負担割合は自治体や後期高齢者医療広域連合から届く通知、資格確認書などで確認する必要があります。
なお、後期高齢者医療制度の窓口負担割合の判定基準については、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. 年金収入だけなら単身383万円以上、夫婦など520万円以上が目安
後期高齢者医療制度で3割負担となるのは、現役並み所得者に該当する方です。
公的年金以外の収入がない場合、単身世帯では年金収入383万円以上、夫婦など複数世帯では世帯の年金収入合計520万円以上が3割負担の目安となります。
判定の基準は、【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説に次のように整理されています。
同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上の方がいる場合
- 世帯内に被保険者が1人の場合:被保険者の収入金額の合計が383万円以上
- 世帯内に被保険者が2人以上の場合:被保険者全員の収入金額の合計が520万円以上
出所:【75歳からの医療費】いちばん重い「3割負担」になる年収はいくら?老後の家計を左右する判定基準をズバリ解説
つまり、収入額だけでなく、市町村民税課税所得145万円以上に該当するかも確認されるということです。厚生労働省の資料でも、現役並み所得者の判断基準について、課税所得145万円以上という所得要件に加え、単身世帯383万円、複数世帯520万円という収入要件が示されています。
世帯の形ごとに整理すると、次のとおりです。
ここでいう「同一世帯の被保険者」とは、同じ世帯にいる後期高齢者医療制度の被保険者を指します。夫婦世帯では、本人だけでなく配偶者も後期高齢者医療制度の被保険者であれば、世帯の収入合計を見る必要があります。
なお、実際の判定では、一定の基準・要件を満たすことで1割または2割になるケースもあります。個別の判定は、自治体や後期高齢者医療広域連合から届く通知で確認する必要があります。
1.1 年金収入と課税所得は同じ金額ではない
後期高齢者医療制度の負担割合で混同しやすいのが、「年金収入」と「課税所得」の違いです。
年金収入は、公的年金などを受け取った金額です。一方、課税所得は、収入から公的年金等控除や給与所得控除、基礎控除などを差し引いた後の金額です。医療費の負担割合では、市町村民税の課税所得が判定に使われます。
厚生労働省の資料では、同じ収入382万円でも、収入の内訳によって課税所得が変わる例が示されています。
- 年金収入が比較的多いケース:収入382万円でも、控除後の課税所得は144万円
- 給与収入が比較的多いケース:収入382万円でも、控除後の課税所得は150万円
この例では、同じ382万円の収入でも、課税所得145万円を下回るケースと上回るケースがあります。つまり、3割負担の判定では、年金収入や年収の金額だけでなく、収入の内訳や控除後の課税所得も関係します。
1.2 単身世帯は本人の年金収入と課税所得を見る
単身世帯では、本人の収入額と課税所得を確認します。
公的年金のみで生活している単身世帯では、年金収入383万円以上が3割負担の目安です。ただし、年金収入が一定額を超えたかどうかだけではなく、控除後の課税所得が基準に該当するかも見られます。
また、年金以外に収入がある場合は、その所得も判定に影響する可能性があります。
1.3 夫婦世帯などは世帯の年金収入合計を見る
夫婦など、同じ世帯に後期高齢者医療制度の被保険者が複数いる場合は、世帯単位で確認します。
公的年金以外の収入がない夫婦世帯では、世帯の被保険者全員の年金収入合計520万円以上が目安です。ただし、夫婦の年金収入を足して520万円以上であれば必ず3割負担になる、という意味ではありません。
同じ世帯の被保険者の中に、市町村民税課税所得145万円以上の方がいるかも確認されます。夫婦のどちらか一方に年金以外の所得がある場合も、判定に影響する可能性があります。
収入基準は「個人」だけでなく「世帯」で見られます。夫婦の年金収入やその他の所得を合算して考える必要があります。
1.4 年金収入だけで3割負担の目安に届く人は少ない
単身世帯の収入基準である383万円は、月額にすると約31万9000円です。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末時点で厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者のうち、年金月額30万円以上の人は1万9283人です。老齢年金受給権者全体1608万5696人に占める割合は約0.1%です。
一方、「後期高齢者医療事業状況報告」によると、2023年度末時点で75歳以上の被保険者1955万3702人のうち、現役並み所得者は146万3389人です。割合にすると約7.5%となります。
年金収入だけで単身383万円の目安に届く人は少ないものの、3割負担に該当する現役並み所得者は一定数います。そのため、年金収入だけでなく、給与収入や不動産収入、配当・譲渡益、保険の満期金など、年金以外の所得も確認する必要があります。
※年金月額の統計は「月額30万円以上」の階級でまとめられているため、年収383万円以上の人数を直接示すものではありません。
自分の負担割合がどの所得で決まっているのかを確かめたい場合は、年金振込通知書だけでなく、前年の確定申告の控えや住民税の課税証明書もあわせて見ておくと、判定に乗っている所得が分かりやすくなります。
