4. 「あとしまつ資金」を考える前に、知っておきたい注意点が3つある

貯蓄を「誰にも遺さない、自分のためのお金」として使い切る。そう決めたときにこそ、押さえておきたいポイントが3つあります。

4.1 ①お墓を放置すると「無縁墓」になりかねない

お墓を移転したり撤去して整理したりすることを、行政手続き上「改葬(かいそう)」と呼びます。

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改葬件数の推移(全国)

出所:厚生労働省「衛生行政報告例」をもとにLIMO編集部作成

厚生労働省「衛生行政報告例」によれば、全国の改葬件数は2002年度の7万2040件から増加を続け、2024年度には17万6105件に達し、過去最多を更新しています。この20年余りで、改葬件数はおよそ2.4倍に増えた計算です。

茨城県東海村が実施した「墓地に関する意識調査アンケート報告書」でも、お墓の管理について不安を感じている理由として「子供に負担をかけたくない」「跡継ぎがいない」という声が多数を占めています。「誰も管理できない無縁墓にして迷惑をかけるくらいなら、元気なうちに責任を持って整理しておこう」という決断をする人が増えているのです。

4.2 ②「後継ぎのいらないお墓」が主流になっている

では、墓じまいをした後のご遺骨や、自分自身はどこへ向かうのでしょうか。株式会社鎌倉新書が実施した「【第17回】お墓の消費者全国実態調査(2026年)」によると、新しく購入されたお墓の種類の内訳は次のとおりです。

  • 樹木葬:47.4%
  • 合祀墓・合葬墓:16.4%
  • 納骨堂:15.5%
  • 一般墓:15.2%

かつて主流だった「代々受け継ぐ一般墓」は約15%にとどまり、全体の8割以上が、お寺や霊園が永代にわたり管理してくれる「後継ぎを必要としないお墓」を選んでいます。「残された人に負担をかけない」という点で、おひとりさまにとって安心な選択肢が増えているといえます。

4.3 ③高額な終活サービスに惑わされてはいけない

最近はおひとりさまの不安につけ込むような、過剰な終活ビジネスも見られます。必要のない豪華な葬儀プランが組み込まれていないか確認し、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。

いきなり民間の高額サービスを契約する前に、地域の「地域包括支援センター」や社会福祉協議会、専門家の無料相談窓口を活用し、自分に本当に必要なサポートだけを吟味することが大切です。

5. 「おひとりさま死後事務」という解決策

自分が亡くなった直後には、役所への死亡届、葬儀・火葬の手配、病院や施設の未払い費用の精算、賃貸住宅の退去手続きと遺品整理など、膨大な事務手続きが発生します。頼れる身寄りがいない場合、これらをそのまま放置して旅立つわけにはいきません。

そこで活用したいのが、生前に専門家やサポート団体と契約を交わしておく「死後事務委任契約」です。

必要な費用の目安としては、専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)への報酬に加え、直葬・火葬費用、納骨・永代供養費用、部屋の片付け、医療費の精算などを含め、トータルで約100万〜220万円程度(依頼先や内容により変動)がひとつの目安となります。

専門家報酬だけでも依頼先によって10万円台から100万円超まで幅があり、そこに葬儀・納骨・部屋の片付けなどの実費が加わる形です。

これらはすべて「生きているうちに自分の貯蓄から取り分けておく(預託しておく)」ことができます。自分の死後にいくらかかるかを逆算し、予算を確保しておけば、それだけで死後の不安はかなり解消されます。

6. 筆者からのコメント

熊谷 良子

「死後事務委任契約は身寄りのない人だけの制度」と思われがちですが、実際には子どもがいても遠方に住んでいる、頼りたくないといった事情から契約する方も増えています。

見落とされがちなのが、実家で親と同居している場合や、すでに家族が代わりに手続きしてくれる前提でいる場合でも、いざというときに家族側の負担がかえって大きくなるケースがある点です。

また、預託金は「多ければ多いほど安心」というものではありません。過大な見積もりを提示する業者も一部にあるため、複数社から相見積もりを取り、内訳(報酬・実費・予備費)を分けて確認する姿勢が欠かせません。

「誰かに任せれば安心」ではなく、「何にいくらかかるかを自分で把握したうえで任せる」という視点を持つことが、後悔しない終活につながります。

7.  まとめにかえて|身軽で自立した、あなたらしいエンディングへ

65歳以上の単独世帯が過去最高の33.8%となり、お墓の改葬(墓じまい)も2024年度に17万6105件と過去最多を更新している現代。

これは決して寂しいニュースではなく、「誰もが一人で、しなやかに自立して生きられる社会」へと進化した証でもあります。

自分の最後の安心のために必要なお金を先に取り分けたら、あとに残るお金は自由に使えるお金です。温泉に行ったり、美味しいものを食べたり、趣味に没頭したりと、有意義な使い方をしたいものですね。

「誰にも遺さない貯蓄」があることは、自由であることの証でもあります。まずは身近な実家のお墓のことや、自分の将来の希望について、ノートに書き出してみることから始めてみませんか。

参考資料